第十話「面」
「と、いう訳で。ルールは分かったー?」
「はい!」
紅は美翠相手に一点も取れなかったものの、ルールを確認出来たので満足したようだ。
「良い返事だね。それじゃー次は千回ラリー行ってみる?」
「流石にまだ早いですよ。もっと基本がしっかり固まってからにしましょう」
女乃が美翠を諌める。
「そうだねー。じゃあ基礎練を中心にやっていこーか」
「真珠、ツッツキまだ浮いてるよ」
「はいっ」
ツッツキとは、ボールの下側を擦るように打つ技術。
相手がかけた下回転に対し、同じく下回転で返す事が出来る。
「回り込んでドライブ!」
バック側に来たボールに対して、フットワークで回り込み、フォアハンドで返す。
ドライブは相手の下回転をより強い上回転で無理矢理返す技と言っても良い。
ドライブは攻撃力が高く、得点に繋がりやすい。
「はっ!」
クロス、相手のバック側に向かって斜めにドライブを放った。
「バネを上手く使えてないよ!」
アイサはバックハンドでドライブを軽く跳ね返した。
「フットワークをもっと速くして、しっかり膝のバネを使わないと」
「はい!」
真珠は確かな才能を持っているが、技術の成長が才能にまだ追いついていない。
(とにかく、練習!)
どうすれば実力を向上させられるか。
真珠が出した結論は、とにかく練習するというもの。
シンプルで当たり前の事だが、重要で失念しがちな事でもある。
「次!春呼!」
「るっしゃーあっ!」
真珠と交代し、春呼がサーブを打つ。
「すごい、、、狙いが全然ブレてない」
「お、分かる?」
春呼がそう言って油断した瞬間ボールが浮いてアウトになった。
「あ」
「集中」
アイサに睨まれ、春呼は笑いながらボールを拾いに行く。
「すみません」
「別に真珠のせいじゃないよ。入って」
真珠のサーブでラリーが始まる。
「下回転、もう少し強く出来る?」
アイサの提案に真珠は真っ向から挑む。
「やってみます!」
真珠が持つラケットをバックハンドで素早く動かす。
擦ると言うより、斬った。
「おぉ」
アイサがラケットの角度を合わせてツッツくが、真珠がかけた下回転が強すぎてネットを越えられなかった。
「すごい回転。なんて言うか、切れ味がある」
アイサは感嘆した。
「えへへ、ありがとうございます!」
褒められた真珠は照れている。
「真珠って何のラバー使ってんの?」
春呼にラケットを見せる。
「両方センザンの裏ソフトです。こっちはムーンドライブで、こっちがブレイドイズです」
「ブレイドイズか。難しいでしょ」
赤い面は反発が強く、パワーを出せるムーンドライブ。
黒い面はとにかく強い回転をかけられるブレイドイズ。
ブレイドイズは回転を強くかけられるが非常に扱いづらく、使用者は少ない。
「最初使った時は全然使えませんでした。十年くらい使い続けて、やっと今くらい回転をかけられるようになったんですよ」
「十年かー、、、」
春呼は気が遠くなる。
「努力した結果はちゃんと出てる。私も見習わなきゃね」
アイサは更なる努力を心に誓った。




