シスター、決意を固める
「ああ、ロルフも一緒だったか」
リック第二王子は礼を解くよう片手を挙げた。皆がそれぞれおしゃべりを再開するが、やはり王子のお言葉に聞き耳を立てているようだった。
「ごきげんよう、リック王子」
「ソフィー、大声を出して悪かったな」
おや、とわずかに目を見開く。
リック王子は良く言えば活発、悪く言えば横暴(これは言い過ぎかもしれない)。そのお立場も相まって、謝罪はあまりしない。
彼はロルフ様をちらりと見てから、私とヘレンに向き直った。
そうか、ロルフ様とリック王子は従兄弟だものね。しかもロルフ様は厳格な方だから、彼といる時はリック王子は弱いのかも。
意外な関係に納得していると、リック王子が何度も瞬きをしながら話しかけてきた。
「その、ここにいる新入生代表のヘレン・フォーサイスは、ソフィーの妹君か?」
「はい、私の妹ですわ」
なんとなく読めてきた。どうやらリック王子は、ヘレンに惹かれているらしい。つまり、これはヘレン、リック王子、ロルフ様の三角関係! しかも、男性二人は従兄弟である。
お二人とも、なかなか見る目がある。まるで恋愛小説のような展開だ。
ただ、だからといってヘレンに不用意に近づいていい訳では無い。まだヘレンに恋人は早いわ。
「ソフィー?」
「なんでしょう、リック王子」
悪巧みをしていたところに声をかけられ、瞬時に淑女の微笑みを浮かべる。彼はなんとかヘレンの気を引こうと必死だ。
「その、ヘレンは春の校外学習に誰と行くか決まっているのか?」
「ええと、お姉様と行けたらいいなぁって思ってます」
もちろん、私もそのつもりだ。
春の校外学習では、王都の西に位置するカイック平原へピクニックに出かける。校外学習と銘打ってはいるけれど、学習するのは平原の成り立ちのみ。あとは草花を愛でたり、昼食を頂いたりする。つまり、ただの交流の場だ。
「そうか、じゃあロルフと俺も着いていっていいか」
「……俺もか」
ロルフ様が呆気に取られたように呟く。
私としては、憧れのロルフ様と行けるのは嬉しい。でも、ヘレンは上級生二人、しかも今まであまり接してこなかった男性の前では気を遣うのではないか。王子からの頼みとあっても、お姉様が断ることだってできる。
不安になってヘレンの顔をのぞくと、ぱっと花開いたように微笑んでいた。
「わあ、楽しそうです! もちろん、ご一緒してください! ね、お姉様、いいでしょう?」
「ええ、ヘレンがいいのであれば」
ちょうどいい、その時にリック王子とロルフ様の本心を探ってやる。私の可愛いヘレンに少しでも害があるのなら、その時点でアウトだ。
またしても悪巧みをしていると、ヘレンがまた私の裾を引っ張った。
「お姉様、楽しみですね!」
ふわりと微笑むヘレンに、だらしなく表情を緩ませる。
この時は、四人それぞれが校外学習に向けて熱い志をもっているとは、思いもしなかった。




