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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第1章 変わらない世界の改変
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8. 迷える学徒。そして部員が増える。



 「はい、そうです。」



 「入部希望なのですが。」

 思わず俺と白川は顔を見合わせる。


 こんな得体の知れない部活に入部希望者がいるなんて考えもしなかった。


 「ど、どうぞ入ってください。」

 メガネちゃんは白川の前に座った。


 「北本さんはどうしてこの部を選んだんですか?」


 ほう、北本という名前なのか。


 「私はハイレベルな勉強ができると思いこの学校に入りました。決して部活動をするためではありません。しかし、入ってみると思いがけない規則がありました。様々な部活を見学しましたがどこも勉強ができそうにありません。私は途方に暮れていました。」


 部活強制規則の被害者俺以外にもいたのね。もう撤廃すれば?



 「そんな時、改めて部活一覧を見てみたらなんと新しい部活が増えていました。そして活動内容は私が求めていたものでした。もうここしかない、そう思って入部を希望しました。」


 理路整然とした説明が終わる。勉強ができる人の話し方だなぁ。



 そんなことよりも面倒なことになった。申請を通すためにでっち上げた部活名とそれに準ずる説明が思わぬ形で裏目に出た。たしかにあの名前と説明じゃ勉強する部活と思われていてもおかしくない。というか教師にそう思わせるためにでっち上げたのだから当然である。



 「申し訳ありませんが、学校の勉強のようなことをするつもりならこの部は適していないと思います。」


 俺も同感だ。実質『暇つぶしにいろんなものに首をつっこんでみる部』となった弊部では、北本の希望は叶わないだろう。


 「でも、もうこの部しかないんです。」

 あと数日で部活体験期間は終わる。北本は切羽詰まっているのだろう。


 「しかし・・・」

 白川も困っているようだ。



 北本の気持ちはとてもよくわかる。先週の俺を見ているようだ。


 よく考えてみればこの部活はもともと何だっただろうか。俺は暇をつぶす場所として、白川は編み物をするための隠れ蓑として、利害の一致した二人で創設した部活だったはずだ。


 そう考えると北本の要求はこの部活で満たせるのではないだろうか。

 元は各々がやりたいことを自由にやる部活だ。それが勉強でも問題は何もない。



 「いいんじゃないか。」

 二人がこちらを向く。


 「元々この部は各人がしたいことをする部活だ。誰かと勉強したいのであれば他をあたってもらうことになるが、一人で学習するスペースがほしいということならこの部の理念に適合する。」


 北本の表情が和らぐ。


「幸い机にも空きがある。俺たちが話すのが気にならなければ好きにすればいい。」


「気になりません!ぜひよろしくおねがいします。」

静かなイメージの北本が嬉しさを顕にした。よっぽど悩んでいたのだろう。


「改めて、北本です。よろしくおねがいします。」

「よろしくおねがいします。」「よろしく。」

晴れてSSS部は3人体制になった。




北本雫と書かれた入部届を3人で職員室に出しに行き今日は解散になった。


「どこに住んでいられるのですか?」

「夏が丘です。」

隣町か。じゃあ電車通学かな。

二人が世間話をする後ろに付いていたらいつの間にか校門に着いていた。


「私こっちです。」

じゃあ俺と一緒だな。


「では私はここでお別れですね。ではまた。」


白川と別れる。

北本と二人で歩き出す。


「お二人はお付き合いされてるんですか?」

 「いや付き合ってないが。」

 お前も聞いてくるのか。


 「そうですか。」

 「なぜそう思う?」


 中谷はなんとなくそういう話が好きそうだから聞いてきても不思議じゃなかったが、北本はそうとは思えない。なんでそう思われているのかここできっちり把握して、もう聞かれないように改善しよう。


 「さきほど白川さんと話している時、斉藤くんの話をとても楽しそうにしていました。それに私が入部するときも、二人で将棋を楽しそうにしていましたよね。」

 あいつ影で俺のこと笑い話にしてるんじゃないだろうな。ちょっとショック。


 「あいつは人に何かを教えることが好きなんだとさ。」

 「それはいいことを聞きました。是非私の勉強でもたくさん教えてもらいたいものです。」


 よかったな白川。俺以外に生徒が増えたぞ。








 すっかり日課となってしまった寝る前の麻雀を終え、就寝の準備をします。

 今日はびっくりすることがありました。まさかSSS部に入部希望者が来るとは思いもしませんでした。


 これからどうなるのでしょうか。

 北本さんはとてもいい人です。

 お勉強もいいですが私達と一緒に遊んでくれるようになったらきっと楽しいでしょう。

 明日からの部活がもっと楽しみになってきました。

 ・・・。


 でも、少しさみしい気持ちがするのはなぜでしょうか。



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