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〈美月 視点〉ダメな私


セリフが余り無いのは自分もあまり好かないのですが、書いてると説明描写ばかりになってしまう…


もし、読みにくかったりしたら、感想などで頂ければ治す様には善処します…


今までサブタイトルを1話、2話という形だったのですが、自分風にサブタイトルを考えて変更しました。

こっちの方がどの話だったかとか分かりやすいと思ったので…


それと、久しぶりの投稿だったせいで前の話と噛み合わない部分が出てきてしまい1話の内容を、


仕事に出かけた美月=仕事ではなく買い物へ


お手伝いさん=お手伝いさんではなく美月の母親〈新キャラ〉に変更しました。


それに応じて中身も大分変わってしまいました。


読んでくださってる方に度々ご迷惑をかけてしまって申し訳ないです。

こんなですが、今後も読んで頂ければ幸いです。

 



美月は生まれてきた子供に星空と名付けたのだが、それからは波乱の日々だった。

『男』の子が生まれた、ただそれだけで世間が、マスコミが黙っていなかった。


何処から嗅ぎつけたのかは知らないが、マスコミは蓮日の様に美月の元にやって来た。

病院中も退院後も毎日の様にやって来ては、生まれた『男』の子を一目見せて欲しい、写真を撮らせて欲しいと血走った目で言ってくるのだ。


マスコミ以外にも、近所の住人や騒ぎを聞きつけた『女』達が同じようにやってくる。

何度、突っぱねてもやってくるせいで警察沙汰になった事もあった。


会社は辞めた。

子供が生まれると国から支援金が貰えたりするのだが、それでも一生分のお金が貰えるわけではない。支援金といっても、ある程度働かなければ子供を賄える程の生活が出来ない程度の額だ。


