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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第1章 変わらない世界の改変
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7. 英語は難しい。そして来客は突然に。



 入学から1週間が経ち、そろそろ高校にも慣れてきた。


 校舎にはもう目新しさは感じなくなってきたが、授業はそうではない。

 それにしても高校の勉強は難しい。中学の内容がおままごとに思える。


 中学生になった時は、小学校の授業内容はなんと簡単だったのかと思ったものだが、それは高校になっても同じだった。きっと大学に入ったときも同じようなことを感じるのだろう。



 俺は自分を勉強が得意な人間とは評価していない。

 それは自分よりもっと勉強できる人を知っているからだ。


 世間一般から見れば、春山高校に合格した、という実績から斉藤は勉強ができると評価されるだろう。

 その評価は間違っているとは思わない。外から見ればどこに合格したか、くらいしか判断基準がないとわかる。


 しかしそれが自己評価と一致するかと言うとそうとは言い切れない。


 春山高校に合格するのが上手なんだねと言われれば、胸を張って「はいそうです。」と言うだろう。



 だが勉強が得意かと言われるとどうだろう。

 『勉強』が示す範囲も曖昧な上、『得意』の基準も不明である。



 えてして他人の評価と自己の評価がずれるが、その原因はここにあると思う。


 つまり、その分野への理解度に評価基準は依存しているということである。


 だから俺は人に評価を口にしない。


 人間なので思うことはある。例えば中谷は話し方やノートを取らずにグーグー寝ているところからあまり勉強が得意ではないのかなとか、右のメガネちゃんは姿勢良く真剣に授業を聞いていたり、休み時間もノートをまとめていたりするところから真面目で勉強が得意なのかなとか考える。



 だが心の中で思うだけで人に言わない。

 そもそもこの評価に一切の信頼性を認めていない。

 せいぜい暇つぶしに考える程度である。


 両サイドの二人のことはこれ以上わかりそうにない。白川のことを考えよう。後ろから見るぶんにはちゃんと授業を受けているようである。

 麻雀の一件も考えると根は真面目な性格なのだろう。しかしそう考えると白川の行動には驚かされる事が多い。この女には底知れぬなにかを感じる。



 なんだか怖くなってきた。もうこの下世話な思考はやめよう。

 俺は外を眺めることにした。


 風がグラウンド横の桜の花びらを散らせている。

 窓から入ってくる風がなんとも心地良い。

 なんだか眠くなってきたな。

 少し眠ることにしよう。


 ・・・。


 結局外国人の英語の教師が何を言っているのか最後までわかることはなかった。







 放課後になり部活動の時間になった。


 「じゃあ今日も麻雀やるか。」

 席につきスマホを取り出す。今日はなんとしても勝ってやる。わくわくしながらアプリの友達対戦モードを開く。

 

 「ま、待ってください。この部は麻雀部ではありません。楽しいですが他のこともやりましょう。」

 「えー、麻雀やろうぜ。」

 「だめです。それとも斉藤くんは麻雀が趣味になりそうなほど大好きになったんですか。」

 「そこまで言うほど好きじゃないけど・・・」

 「では他のことにも挑戦しましょう!」

 「・・・わかったよ。」


 ちぇっ。楽しみにしてたんだけどなぁ。でも白川を怒らせると怖そうだから素直に従っておこう。なんでか知らんがめちゃくちゃやる気あるみたいだし。



 「・・・でもその前に半荘1回だけやりましょうか。」

 「いいねぇ。」

 白川への好感度が急上昇した。




 「かあ、相変わらず強いな。」

 今日もボコボコにされた。


 「たまたま、たまたまですよ。」

 そう言いながらも嬉しそうだ。くっそお、いつか勝ってやる。


 「で、今日は何するんだ?」

 「あ、そうでした。今日はこんなものを用意しました。」

 何かをカバンから取り出す。ん、なんだ?ずいぶん大きいな。それは…碁盤か?


 「今日は将棋をやりましょう。ルールはご存知ですか?」

 白川は折りたたみ式の碁盤を戻して、慣れた手付きで駒を並べている。

 「駒の動かし方くらいは。でも本当に基礎の基礎しか知らない。」

 「それだけわかれば十分です。やってみましょう。斉藤くんが先攻でいいですよ。」

 よくわからないので適当に歩兵を動かす。何も言ってこない。なるほど最初は俺の技量を見てみるということか。


 ・・・。

 ・・。

 ・。

 「それを動かしたら負けですよ。」

 にこにこしながら角を動かし俺の王将を取る。

 「ま、待った。」

 「待ったはなしです。でも今回は特別ですよ。」

 そう言って手を戻してくれる。


 改めて盤上全体を見る。ここにはあれが効いていて、それがそこにあるからこれは動かせなくて、これがあれで・・・。



 こんなに難しいのか将棋というものは。考えることが多すぎる。もう何がなんだかよくわからなくなってきた。


 結局その後いろいろ考えながら指したが、すでに後の祭りですぐ決着した。

 「難しいな。こんなに難しいとはしらなかった。」

 「たしかに最初は難しいかもしれませんね。でも少し学べばきっと私より上手になれますよ。」

 「俺からすれば相当強く感じたけどな。」

 「全然そんなことないです。私は何度やってもおじいちゃんに勝てませんでした。」


 おじいさんに教わったのか。どうりで手慣れていると思った。


 「お前に勝てるかはわからないが結構面白いな、将棋。」

 白川は笑う。


 「それはよかったです。今日は将棋を遊んでいきましょう。」

 白川は俺の横に移動する。

 今日はどんな熱血指導があるのだろうか。

 楽しみなような少し怖いような。




 そんな気持ちを抱いた時入り口に人の気配を感じた。








 「SSS部の部室はここでしょうか。」





 そこに立っているのは知った顔と眼鏡だった。


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