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本当の理由




「はぁはぁ、もう逃げられないわよぉ!!」


壁際に追い詰められて逃げ場を無くした星空の頬に嫌な汗が伝う。

これから何をされるのか?一切予想のつかない未知の恐怖が星空を襲う。



「…えへへぇ…かなたくぅん……」


「チイッ!まだ生理も来てないガキのくせに良い思いしやがって!」



女は何故か横に寝ている朱莉の方に目線をやりながらイラついた様に舌打ちをする女に疑問を感じる星空だったが、その目線は直ぐに自身に向けられ身を竦める事になる。



「まぁいいわ。ワタシの方がもっと良い思いするんだからッ!!」


「うぐぁッ!」



再び狂気の笑みを浮かべた女に星空は肩を掴まれ、押し倒された。

そして、地面に倒れた星空の両手を拘束し顔を近づけてくる。


女が吐いた酷いアルコールの臭いが気持ち悪い。


目に大粒の涙を溜めながら抵抗するも、星空の何倍も強い力で抑えてくる腕はピクリとも動かなった。


そして女は星空の目元の方へに、自分の顔を近づけて星空の涙を舐めとった。



「れろぉ……んんーッ、塩味!クセになる味だわぁ!ずっと舐めていたいくらい!その表情、いいわぁ!可愛い、可愛いッ!!ハァハァ、やっと見つけたわぁワタシの可愛い僕ゥゥ!ずっと貴方みたいな子が欲しかったのぉ!あんな、男ってだけでチヤホヤされて調子乗ってる男共なんかじゃなくて、穢れを知らない無垢な子が欲しかったのぉぉッ!全然可愛くないクセに周りにもてはやされるからって調子に乗って、私のあげた手紙だって全然返してくれないし!!あんなのクズよ、クズ!!…やっぱり、この位の歳の子が1番可愛よねぇ!汚れを知らない無垢な男の子が1番だわぁ!、それにあなた…改めて見ると、他の男共なんかよりも全然可愛いしぃ!!んはぁ、れろぉ…んんっ!ハァハァ、も、もう良いわよねぇ!?ずっと、我慢してたんだものッ!!」


「……だ、…だれか、だれかたすけてぇぇッ!!」



女は目元の涙や、半袖のせいで露出している星空の白い二の腕、服をまくられた事で晒された星空のぷっくらとしたお腹に舌を這わせる。


抵抗することも出来ずに好き放題にされて、星空は無我夢中に叫んだ。


助けを求めて大声をあげるが、自分から人気の少ない場所に逃げ込んでしまった事もあり、助けが来る事もない。


だが、そんな叫び声すら心地良いのか、女は一層笑みを深めた後、片手で星空の両腕を押さえつけ、もう片方の腕をズボンに掛けようとする。



星空は外に出た事を後悔した。

涙を流す目を瞑ると母、美月の顔が浮かんでくる。


美月はいつも、優しく接してくれながらも、決して星空を外に出そうとしなかった。


理由も教えられずに、家の中に閉じ込められていた星空は、その不満から美月との距離を取っていた。



(ぼくを、まもるためだったんだ…)



だけど美月が星空を外に出そうとしなかったのは、星空自身を守るためだった。

外に出ようとした星空を美月が怒ったのも、外にはこういう危ない人がいるから。



(ごめん、なさい…ごめんなさい…)



今更になって後悔の念が浮かんでくる。

そして、同時に浮かんでくるのは美月に対する謝罪の言葉。


自分を守ろうとしてくれていた美月と距離をとっていた事、美月の言いつけを守らずに外に出た事、それに対しての謝罪を繰り返すが現状は変わらない。


今にも女はズボンに手を掛けようとしていた。



「まだ、ずっと舐めていたいけれど、やっぱり男っていったら…ハァ、ハァハァ、僕のゾウさん、お姉さんが食べてあげるからねぇぇ!!」


「い、いやぁ…たすけ、たすけてぇッ…おかあさんッ!!」



今更になって星空は美月に助けを求めた。

今まで美月の好意を散々無下にしていたと言うのにも関わらず、美月に助けを求める事に対して星空の良心が傷つけられる。

 

だがその声は届かず、女は無情にも星空のズボンに手をかけた。



「そ、それじゃあ、いただきまぁぁ――ぐぎゃああッ!!」



もうダメかと思った時に聞こえたのは叫び声だった。

自分のではない、星空を拘束する女があげた声だった。

その声と同時に、身体にかかる女の体重が消える。


身体にかかる気持ち悪い息は感じなくなり、腕を押さえつける力も無くなった。


星空がゆっくりと目蓋を持ち上げると、視界には自分の髪色と同じ亜麻色が広がっていた。

そして星空の目蓋が完全に開ききる前に強く抱きしめられた。



「星空、星空ッ!良かった、無事で!!」



その声は母、美月のものだった。

抱きしめる力が強く、鈍い痛みに襲われる。

だが今はそんな痛みが、美月から感じる体温の暖かさが心地いい。



「お、おがぁ…おがぁざん…!!」



むせび泣く星空を安心させるように、美月は優しく星空の頭を撫でた。



「大丈夫、お母さんが来たからもう大丈夫だよ。」


「おかぁ…さん…」


割れ物を扱うかの様に優しく撫でられる事で、さっきまでの恐怖心が消えていく。


ーーもう大丈夫、お母さんが来てくれたから…


そして星空は、安心しきった様子で美月の腕の中で意識を落とした。


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