~日常にある美しさ~
真っ暗な中にオレンジにうっすらと光る申し訳程度に置かれた街灯の中、カエルの鳴き声が響く。
俺は、緩やかな田舎の下り坂をいまにも折れそうなスケートボードに乗り、がらがらと乾いた音と湿ったアスファルトの匂いを立てながらいつもの集合場所である駅へむかった。
おおよそ家を出て1時間30分ほど経った頃だろうか、一台も車の止まっていない駅の駐車場に着き、父からのおさがりであるメッキがはがれた重い黒の腕時計の表示を得意げに見ると、6月6日の表示と共に短針が文字盤の8を通り過ぎようとしていた。
「おはよ~かなえ~」
時間にそぐわない挨拶と共に名前を呼ばれ振り返ると、裾が擦れて破けた真っ黒のスキニーに紺色のロンT、有名スポーツブランドのウエストポーチと何かが入ったコンビニ袋を右手にぶら下げながら、肩付近まで伸びた髪を黒が基調の金色でR&Sと刺繡の入ったキャップにまとめた男がスケートボードを左脇に抱えながら走ってくる男の姿が見えた。
そこには唯一といっていい友人の里村 亮二が息を切らしながら走ってきた。
「おっせ~し、おはようじゃないし~」
「おはようじゃないけど、時間ぴったりだわ!」
毎日のように繰り広げていたこんなしょうもない会話も懐かしく感じる。そうだ、梅雨のなか約1週間ぶりの再会だった。
到着するや否や、亮二は走って工事車両の安全対策で置かれているカラーコーンを2つ持ってきた。
「俺、組コーンをオーリーで飛べるようになったんだよ!」
そういうと、亮二はカラーコーンをおもむろに互い違いに重ね、約7mほど離れた位置から助走をつけ、地面からふわっとカラーコーンに向かって飛び上がった。
カラーコーンは、ぽんぽんと軽い音を立ててくずれ亮二は飛んだ勢いをそのままに転んでしまったものの、でんぐり返しで受け身を取り、やり切った顔で立ち上がり俺のほうをみている...まったく高さが足りていなかった。
「な!?」
どこからそんな自信満々な表情が出せるのかわからず、腹がよじれるほどわらった。やっぱりこいつといると面白い!口には出せないが、そんな思いを噛みしめていた。
こんなくだらない事をしているうちに、文字盤の短針は10の数字をこえていた。亮二がコンビニで買ってきた黒を基調とした缶に緑の爪痕がついたエナジードリンクを二人で駅の階段に腰を掛け飲んでいた。
そんな時、赤橙が回っている白を基調したセダンがやってきて、駅の駐車場に止まった。
運転席から小太りの若い警官と助手席から服の上からでもわかる引き締まった体をした50前後と思われる警察がおりてきた。
「こんばんは、おじさん77区駐在所から来た五十嵐っていうんだけどちょっといいかな?」
時間は10時を回ったばかりだ、77区付近の深夜徘徊の補導時間は午後11時だ。補導時間には余裕がある、そのためか、亮二は
「はい、だいじょうぶですよ!」
とにこやかに答える...
それに対し俺は、背筋から汗が滴り、頭皮から汗と一緒に整髪料が垂れてきて目に染みる。
「最近汚れ人がおおくてねぇ~困ったものだよ。」
「そうなんですね~。なんで禊人と混ざらないように隔離してるのに混ざるんですかね~?せっかくあんな奴らのために貴重な土地使ってやってるってのに!」
「そうだね。困ったものだよ」
亮二はウエストポーチから金属でできたカードのようなものと鍼灸で使うような針を取り出した。
「見ててくださいね~」
そういうと、亮二は針を右手薬指の先端に刺しすぐに引き抜いた。血が表面張力によって水滴のように出てきている、それをカードに塗り付けるとカードには亮二の本名【里村 亮二】の文字と共に、禊人の文字が浮かんできた。
「ありがとう、亮二君。次は君かな?」
亮二に感謝を伝えた後、五十嵐はこちらをにこやかに見つめながら歩み寄ってきた...
「は、はい...そうですね...」
「どうしたんだい?」
にこやかだっか五十嵐から笑顔は消えていた。
小太りの警官に耳打ちをすると、五十嵐は俺の腕を引っ張り車に乗せた。
その時亮二は何かを言っていた気がするが何も思い出せない。
何か言葉を返した気もするが、車に入れられた俺は冷たい汗と目の痛みしか考えられなくなっていた。
車でどれほど走ったのだろうか...
5分と言われればそんな気もするが、1時間と言われてもそんな気もする。
第83区警察署という警察署についた。
大きな強化ガラスでできた自動ドアをくぐった後、すぐ左に曲がり突き当りにある分厚い金属でできた扉のついた取調室に入れられ、パイプ椅子に座らされた。
自分の心臓の音が大きくなる、汗の量も増える、視界の焦点が合わなくなりはじめめまいがひどい。
向かいには五十嵐がパイプ椅子に腰かけている。
「ふぅ~まず話を聞こうか」
「・・・でs...」
「ん?」
「汚く見えるんです。」
はじめまして、ようせぇです。
自分語りの様で申し訳ないのですが、自分は高校中退して働いており、そんな中で感じたことを主人公の黄木 奏恵君(本編ではフルネームが出ていませんが...)に乗せて書いていきたいなと思います。
学もないため、作文や小説の書き方がよくわからないため、極力読みやすいようにと思って書きますが、つたない部分も多々あると思いますのでご了承ください。