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2.ヴァンパイアさんからのお願い。

ちょっとグダり気味ですけど読んでいただけたら幸いです…!

 ダイニングキッチンを後にする友愛たち。そして、あの大きな階段を上がる。


「すごい階段ですね…」


 テレビでドラマや、映画とかでしか見たことがない。シャンデリアに照らされた階段は、一段と高級感が増した。


「ああ…。なんでこんなにでけぇ階段なんだろうな」


 一人暮らしだから普通の階段でいい、と言う圭吾。先程とは違い、一段一段、友愛の歩く速度に合わせて上がっていく。

階段を上がりきり、目の前に広がる光景は……


「う、わあ……」


 思わず声が漏れる友愛。そこには、長い長い廊下。そして、無数のドア。


「部屋が多すぎて、毎日掃除していられないんだよ」


 圭吾がため息をつく。たしかにこれじゃ掃除が大変だ…と友愛は思う。


「じゃ、この部屋な」


 階段からいちばん近くにあるドアを開ける圭吾。その中は…。


「真っ暗…」


 中の様子を伺う友愛。しかし、廊下の明かりからほんの少ししか、部屋の様子を見ることができなかった。


 中には、ベッドと本棚と…小さなテーブル。その辺しか把握ができなかった。


「ここは2番目に頼むな。次の部屋を初めに頼む。その部屋はー…」


 圭吾は一度ドアを閉め、再び廊下を歩く。部屋が多すぎて、どこの掃除をすればいいのか、友愛はわからなくなりそうだった。


「ここだ」


 さっきの部屋から少し離れたドアの前に立つ。


「ここの部屋だ。さっきの部屋と構造はそんなに変わっていないから、中を確認しなくてもいいな」


 圭吾は友愛に言う。


「じゃ、こことあそこの2部屋を頼むな」


「え、あ、ちょっ…」


 圭吾はそう言うと、ずかずか階段を下りて行ってしまった。友愛は1人、ドアの前に立ちつくす。


(真っ暗なんだよなぁ、きっと…)


 友愛は怖いのが苦手だった。もちろん、真っ暗なのも怖くて仕方がない。友愛はドアの前で渋っていたが、満を持してドアノブに手をかける。


カチャッ…


「暗ぁ……」


 やっぱり真っ暗だった。そういえば、掃除をしていないのはどれくらいの期間なのだろうか。友愛は一旦、ドアを閉めた。


 掃除をするのに必要なものを考える。ほうきとちりとりと…水拭き用の雑巾、乾拭き用の雑巾、バケツ…とかだろうか。


 ひとまず、ほうきとちりとりを貰いに行こうと思った友愛だったが、この無数のドアの…場所がわからなくなる。最初のドアは階段の1番近くだからかろうじて把握しているが…。


(どうしたらいいわけ…?)


 友愛は悩んだ挙句、ブレザーのポケットに入っていたポケットティッシュをドアの前に置いた。


 そして友愛は階段を下りる。





 階段を下りると、圭吾が窓越しに外を見ていた。そして、友愛に気づき、振り返る。


「…どうした?」


 圭吾は友愛に尋ねた。時間的には夕日が出ているはずだが、窓は何かが施されているらしく、夕日は遮断されていた。


「あ、その…ほうきとちりとりがほしくて」


 友愛がそう言うと、圭吾は窓から離れ、友愛に手招きをする。友愛はそんな圭吾に黙って従った。


(どこに…行くのかな……)


 圭吾が向かったのは、ダイニングキッチンとは逆の位置にある部屋だった。圭吾はゆっくりと、ドアノブを捻る。


 そこの部屋は…


「…必需品倉庫」


 圭吾はボソッと言った。その部屋はその名の通り倉庫の中みたいに、ゴチャゴチャと段ボールが積み重なっている。部屋に入り、フックにかかっているほうきとちりとりを取り出す。


「ほらよ」


 圭吾は友愛にほうきとちりとりを渡す。それはごく一般のほうきとちりとりだった。


「ありがとうございます」


 友愛は圭吾にお礼を言う。圭吾はパタン、と必需品倉庫のドアを閉めた。


「…掃除機があれば楽だったんだけどな、すまん」


 圭吾は謝る。しかし、友愛は全く気にしていなかった。


「大丈夫ですよ。ほうきとちりとりさえあれば、掃除なんてすぐできますから!」


 グッ、と拳を作る友愛。そんな友愛を見て、圭吾はクスッと笑う。


「…変なやつだな、ほんとに」


 圭吾はそう言うと、その場から去っていった。


(笑われた…変なやつって言われたぁ……)


