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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第6章 新世界を覗き見て
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79. 今の自分を殺すたったひとつの方法



 自室に帰るがそう簡単に眠気は来てくれない。いつも聞こえているはずの名前も知らない虫の鳴き声が今日はやけに気になる。

 「はぁ・・・・・・」

 ひとつため息をしてベッドに仰向けになりながらぼーっと今日のことを振り返る。

 正直言おう。まみ姉に対して昔から持っていた苦手意識は今日1日ですっかり薄れていた。

 確かに生まれながらのやかましさは健在だがそれも昔よりマイルドだし、なにより強引さがなくなった。

 得意か苦手かと言えばやっぱり苦手な部類なのだが、昔ほど嫌な感じはしない。

 別に一緒にいても不快に感じないし、なんなら久々の再会を懐かしむ気持ちが勝っている。それこそ特別な距離感に乗じて他の人にはしないであろう語らいなんてするくらいにはまみ姉の来訪を楽しんでいる。


 ふと思った。

 案外子供の頃のトラウマなんて今となっては取るに足らないものなのかも知れない。

 あの頃は、見えている世界も自身の寛容さも知見もなにもかもが狭かった。

 子供なんてそんなもんだろうと言ってしまえばそこまでだが、今の俺の全ては子供の頃というベースから始まっている。

 その極めて不安定な基礎に色々なものが積み上がって、頂点に今の俺がある。

 こう考えると子供時代の経験や肌感覚や思い出も軽視できない気がしてくる。

 過去のある種誤ったと言うか軽率だった結論を更新するというのは結局今現在の自分の地盤を固めることにつながるということを今日学んだ。


 時は流れ続け、人は変わり続ける。しかし、思い出というのは契機がないと永遠に不変である。

 今日ここでまみ姉に会わなかったら俺はずっと子供の頃の感情を抱き続けていただろう。

 過去を知るために今を経験する。

 人の中に流れる時間はある意味遡行可能なのかもしれない。


 

 

 

 ・・・まあ、実はまみ姉が変わったんじゃなくて俺のストレス耐性が強化された可能性も否定できないけど。

 なんてったって不本意ながら高校に入ってから我<<が>>が強かったり気が強かったり芯が強かったりする女子と関わるようになったからな・・・。

 ・・・本当に不本意なのだろうか。

 ・・・うーん、今となってはなんだかこの認識を改めてもいいような・・・

 ・・・・・・なんだかあいつらの顔を思い浮かべたら眠くなってきた・・・


 翌日の昼過ぎ、

 「また会おうね~~~」

 「次は綾ちゃんが私の家に泊まりにきてよ!」

 「そうね、綾が高校生になったらそれがいいわ。なんなら私も一緒に行っちゃおうかしら。」

 「いいですよ。もちろんマサも。」

 「俺はいいよ。」

 「もう照れちゃって~~!」

 「ああもう!いちいち頭を撫でるな!」

 「またね」

 「・・・ああ」

 そう言ってカバンを持ったまみ姉は旅立っていった。その姿は心なしか来た時よりも昔のまみ姉に近い軽やかさにあふれているように俺の目に映った。


 初めはどうなることかと思ったが終わってしまえば名残惜しいとさえ思える。

 次まみ姉に会う時、俺達はどうなっているだろうか。またしても過去に囚われてはいないだろうか。未来に囚われてはいないだろうか。今に囚われていないだろうか。

 まぁその時はその時だ。

 人間、死なない限りは生きていられる。

 俺は縁側の方を一瞥して自分の部屋に向かった。



 今度書店に行ったらおねショタの本もちょっと見てみるか・・・・・・

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