84. みんな大好き水着回
「じゃあね、ま・さ・くん」
そう言って意味深な笑みを浮かべた佐々木と、なんとも言えない笑みの白川と、暗い顔の北本と、微妙な顔の順と、そしてなぜか威嚇してくる刻と別れ、それぞれ脱衣所に向かった。
「・・・。」
外の混雑具合の割には混んでいない男子更衣室でさっと着替えを済ませる。
男の着替えなんざ10秒で終わる。
だが女子はそうではない。
俺は集合場所の自販機前で女子の更衣室を斜に見ながら今そこにあるだろう楽園を妄想する。
きっと中ではこんな会話が行われていることだろう。
「かおりんの肌、やっぱきれいだよね~」
「そ、そうですかね。でも佐々木さんもおきれいだと思いますよ。」
「うそー、私なんて子供の頃の日焼けが・・・ね」
「でもいいじゃないですか。そのスタイルなら何でも・・・」
「いやいやわたしなんて太ってるだけだよ。かおりんくらいが1番良いって。」
「私なんて佐々木さんに比べたら、全然、貧乳ですよ・・・」
「「「貧乳・・・?それで・・・・・・?」」」
・・・。うん。これはあくまで個人の感想です。
気を取り直してプールの案内図を見る。
改めて見ると結構広い。
子供用、流れるプール、波がでるやつ、ウォータースライダー、めっちゃ深いプール等々多種多様のプールがあるようだ。とても市民プールの規模とは思えない。
たしかにこれだけ充実していれば平日とはいえ夏休みど真ん中ならこれだけ混んでいるのもうなずける。
しかし、こう、なんというか、なかなかの景色だ。
あっちを見てもこっちを見ても水着水着水着。
久しくアニメの水着回くらいしかプールには縁がなかったので、うーん、実に眼福だ。
「なぁにじろじろ見てるんですか。」
「え?」
あたりを見ていたら非難の声が聞こえてきてとっさに振り返る。
・・・。
「感想とか、ないんですか?」
「え?・・・や・・・えーと・・・、他のやつらは?」
「まだ着替えてますよ。・・・言うことはそれだけですか?」
「いやぁ・・・」
そういわれても、白川の格好は言葉を失うには十分に刺激的だった。
可愛く揺れるポニーテールにまぶしいほどの白いビキニ。
出るところはしっかり出ていてひっこむところはしっかりひっこんでいる。
すらりと伸びる脚も相まって、まるでモデルかなにかかと思えるその美貌は俺の語彙力ではとても表現できないものだった。なぜ彼女は俺なんかとプールに来ているのだろうか。不思議で仕方ない。
「どうなんですか?」
「・・・かわいいと思う。似合ってる。うん。ほんとに。」
「ふふふ、ありがとうございますっ。実はちょっと派手すぎたかなと思ってたんですが安心しました。」
「まあでも多分ナンパとかされるとおもうぞ。」
「その時にはあなたに守ってもらうから大丈夫です。」
・・・。はぁ、なんだこの緊張感は。今日の白川いつもと違くねえか?
「・・・どうだろ。俺に務まるか・・・」
「そこは『任せろ』って言ってくださいよ。」
「・・・・・・いやぁ、自信ないなぁ。」
「もうっ。うふ、まぁいいです。」
はぁはぁはぁ、なんとか及第点をもらえたようだ。
心臓の鼓動がいつもの数倍の速さでビートを刻んでいる。
やっぱ俺にはこの任務きついよ・・・。
もう数人男がいてくれたほうが気が楽だよ。
・・・まぁそうなると俺は必要なくなるか。
「おまたせ~~」
「あ」
残りの4人も着替え終わったようだ。
おうおうおうおうすごい上下運動。
荒波を胸に携えて登場してきた彼女にまわりの男たちの視線が一気に注がれる(そのうちの1人)。
「えへへ、どう?」
「・・・すごいな。」
「え?」
「いや、すごい似合ってる。」
「ほんと?ありがと!」
白黒のストライプのビキニはまさに佐々木のために存在していると言わんばかりに自身の線の曲率をもって持ち主の戦闘力を示していた。
なんという破壊力。視線を離そうにも離せない。恐ろしい力だ。とても俺の手では対処できない。だからじっと見つめてしまうのは俺のせいじゃない。
「わたしの感想は〜」
「・・・そう言われてもなぁ」
「変なこと言ったら殺すからね!てかあんま見るなっ!」
ちびっこ姉妹はそれぞれ水色とピンクの水玉柄のワンピースだ。実に可愛らしい。
体型もあわさってどうみても子供用プールのお客様だがそんなことを言った日には俺は瀕死の重傷を負うことになるだろう。
「ふたりともいいんじゃない?」
「う、うるさいっ!あんたに褒められても嬉しくないっ!」
「もー、ときちゃん素直じゃないんだから。」
・・・。
(よし、楽しく話せたな)
2人のおかげで高ぶった気持ちも少し落ち着いてきた。ありがとうぺたんこシスターズ。
「じゃあそろそろ行くか。」
「・・・ちょ、ちょっと!」
「なに?」
「なに?じゃないでしょ。私にはなんか無いんですか。」
「いや、お前俺になんか言われても嬉しくねえだろ。」
「そりゃもちろん。」
「じゃあいいじゃねえか。」
「・・・斉藤くん。」「はあ、まさくん」「まあくん・・・」「ほんと、最低ね。」
「な、なんだよ。」
え、今回のやりとりパーフェクトコミュニケーションだっただろ?
「いいんです、どうせ私の水着姿なんて・・・」
「「「「・・・・・・」」」」
無言の圧を受ける。
わかったよ。言やあいいんだろ。ったくなんでみんな俺に感想を求めるかな。俺に褒められても嬉しくねえだろ。
「なんだ、その、案外かわいいと思うぞ。珍しく。」
胸と腰のところにフリルのついた上下黒のビキニは北本がいつもかけている黒縁の眼鏡とともに北本の白い肌ととてもあっている。いつも散々な言われようだが、まさに色の白いは七難隠すってやつで今の姿を見たていたら水に流してやってもいいというような気持ちにさえなってくる。
「・・・」
「一言多いんだよまさくんはぁ。」
「まったくなにがいいんだかこんな男。みんなおかしいよ。」
「ふふふ」
まったく照れくさい。勘弁してくれ。
「ではみなさんまずはシートを広げられそうなところを探しましょう!」
白川の一言でようやく俺達は歩き出した。
北本は少しうつむいて俺の後ろを付いて来ていた。しかし表情を見るに怒っているわけではないようだ。うーん、まあよくわからないがほっておこう。
ちなみに北本はそれっきりしばらく話さなかった。