 友愛はちょっぴりショックを受けていた。普通にしてたつもりなのに、変なやつに見えたんだ…と思うと切ない。友愛はしょんぼりしながら、二階に上がる。


 …お掃除の期限は明後日まで。その間までに、階段横の部屋と、少し離れた部屋を掃除。


(どうにか、なりますように……)


 友愛はちょっと祈ってみたりもする。


「さて! さっさと済ませちゃおっと」


 友愛はほうきとちりとりを握りしめ、先程ポケットティッシュを置いておいた部屋に向かう。


 …遠くから見てもわかる。白い物体が無造作に置かれていた。友愛はそのポケットティッシュを拾い上げ、ブレザーを脱ぎ、床に置いた。


 これで準備は整った。




 友愛は迷うことなく、そのドアを開け放つ。


「……」


 暗いのは分かっていた。分かっていたが、やはり不安でたまらない。友愛は電気のスイッチを探した。


(最初の部屋を開けたときもそうだったけど…ビックリするくらい、真っ暗なんだよね…)


 怖いながらも、恐る恐る壁を触っていると、何かがあった。いいや、押してみちゃえ、と友愛は思い切ってスイッチらしきものを押す。


 ──カチッ



 一瞬のうちに、電気はついた。友愛は辺りを見回す。


「暗さの原因って……」


 友愛は部屋の奥へと足を進める。掃除を頼むとは言われていたが、中は綺麗な方だった。ベッドに本棚、小さなテーブル。寝室のようだった。


(最初の部屋も寝室なのかな?)


 友愛はそう思いながら、カーテンを勢いよく開ける。


 ────シャッ


「ま、ぶし…っ」


 外の夕日が、一気に部屋を照らし出す。カーテンを開けていればこんなに明るいのに、なんで開けないんだろう? と友愛は思った。


「明るくなったし、まぁいっか…」


 友愛はさっさと掃除を始めた。先程のほうきで床を掃く。もともと、部屋にはものが少なかったため、比較的掃除はしやすかった。


「割と楽ちんだなぁ」


 ふんふん〜と鼻歌を歌ってみたりする。なんだか楽しくなってきた友愛。しかし、部屋の中にある時計が目に入った。


(わ…!もう5時を回ってる!)


「そういえば、私…家どうなるのかな」


 先程、圭吾が家賃を払うと言っていたのを思い出す。それと同時に、ここに泊まり込めばいいと言われていたことと思い出した。


(私、ここで暮らすの…?)


 一気に現実に戻り、動きを一旦止める。掃除をしなきゃいけないが、家に帰りたい。


「圭吾さんに、聞いてみようかな…」


 一旦、帰っていいか、と。掃除の途中、友愛は部屋から出た。




 友愛は廊下を走り、階段を下りる。


「…どうした?」


 友愛があまりにも忙しなく走っていたためか、圭吾が他の部屋から出てきた。圭吾はなぜか、眼鏡をかけている。


(か、かっこいい……)


 そんなことを思い、友愛はハッとする。


(な、何思ってんだか!)


 首を振り、一息つく。


「あの、一旦家に帰りたいんですけどっ…」


 圭吾を直視しないように、軽く目を逸らしながら、友愛はそう言った。圭吾はその様子を見て、不思議そうな顔をした。


「やっぱり引き止めるのは無理か」


 圭吾はふぅ、とため息をつく。


「ここにいろとか無理は言わねぇ。ただ、学校終わりに来い」


「は、はい…」


 とりあえず、帰れるみたいでほっとする友愛。


「じゃあ、今日はもう暗くなるんで、帰りますね」


 友愛はそう言うと、階段を上がる。が…前に進まない。理由は…圭吾が、友愛の腕を掴んでいたからだ。




「な、なんですか…?」


「今週の、金曜日はずっといてくれ」


 友愛は圭吾にそう、告げられた。


(今週の、金曜日…?)


