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花と心臓(仮)  作者: 杜若
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クリュティエ スチュアート

 今回出てくるのは、美人さん⁉

 男は男でも美人なのです。

 ある青年の想いを感じてください。

《心臓に込められた想い・心象》


「君が、葉月だね」

 柔和で、それでいて意志の強さがこもった声が聞こえ、意識を覚ます。

 そこに広がる空間は決して現実ではなく、見えているものなのかどうかわからない。しかし、暖かで明るく、荒んだ心も穏やかになってしまうような落ち着いた空間だった。

 居心地のいい空間に、気が抜けてしまいそうだったが気を取り直し、声のした方向を振り向く。

 振り向いた先にはおおよそ、人生で一度も見たことのないような美しい少女がったていた。

 いや、訂正する。多少は高いが声色は確かに男で、顔以外に目を向けると185センチもあって60キロほどの体重しか持たない俺とは違い、背筋は伸び、足の長さはさることながら、顔に似合わないがっちりとした肩から伸びる腕は逞しく引き締まっている。

 男だ。

 24年間、碌な人間関係を築いてこなかった俺は冷静に性別を見分けることができなほどの女に飢えていたのかと俺は自分の人生嘲る。

「一応、私は男だぞ」

 こちらを見透かしたような微笑を浮かべるている。あるいは、ただこういうことに慣れているだけであろうか。

「いいだろっ、生憎お前さんみたいな美人に人生で一度も会ったことがないんだ」

 確かに、目の前にいる彼は女性ではない。でも、日本人離れしたサファイアのような瞳に、中性的な丸みを帯びた輪郭、何より、絹のように白く光るしなやかな長い髪を持つ彼はおそらく人類で一番美しい人なのではないだろうか。

「照れてしまうなあ・・・」

 思いもよらないストレートな発言に戸惑ったのか、余裕のある微笑は消えてたじろいだ反応をした。

 しかし、その直後、    

「ありがとう。でも、生憎私には生涯をかけて守りたかった人がいるんだ」

 振られた、告白もしていないのに振られた。

 たった今、俺の人生トップ3に入る恥ずかしい思い出にランクインするイベントが起きてしまった。こんな屈辱は会っていいものなのか、彼のそのからかいに反論できず、あろうことか顔を熱く赤くして照れていることを隠せていない自分が本当に恥ずかしい。

「ごめんね。君をいじめたいわけではないんだ。彼女の癖が移ってしまったのかなあ」

 そういうと、俺を辱めた本人ははにかんだ笑顔を見せる。

「本題に入るね」

 本題の意味が知らないが、彼がそういうと柔和で暖かな空間は居心地は相変わらずだが、少し温度が下がったような気がした。

「私の名前はクリュティエ。クリュティエ・スチュアートといいます。しがない、エージェントです。よろしくお願いします」

「ご丁寧にどうも。俺の名前は知っているみたいだけど、礼儀として名乗らせてもらう。俺は橘葉月。名前以外に語ることは持ち合わせていない」

「それより、ここはどこなんだ。俺はこんな場所知らないし、お前と二人で向かい合っている理由も分からない」

「まず、そこからだね、葉月。ここは心象の中さ、君は私の心臓を受け継いだんだ。だからこうして、心象の中で会話ができる」

「???」

 意味が分からない。心象の中?心臓を受け継いだ?さっき死んだ俺はどこかの異世界にでも転生するのか?

「心象とやらには言及するつもりはない。けれど、心臓を受け継いだとはどういうことだ」

 やっと、死ねたと思ったのに最期の最後で面倒ごとの気配がする。

「君には僕が果たすべきだった役目を代わりに果し。彼女をそして、世界を救ってほしいんだ。それが、心臓を受け継いだ君に私が託す唯一の望みだ」

 唯一と言いながら世界なんてスケールが大きすぎるワードが聞こえたのは聞き間違いではないだろうか。突如、意味のない人生を終わらせる丁度良い機会が来たかと思ったら、心臓の押し売りに更に法外の請求をされてしまった。

「残念ながら、そんな代金を払う力はない。ボクシングの世界チャンピオンか一軍の将にでも当たってくれ」

「いや、それは出来ません。この心臓は君にしか扱えることができない。それに君の前の心臓はこの心臓を受け継ぐために止まったんだから」

 思いもしなかった一言に驚きを隠せない。

「心臓を受け継ぐために心臓が止まっただと?」

 どういうことだと聞かんばかりの視線を目の前に向ける。

「君が幼いときずっと病室にいたことは憶えているかい?」

 確かに、俺は物心ついたときからよく病室にいたことがある。でも、何の病気かは分かっていなかった。憶えていることといえば胸が痛かった気がすることくらい・・・

 胸❘

「そう。君は生まれたつき心臓が弱かったんだ。5歳の誕生日を迎えられない程に。そんな君のため両親は各地を巡り、名医という名医に頭を下げた。けれど、肝心のドナーを見つけることもできず、このままでは我が子を死なせてしまうと両親は焦っていた。。そこで両親はかねてから親交のあった私たちの組織に懇願した。『心臓を作って、我が子を救ってくれ』と。そして、断る理由のない組織は願いを聞き入れ心臓を提供した。それがさっきまで君の胸にしまってあった時限式の心臓さ」 

