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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第6章 新世界を覗き見て
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75. 【急募】同人誌のおすすめの隠し場所



 「この部屋?」

 照れて赤くなっている綾をよそにまみ姉は階段を上がってすぐの部屋に入ろうとする。

 「そこは俺の部屋。」

 すかさず俺が牽制する。

 「マサの部屋かぁ。」

 しかしまみ姉は当然の権利のように俺の部屋に入る。

 「待て待て。俺の部屋だって。」

 「いいじゃん。それともなにか見られたらまずいものでもあるの?」

 まみ姉はにやにやしながら俺を見てくる。


 ・・・しかしここまでの流れは昨日脳内でシミュレーション済みだ。

 漫画やアニメにおいて、お姉さんキャラが家に来た時は間違いなく男キャラの部屋に無断侵入する。

 次にベッドの下を漁る。

 そしてあたふたする男キャラをお姉さんキャラが弄ぶ。

 こんな展開は100回は見たと行っても過言ではない。

 今や紙媒体のそういう某は絶滅の危機に瀕しているのだから大丈夫だろと諸兄は思うかも知れないが、ことオタクとなると話が変わってくる。

 薄い某があるのだ。


 「ちょっとやめなよまみ姉さん。」

 すっかり普段通りになった綾はさっきとはうってかわっていつもの調子で呆れながらまみ姉を止める。こいつもまみ姉の目的のブツが何かを察したようだ。

 「いやいやせっかく来たんだからもったいないじゃん!」

 なにがもったいないだよ・・・。


 だがこういう展開になることはわかっていた。

 わかりきっているなら対策すればいい。

 予測し想定し、そして対策する。そうすれば百戦危うべからず。北本も言っていた。

 昨晩俺はまず予測した。

 まみ姉は十中八九俺の部屋に来る。

 そして俺の部屋を漁る。

 今の隠し場所(ベッドの下のケースの奥)なら間違いなくバレる。

 あまりにも典型的すぎる。

 だから場所の変更は必須である。


 ではどこに変更すべきか。

 薄い本だがそれなりにある。隠し場所の候補はそう多くない。

 俺は想定する。

 ベッドの下を一通り漁ったあとのまみ姉は諦めるだろうか。

 いや、きっともう1,2場所漁るだろう。

 ベッドの近くのクローゼット、ここはダメだ。最有力候補だ。

 勉強机、もだめだ。

 これもよくある隠し場所だ。

 となると、候補は本棚か。

 漫画が並んでいるので迷彩になる。その漫画たちもあまり人に見られたいものではないが致命傷ではないだろう。むしろそれらが囮になってくれるかも知れない。肉を切らせて骨を断つというやつだ。


 第一薄い本を知らない人があの極薄背表紙を見た時いかがわしい本だと思うだろうか。

 いや、思わない。

 オタクだからあの背表紙でわかるのだ。

 普通の人が見たら文化祭かなんかのしおりとか何かのパンフレットとかだと思って終わりだろう。

 そう考えると本棚は逆に安全だ。

 まみ姉は一般人だ。一般人は薄い本なんて存在すらしらない。だからバレないのだ。きっとそうだ。一般人のきもちになるですよ。


 「どこだ~~」

 案の定まみ姉が次に狙ったのはクローゼットだった。

 「絶対あると思うんだけどなあ~」

 だ・・・駄目だ まだ笑うな・・・

 だがしかし、まみ姉があまりにも想定通りで笑えてしまう。

 「ねぇあんたどこに隠してるの?」

 クローゼットの中で揺れるまみ姉の尻をよそに綾が俺に聞いてくる。

 だが当然バカ正直に答えるほどバカじゃない。

 「ないものはいくら探してもない。」

 「ほんとぉ?」

 「もう令和だぞ。見るとしても紙なんて・・・」

 「まみ姉さんがベッドの下見た時あーあって思ったけどあれもう捨てたの?」

 「ちょっ、おま、なんで知ってんだよ。」

 「ふーーーーーーーん、マサ、昨日の夜隠したね。」

 「うおぉ。」

 目の前に立っているまみ姉に全く気づかなった。相変わらず音もなく距離を縮めてくる。

 「ここだ!」

 俄然やる気のまみ姉は次に教科書が置かれている勉強机を漁る。

 ふっ。

 どうやらまだ大丈夫らしい。

 というかなんだかまみ姉と俺の知恵比べの様相を呈してきたが俺達は何をやっているのだろうか。


 「・・・・・・。」

 下からじとーーっと俺を見てくる視線に気づく。

 「な、なんだよ。」

 「いや、別に。」

 そりゃこんな現状見りゃ呆れるわな。

 「いいぞ自分の部屋に帰って。」

 「まみ姉連れて行かないでどうすんの。」

 まあ、そうだよな。しかし当の本人がこれだし・・・。

 「もういいだろ、ってどこ見てんだよ!」

 「どこって本棚だけど・・・おやぁ?その反応もしかして。」

 「・・・。」




 ・・・・・・。

 ・・・・・・・・・。

 計画通り。


 昨晩もう一度考え直した。

 いくらなんでも本棚は危険過ぎる。

 もっといい隠し場所があるはずだ。

 俺は今年1番脳を回転させた。きっとIQは4桁をこえていただろう。

 考えに考えたどり着いた結論は「学校に持っていっているカバン」だった。

 中に入っている教科書を勉強机に置けばぎりぎり全部入る。

 さすがのまみ姉も机の上に教科書があって怪しむはずがない。

 あまりにも完璧だ。

 バレるはずがない。

 本棚までたどり着いたまみ姉もさすがだが俺が一枚上手だったようだな。

 この勝負、俺の勝ちだ。



 「・・・・・・あんた・・・こんな漫画好きなの。」

 まみ姉の声はさっきまでの感じとはまるで違う低いトーンだった。

 そんなまみ姉の手には萌え萌えした女の子がたくさん出てくる系漫画。

 それをめくる音がこの場を支配したのだった。

 「まぁ・・・・・」

 「・・・・・・こういうのは隠したほうがいいと思うよ。」

 あれ?もしかしてこっちを隠すべきだった?

 「・・・。」

 「・・・。」

 「・・・・・・。」

 

 「あんたたち何やってるのーー?はやく降りてきなさーい!」

 どうやら肉を斬られた時点で致命傷だったらしい。

 やはりオタクに一般人のふりは難しい。

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