しかし、生まれてきた子が『男』だった場合、その額は破格の物になる。

ただでさえ、数の少ない『男』なのだから、国が大切にしようとするのも当然の事だ。


働かなくても良いほどのお金を手に入れた美月は、会社を辞めた。

もともと、仲の良い同僚なんてものも居なかったし、働いては星空を家に1人にしてしまう。


何より、会社の人間達も他の『女』達と同様、星空を狙う敵だったのだ。


今まで、ろくに話しかけても来なかった癖に美月に男の子が生まれたとわかるや否や、毎日の様に電話をかけてくるのだ。


一度試しに出てみれば、皆口を揃えて、息子に合わせて欲しいの一点張り。

あんな、仕事場でこれ以上働ける筈もなかった。


こんな事が毎日の様に続いたせいで、美月は他人を信用する事が出来なくなっていた。

外には、星空を狙う『女』達が溢れている。

そんな所に行く事が怖くなり、一切外に出る事のない生活が続いた。


友達からも電話がかかって来てはいたが、怖くて出る事が出来なかった。

もし、あの子が変わってしまっていたら…そう考えるだけで怖くて仕方がなかった。


結局、友達にすら告げずに引っ越す事にした。

引っ越すといっても、美月の母である夜空の家、実家に帰るだけなのだが、隣の県と言うだけで、以前の様な静かな生活を取り戻す事が出来た。


純粋に美月と星空を心配してくれる夜空の存在は、精神を病みかけていた美月に取って救いだった。

星空が1歳になる頃には既に、外を出歩けるまでに回復していた。


しかし、美月の根本的な所は治らなかった。

それは息子の星空に対する過剰な心配と罪悪感。


美月自身は他人の目から恐怖を感じることは無くなったが、他の『女』達は『男』である星空の存在をしれば黙っていない、と言う考えは心に根強く残っていた。


ーー私なら大丈夫、だって私は『女』なんだから…でも、もし星空が、星空の事が知られたら…


嫌でもそういうふうに考えてしまう。

外に星空の事がバレてまた警察沙汰になったりでもしたら、もしかしたら、人攫いにさえ遭ってしまうかも知れない。


そんな考えから美月は星空の事を周囲に知られないように、家の外に出さないようにと徹底した。


近所の人には、うちの子は病弱な女の子だと偽り、星空には、外はとても危険な所だからと信じ込ませ、外に出さないようにと徹底した。


自分の愛する息子を守る為。

そう言ってしまえば聞こえはいいが、美月が星空を出さないようここまで徹底するのにはもう一つ、理由があった。


この世界の『男』は大まかに2つのパターンに分けられる。

襲おうと自分に迫ってくる『女』に恐怖を覚え、オドオドとした性格になってしまうパターンと、自分に媚びを売る『女』を下に見て、傲慢な性格になってしまうパターン。


そのどちらも、幼少期に『女』と関わってしまったのが原因なのは明らかだった。

美月自身、過去に『男』に邪険に扱われた事がある。


故に、星空にはそうなって欲しくなかった。

星空の将来を思って…とかそんな理由ではなく、学生時代に夢見た『男』と笑い合えるような生活。


自分を対等に見てくれて、優しく接してくれる…そんな『男』に育って欲しかった。


星空を守る為なんていって、結局は自分の欲に忠実だったのだ。


幸いな事に、星空は美月の理想通りの『男』に育っていった。

5歳にして、もういい歳の夜空を気にかけるような優しい子に、美月達に笑顔すら見せてくれる優しい『男』に育っていった。


同じご飯を一緒に食べて、同じ湯船に一緒に浸かり、同じ布団で一緒に眠る。

過去に夢見た生活がそこにあった。


だけど、そんな優しい星空が笑顔を向けてくる度に胸が締め付けられた。


星空は頭が良く、5歳児ながらにして小学生のドリルすら解ける程の天才だった。


最初は喜んだものの、ずっと机に向かっている星空の姿は今では痛々しく感じてしまう。


本来ならば外で遊んでいる年頃のなのにも関わらず、自分の都合でこの小さな家に閉じ込めているせいで、勉強しかやる事が無いのだ。


そんな考えが頭をよぎり、その事が美月に罪悪感を与えていた。


娯楽の少ない小さな空間…2人目の子供、輝夜が生まれてからは星空の笑顔も増えたが、皆んなの前では決して見せない、星空の表情。


星空が外に興味がある事は知っていた。

よく部屋の窓から、外を眺めては悲しい表情を浮かべているのを美月は知っていたのだが、それをどうすることも美月には出来なかった。


1度外に出ようとした星空に、美月が本気で怒った事がある。


ーーもし、誰かに拐われでもしたら、もし外に出て『女』の本性を知ってしまったら…


今の生活が終わってしまうかも知れない。

気がつけば星空は泣いていた。

今まで、泣いた事なんて全然なかった星空が大きな声を上げて泣いていた。


泣いている星空と、星空を必死にあやす夜空を、美月はオドオドしながら見ているだけだった。


窓を眺める悲しい表情、涙を流す歪んだ表情。

そんな表情を星空にさせているのが、自分なのだと思うと酷い罪悪感に襲われる。


それでも、近所の住人が窓から顔を覗かせる星空を見て、『亜麻色の天使』がいるなんて噂している事を知ったら、余計に外に出せる訳がなかった。


いくら有耶無耶にしても、いずれはバレてしまうのだろう。

それでも、今の生活を手放したくなかった。


結局は美月が考えているのは自分の事ばかりだった。

あの日、星空を守るなんて誓っておきながら、結局は『男』と一緒に笑い合える今の生活を守りたいだけ。


美月はそんな自分が嫌いだった。







「いってきます!すぐに帰って来るから良い子にしててね!」


「……うん、いってらっしゃい。」


買い物に出かける美月を星空は笑顔で見送った。

ただ、どこか影を感じさせる表情。


まるで、外に出かける美月を羨ましく思っているような…どこか儚さ感じさせる笑顔。

そんな笑顔から、美月は逃げるようにして家を飛び出した。


ーーそんな顔で…そんな悲しそうな顔で私を見ないで…ッ!!


