総帥閣下には大戦略があるようです。
部屋の外で待機していたユスティアに先導され、俺こと私・アイル総帥は会議室に入った。既に軍議は始まっていたようで上層部、帝国の幹部と思わしき、偉そうなおじさま、おじい様型が熱烈に言い争いをしていた。部屋に入った瞬間、私に視線が集中する。
「総帥閣下、御入場です!」ユスティアの号令で一斉に敬礼を受ける。私も返礼する。
「アイル総帥、お忙しい中軍議に参加してくださりありがとうございます。」将軍たちがうやうやしく頭を下げる
私は、案內され自分の椅子に座る。すると数名の軍務担当官らしき者たちが、私の机の前に地図を広げた。
「敵・ソルン軍は、現在我が帝国の首都ベルン東方12キロの地点にあります。正面に位置する敵第一軍は、先方隊10万、本軍30万、計40万の部隊であります。対する我が軍は、近衛2万及び野戦砲部隊3万、士官学校生や、学徒兵含めた予備役8万、市民志願兵が10万、計23万で首都に立て籠もりこれを迎撃をします」
「また、敵第二軍20万は、現在ベルン南方50キロの地点に陣取り、南下中だった我が軍、装甲部隊8万を包囲する構えでございます。ですので装甲部隊の援軍を期待するのは難しい状態です」
軍事オタク以外はよくわからない解説をありがとう。つまり勝てそうにないと。念のため聞いておこう
「それでは、将軍に尋ねます。首都は何日持ちますか?」
俺は、一番偉そうな軍服を着た中年男性に尋ねる。
「多く見積もって10日かと…しかし我々は戦って時間を稼ぎ、徹底抗戦を続けるしかありません。降伏は恥であり、祖先の英知を否定することになるのです。私たちは戦うしかないのです!」
男は青筋を立てながらっまくしたてた。そんな空気が場に充満するなか1人の老将が反論する
「講和ならできるかもしれません。我々にはまだ、各戦区には連携はとれずとも幾ばくが戦力が残っています。敵軍は、主力軍の大半をこの戦線に張り付けていますから、それらで戦果を上げ交渉すればあるいは……ただそのための時間を作るためにも一歩たりとも退いてはいけないのです!」
会議室は、沈黙が流れる「やむを得ない……か」「しかし、勝ち目が……」「どうせ死ぬなら戦って死のう!」
など口々に言い始める。
俺も話を聞く限り老将の意見には賛成だ。確かに敵は正面だけで40万、後続もいるとなれば総数は数百万という数になるだろう。
うーん、正直詰みかかってはいる。
だがまだ、俺というチート(仮)転生者がいる。まだ挽回する手立てはある、かもしれない。
「私に策があります、まだ勝てます」
「アイル様……!!それは真ですか?」
将軍たちは嬉しそうな顔をしてこちらを見る。もはや、死を覚悟した彼らには、俺を女神か天使に見えているに違いない。
もはや、彼らには玉砕以外の道はないのだ。
「アイル様、してその戦術とは」
先程の老将が口を開いた。見た目は優しげなおじいちゃんだが、目の奥に厳しそうな鋭い光が見える。
「それは、包囲殲滅です」
俺は、自信満々に答える。そう、昔から好きだったゲームで、この戦術は何度もやったことがある。
「しかし、ソルン軍40万を我が方23万で包囲すると?失礼ですが、戦力差があまりにも……」
「いえ、違います。我々が包囲するのではなくて……敵軍の中に入ればいいのです!」