「パーティーやるって言っただろ?」


 まさか、そのパーティーに参加しろ、と言うのだろうか…友愛はただ固まっていた。


「…それもダメなのか?」


 圭吾が続ける。段々と、声が小さくなってきているのを感じていた。


(相手はヴァンパイア…。もしも断ったら、どうなるかわからない…)


「え、と…たぶん、大丈夫…です」


 辛うじてそんなことを言う友愛。予定なんてそうそう入らない。大丈夫かなんてわかりきってる。


「じゃあ、今週の金曜日空けとけ。──それと、俺のこととか、絶対に口外するなよ」


 わかりました、と友愛が言う前に圭吾は手を離した。結局友愛は何も言わず二階に上がり、ブレザーを羽織りスクールバッグを抱えると黙って家を出た。




「寒っ…」


 外は予想以上の寒さだった。夕焼けがきれいだから、そこそこ暖かいと思っていた友愛は、前かがみになりながら帰り道を急ぐ。そして、街灯もちらほらしかなく、そこそこ暗い。


「真っ暗になる前に抜け出さなきゃ…」


 先程の部屋と言い、外と言い…友愛にとって苦痛なことだらけだった。これから、ここの道を通って通わなければならない。そう思うと、ぶんぶんと首を振り、早歩きでアパートへと向かう。



 …一心不乱に歩きつづけた結果、暗くなる前にアパートに着いた。


 ただいま、と言っても、誰もいない。静かな部屋に。



「………………」


 静かな部屋に足を踏み入れ、スクールバッグを床に置く。今の時間帯のテレビはニュースばっかりだが、いつもの癖で電源をオンにする。


 テレビには天気予報士が映る。明日は雨の予報だと出ていた。雨だと朝、学校に行くのも憂鬱に感じてしまう友愛。


 ──ただ、学校終わりに来い。


 ふいに、圭吾が言った言葉が頭に過ぎった。


「明日も、行かなきゃ…だよね……」


 とんでもないバイトを始めてしまったもんだ、と今更後悔する。しかも相手はヴァンパイアときた。そんなの、誰が予測できるだろうか?


(時給に、惹かれるなんて…馬鹿)


 朝の自分に怒りたくなる友愛。いや、今さら怒っても仕方ないのだが。


「美香になんて言おう…圭吾さんのことは伏せておかないとまずいよね…」


 圭吾に最後に言われた、"絶対に口外するな"。きっとこのバイト自体も秘密にしなくてはいけない。美香には適当に嘘をついておこうと決めた。


「…今日は疲れたから、お風呂入って寝よ」


 脱衣所へと向かい、風呂にお湯を溜める。早く溜まらないかなぁ……と思いつつ、友愛は一旦リビングに戻りちっちゃな冷蔵庫を開ける。


 冷蔵庫の中の、袋に詰められたドーナツがいくつも入っているパックを見つめ、ドーナツを一つ取り出した。黙々とドーナツを食べる。


(うん、甘くて美味しい)


 やがて、お湯が湧いた音が聞こえ、さっさと風呂に入る。数分して、風呂から上がり、身支度を済ませる。

すっかり疲れ切っていた友愛は、布団に入るとすぐに眠ってしまった。




 その時、圭吾は────


「これは、一体どういうことなのか…」


 ひらり、と1枚の紙をテーブルの上に出す。それは、友愛が持ってきた、バイト募集の紙であった。


(たしかに、俺が募集してたことがあったが…)


 不思議で仕方ない。圭吾が募集をしていたのは、10年も前の話だった。なぜ、今になってこの紙が…? 圭吾は考える。


「そういや…この紙をどこで入手したか、聞きそびれたな」


 ふぅ…とため息をつき、椅子に寄りかかる。そして圭吾は、目を瞑る。


「あいつは…友愛は…」


 圭吾はそう呟くと、夜分にも関わらず、どこかに電話をかける。意外にも、ワンコールで電話が繋がった。


「…圭吾だ。今大丈夫か?」


「あら、圭吾。どうしたの?」


 電話の相手は大人びた声が特徴的な女性だった。


「あなたから電話なんて、珍しいじゃない」


 電話越しの女性がふふっ、と笑う。圭吾は面倒くさそうな顔をする。


「ちょっとな。今日、人が尋ねてきてな…」


「うん。で、どんな人が来たわけ?」


 女性は早く聞きたそうに圭吾を急かす。圭吾はそう慌てるな、と呟く。そして、こう言い放った。



「……そいつは、俺たちが探していた人間かもしれない」


 と───

一応ここまでが1章目、ということになります。(後で章を付け足す予定です)


次回の更新はいつもより間が開きそうですが、頑張ります!

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