最近、星空がそんな顔を浮かべている事が増えている様に感じる。

きっと、周りの『女』達からすれば『男』と一緒に暮らせるだけでも幸せだろうと、そう言われるのだろう。


それさえ叶わない『女』が沢山いるのだから…今、美月が感じている罪悪感すら、他の『女』達からすればただの我儘に過ぎない。


でも、それでも、1度味わってしまっては…『男』と笑い合える生活を知ってしまっては辞められる訳がなかった。






「み〜っつけた!!ママー、にいなまたみつけたよーっ!!」




可愛らしい女の子の大きな声で、ふと我に帰る。

逃げるように家を飛び出して、気がつけば公園のベンチに腰掛けていた。


「凄いじゃない!にいなちゃんは本当にかくれんぼが上手ねぇー。」


「えへへぇ〜あとはあかりちゃんだけだよっ!!」


どれぐらい時間がたったのだろう?

周りには、遊びまわっている女の子達と、それを見守る母親達がいた。


誰もかれもが、笑顔を浮かべている。

小さな女の子も、その母親も心から笑っていた。


その姿を遠巻きに見ている美月には、その光景がとても尊く思えた。

今の自分の生活なんかよりも、とても輝いてみえた。


ーー星空も、外に出られたら笑ってくれるかな?


あんな、仮初の笑顔なんかじゃなく、心から笑ってくれる、あの家族の様なそんな笑顔を…


そんな事を考えているとピヨッピヨッと鳥の鳴き声を模した時計台の音が聞こえた。

ふと見てみると、針は既に3時を回っていてどれぐらい自分がそこにいたかを示していた。


ーー早く帰るなんて言って、結局遅くなっちゃったな…


「本当にダメだな、私って…」


誰にも聞こえない声量でポツリと呟いた。

帰りも遅くなってしまったし、まだ買い物も済んでいない…でも、美月は心なしかスッキリした表情をしていた。



ーー帰ったら、星空に言ってあげるんだ…一緒に外に出かけようって!!


今日は無理だけど、明日にでも何処かに遊びにいけたら…もしかしたら、それが空回りして怖い思いをさせてしまうかも知れない。


『男』を外に連れ出すのだから、周りの『女』達は黙っていないかも知れない。


だったら、その時は私が守ってあげればいい。

人が多い場所は流石に無理かも知れないけど、ちょっと季節外れな海とか、山だったら…


星空にとっては見たこともない、初めて見る景色…星空は喜んでくれるかな、楽しんでくれるかな?

…心の底から、笑ってくれるかな?



正直、怖くないと言えば嘘になる。

『男』を外にだすのだから、何があるか分からない。

もしかしたら、これがきっかけで星空が変わってしまうかも知れない。


でも、それでも美月は星空を外に連れ出そうと決心していた。

家を出る時のような、あんな儚い笑顔じゃなく、心からの笑顔が見たい。


ーーそうと決まれば、早く帰らないと…買い物をとっとすませて、早く星空に会いたい!


ベンチから勢いよく立ち上がる。

遅くなったことを謝って、今まで、外に出ないように言いつけていた事を謝って、それで…


「って…、あれ?」


とその時、ポケットの中の携帯が鳴り出した。

画面を開くと、相手は夜空からだった。

大方、余りにも遅い自分に心配してか、怒ってか…そういう電話だろう。

そう思い美月は、電話に出た。


「もしもし、お母さん?ごめん、今から買い物済ませて直ぐ帰るからーー」


「美月ッ!!」


美月の言葉を遮った夜空の怒声が耳に響く。

最近はあまり聞かない、夜空の焦った声に戸惑いながらも美月は言葉を続けた。


「遅くなったのは悪かったって…買い物済ませたらすぐ帰るから。」


「そんな事どうでもいいのッ!!星空が、星空がーーッ!!」


「…え?」


次に出てくる言葉は美月の予想を裏切る言葉だった。


ーー、なんで、なんでいきなり星空の名前が出てくるの?それも、こんなにも焦った様子で…


状況が掴めない美月に更に追い討ちをかけるように、夜空の怒声が響いた。



「星空がいなくなったのッ!!」




いつもよりも少し長くなってしまいました。

あと1話だけ美月視点が続く予定です!


読んでくださった後に面白い、続きが気になるなんて思って頂ければ評価なんか頂ければ嬉しいです!

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