 忘れてしまっていた。何もできない自分が嫌いで何事にも逃避してきた俺は幼き日の苦しい思いすら忘れてしまうほどにすべてを忘れ、何も見ようとしていなかったのか。。

「てっきり、体にがたが来て血管でも詰まってポックリ逝ったのかと思ったよ。いつか止るとわかっている心臓を提供するなんて、お前たちは闇の組織かよ」

「見ようによっては間違いではないかもですね。けれど、私たちはその逆です。正義に務める組織CRISIS・CRUSHERです」

 何とも言えないネーミングセンスと自ら正義と名乗る所に彼に対する若干の解釈違いを起こしていたところで話は続く❘

「心臓が止まったことにも理由はあります。先ほどもお伝えした通りにその心臓は元々私の胸に収まっていたものです。しかし、ある組織との戦いで私は敗れ心臓だけを残し肉体は砕け散ってしまいました。そこで、次の心臓の主である君に心臓を収めるべく、前のものは停止されたのです」

「なんで、俺なんだ?」

 話を聞いてもなお残る疑問を問い掛ける。

「葉月ではならない理由ですか?それは私にも分かりません。一つ言えることは組織がドナーを提供するときの取引に関係することくらいですかね。けれど、彼女があなたに託す判断をするならばそれを私は信じるのみです」

 答えになっていない。けれど、知らないことには嘘はないようだ。

「ところで、さっきも口にしていた彼女ってのは誰のことだ?お前の恋人か?」

「・・・そうだったら良かったですね。

 でも、残念ながら違います。

 彼女❘『奏』は恩人であり、

 かつての相棒です。

 恋人にするだなんて、私を支えてくれた彼女に不敬すぎる行為です」

 相当拗らせているようだ。ギリシャ神話の神の如く美貌を持っているのに、距離の近い女性に対しても積極的になれない。不敬だなんて言ってるくせ、心臓だけになっても彼女を守りたいだなんて未練たらたらじゃねーか。

「きもいな。お前」

 おおよそ、目の前の麗人にこの世で一番似合わない言葉を投げかける。

「そうですよ。その通りですよ。私は心臓だけになっても彼女を想い続ける変態ですよ」

 どうやら、以前から心当たりはあったらしい。たった一言に、慌て先ほど見せた照れ顔なんかより比べ物にならないくらいの火照った顔を見せ、白くしなやかな両手で顔を覆った。

「そこまでしても、守りたいんですよ。

 彼女を・・

 彼女がいるこの世界を・・

 だから、葉月

 私の代わりに世界を、そして『奏』を救ってくれませんか?

 あの子は強い、私なんかいなくてよかったかもしれない。

 けど、いつも危なっかしくて、私が止めても突っ走って行ってしまう。時には会って間もないような人を自分の命を投げ打ってまで助けようとする。

 そんな彼女だからこそ、私は愛している。

 だからこそ、私は彼女に笑顔で生き続けてほしんだ。

 いつ死ぬかもわからない世界から彼女を解放してくれ。

 それだけが心臓とともに君に託す願いです」


 目の前の青年は顔を覆った手をほどき、まだ赤みの消えない顔を向け、懇願する。

 

 ・・・。こんなに人を愛したことはない俺には彼の覚悟ははかり知ることはできない。俺には過ぎた役に違いない。それでも、一片たりとも人の役に立ってこなかった男に彼は願っているんだ。一回死んだんだ。次くらいは一人の男のために頑張ろうじゃないか。

 

「受け継いでやるよ、その役目。

 お前ほどの美人がそこまで惚れこむなんて見てみたいしな。

 でも、これ(心臓)だけじゃお代は足りねえわ。

 なんて言っても、世界を救うんだからな。

 他に何かないのか?」


「お代が足りないって?

 さっき言ったじゃないですか。

 世界を救うこと(生きる意味)だって!」


 とんだ闇組織だ、世界を救う代わりに提供するものが世界を救う権利だなんて。こちとらせっかく《死》チャンスを掴みかけたっていうのに。

 それでも、あの想いは叶えたい。なぜだろうか、そう想う。


 感情表現って言葉にすると難しいですね、どう書いたものかとずっと悩んでしまいました。構成や内容もままならないなか急いで文字にしようと書き起こしてしまいました。

 拙く、自分でも納得いった文章とは言えません。今度また書き直すかもしれません。それでも、クリュティエの少女を大切にする気持ちが一人でも多くの方に届いたら嬉しいです。

 どんなものでも構いません。コメントなどあればよろしくお願いします!

 次も頑張ります。

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