74. 家族、それは最も身近な他人
「へぇ!綾ちゃんテニス部なんだ~。私もテニス好きだし今度一緒にやろっか!」
「うん!あ、でもあやまみ姉さんに運動で勝ったことないしなぁ~。」
「大丈夫大丈夫!!それにしてもおばさん変わりませんねぇーーー。」
「あらあら、本当?」
「ええもう昔のまま!あ、そうだ、これお土産!みなさんで食べてください!」
「まみ姉さん今大学生だよね?」
「そうだよ~。あやもはやく大学生になりな。楽だから笑。」
「じゃあ彼氏とかいるの?」
「彼氏?いないんだな~それが笑」
・・・。
話が弾む弾む。もう反発係数が5くらいあるんじゃないかってくらい3人の会話は弾んでいる。
もちろん俺は端のほうでできるだけ目立たないように静観している。
しかしそんな努力もむなしく、火の粉は俺にも飛んでくる・・・。
「身長何センチ?もう私もついに抜かされちゃったね。今高1だっけ?早いなあ~。勉強どう?マサは昔から勉強はできたから大丈夫か笑。部活には入ってるの?あ、そうそう、マサは彼女できたのかい??どうなのどうなの??」
・・・このように今まさに火の粉というか質問の炎が飛んできている。
「まぁ・・・いないけど・・・・・・」
一瞬で質問を精査し、最も話が終わりそうな質問に最も話が終わりそうな返答をする。
「あっはっは~そっかそっか~じゃあ私と一緒だ笑。」
どこが一緒だか。恋人がいないという状態が今たまたま同じというだけで、それ以外のポテンシャルは正反対といってもいい。
俺なんて未だに一度も話したことないクラスの女子がいるんだぞ。それもひとりやふたりではない。なんなら喋ったことのある女子を数えたほうがはやいかもしれない。
そんな俺と同じ?まったくまみ姉、大学生のくせに人を見る目はないようだ。
「マサの魅力に気づかないなんで同級生はまだまだだね。」
「ああ俺もそう思う。」
さすがまみ姉、人を見る目はあるみたいだ。
「綾ちゃんは彼氏いるの~?」
まみ姉の荷物を運んでいる俺の目の前ではそんな話がまだ続いていた。
ちなみに俺が荷物を運んでいるのは先程母上に命じられたからである。
「え、いるわけないないないっ!」
綾は大袈裟に手を振る。
好きねぇそういう話。大学生ってそんなことしか考えてないの?日本の将来が心配なんだけど。
そんなことを思いながらも意識はしっかり2人の会話に向いていた。
だってこんな機会でもないと兄妹のそんな話は聞けない。
いや、別に興味があるってわけじゃないよ?
でもせっかくだし聞いておこうかなって。
もしなんの心構えもしない時に綾が彼氏なんて連れてこようもんなら卒倒してしまう。
いや、別に綾が彼氏のものになるのが嫌ってわけじゃないよ?
「部活忙しいし、勉強もあるし、そんな暇ないよ!」
「え、でもモテるでしょ?」
「いやいや、いやいやいやっ。」
「告白されたことは?」
「・・・・」
え、なにその沈黙。
実際兄の俺から見ても綾はブスではない。
身内びいきを割り引いても多分そのへんの中学生の中では顔は中の上だろう。
きっとこの家系、顔はそれなりに良い遺伝子を持っている(要出典)。
だって俺もそのへんの高校生よりは多少は良いと思っている(要出典)。
しかし・・・まさか・・・。
俺はさらに聞き入る。なぜか3人階段の途中で立ち止まるという奇妙な状況になっていた。
「ない・・・・・・こともないけど。」
「やっぱり~~〜」
・・・。
おいおいおいまじかよ。危うく今卒倒するところだった。
確かに、顔はマシだと思うよ。それは認める。
だが・・・いや・・・。
なんとなく綾はそういうことに無縁だと思っていた。なんか血の繋がった人はそういうこと想像したくないじゃん。
というかなんで兄である俺を差し置いてそんなことになってるの?許せん。そんなふしだらな子に育てた覚えはありません!
・・・。
・・・いや、別に良いんだけどね。俺には関係ないし。
・・・・・・。
再び歩き始める2人についていく。
この荷物こんなに重かったっけ。
俺は肩と心に若干の痛みを感じながら赤くなった綾の横顔を見ていた。




