状況説明などの悪い例。
目が覚めるとそこは、玉座の前だった。
俺は勇者リュートとして、国王陛下様に招かれたのだ。日本時代の記憶が生えてきた、とでも言えばいいのだろうか。俺は同じ年の少年リュートとして、魔王討伐に赴く、その直前だった。なるほど、なかなかに美形だ。
イケメンに転生したのは、これ幸いだっただろう。
記憶を手繰れば、街の女の子にはモテモテだし、バレンタインにはトラック三台分のチョコレートを貰えるし。至れり尽くせりだった。
身体能力も、日本時代のそれとは大きく異なっていた。
反復横跳びは七十回を記録し、シャトルランも二百回前後までいける。長座体前屈に至っては、ほぼ満点だった。つまりは、フィジカルエリート。
吉田沙〇里や、室〇広治もビックリな人物だったのだ、リュートは。
俺もビックリした。
「それでは、リュート。魔王討伐に向かうがよい」
「はーいっ!」
こうして、俺は魔王なんとかさんを倒しに旅だった。
◆
旅の途中で、俺はエルフの村をみつけた。
勇者であることを伝えると、すぐに村長のもとへと通される。エルフって本当に耳長いんだな、スゲーって思っていると、その中でもひときわ耳の長いお爺さんが現れた。なんていうか、本当に長老、って感じの人だった。
「おぉ、勇者様――! 我らをお救い下さい!!」
「な、なにがあったんですか!?」
「魔王軍の幹部が、攻め込んでこようとしているのです! このままでは、村が焼かれてしまいます! どうかお助けを!!」
「な、なんだってぇー!? それは許せない!!」
果たして俺は、エルフの村を守ることになった。
その夜のことだ。
「明日は、俺の初陣か……」
緊張で眠れないでいると、俺の部屋のドアをノックする人がいた。
聞こえたのは、こんな声。
「勇者様? よろしいでしょうか……」
「はい。貴方は……?」
「私は村長の孫娘――リーシャです」
「リーシャ。その、孫娘さんがどうしてこんな時間に?」
俺は首を傾げた。
するとリーシャさんは涙ながらに、こう訴えるのだ。
「貴方は騙されています! 今すぐ逃げてください!」――と。
俺はさらに首を傾げた。
騙されているとは、いったいどういうことなのだろうか。
「どういうことですか? リーシャさん」
「村長――祖父は、魔王の手先です! 貴方をこの村に呼び込んで、こうやってリラックスしているところを狙うつもりなのです! 卑怯です!」
「なに、それは卑怯だ! 駄目だよ、そんなの!」
俺は怒った。
勇者を騙して倒そうなんて、そんなのは許されない。ラノベ的な展開としても、ここは俺が大活躍するところなのだから、邪魔をされたくはない!
そう思って立ち上がると、村の入り口の方から誰かが騒ぐ声が聞こえた。
窓から見ると、そこには無残にも殺されていくエルフの人々の姿。
そして、魔王軍と思しき魔物の群れがあった。
「あぁ、逃げてください勇者様……」
「大丈夫だよ、リーシャ」
俺は彼女にウィンクする。
すると、リーシャはキュンとしたように頬を赤らめた。
「キミのことだけは、絶対に守ってみせるから」
そして、俺の勇者としての初めての戦いは始まる。




