66. 俺に美術はわからない
「ふぅ~~~さすがにすこし疲れたね。」
「あ、ああ・・・・・・」
「まさくん大丈夫?」
「大丈夫大丈夫・・・」
朝から電車を乗り継ぐこと5時間半、俺達は鼓をモチーフにしたという荘厳な門の下に立っていた。
日頃1日の平均運動量が100歩以下の生活をしている俺にとって電車移動5時間半は重労働だったようで、電車を降りると疲れが一気に出てきた。
「とりあえず、ゆっくり座って飯でも食べない?とにかく腹減った。」
駅の時計を見るともうすぐ短針が12を指そうとしていた。
「そうですね、といいたいところですがここはもう少しがんばって歩きましょう。」
・・・。
・・。
・。
「あ~~美味かった。」
「もうこれだけで金沢に来た甲斐がありましたね。」
「ほんとほんと!」
「もう、まだ来たばかりですよ。」
近江町市場まで歩いた俺達は海鮮丼で有名だという定食屋になだれ込み、そこで北陸の海の幸に舌鼓をうった。
「あんなに入ってて千円しないなんてさすが北陸だね!」
「わたしにはちょっと、いやかなり多かった・・・」
「順のおかげで2種類食えたから俺は感謝してるけどな。」
「さすが男性ですね。何もしていないのにあんなに食べられるなんて。」
「・・・褒めるならちゃんと褒めてくれ。」
「まあまあいいじゃないですか。」
そして無事満腹になった俺達は腹を落ち着かせるために近くにあった公園のベンチに座りながらようやく一息ついていた。
「これからどうするの?」
「次なんですけどみなさん美術館とか興味ありますか?」
白川以外の4人は顔を見合わせる。
「い、いやあ、どうだろ。」
「わかんないなあ。」
「私はまぁ人並みには。」
「・・・うーん。」
「兼六園の近くに21世紀美術館があるんですよね。」
「行きたい人がいるなら俺はどっちでもいいぞ。」
ここまで来たら美術館のひとつやふたつ増えてもどうってことない。
「「「・・・・・・」」」
「・・・・・・いいんじゃね、美術館は。」
「そうですね。」
「じゃあそろそろ行きますか。」
まぁ、高校生には現代美術は難しいよな。
北本の金沢城講座を聞きながらまったり歩いていき兼六園の入り口に着いた。
「これが有名な兼六園ですか。」
北本の声から高揚が見て取れる。
白川と順もふたりでパンフレットを楽しそうに読んでいる。
それとは対照的に佐々木は「へえ~これがね~」くらいの顔をしている。
わかる、わかるぞ。多分俺も今そんな顔をしていることだろう。
「とにかく入りましょう!」
北本白川順の3人を先頭にいよいよ兼六園に足を踏み入れた。
「緑がいっぱいだね~。こういうのなんて言うんだっけ、日本庭園?」
後方でパンフレットを読んでいると佐々木が話しかけてきた。
「ああ。」
パンフレットにもそう書いてあるし間違いないだろう。
「見たことある?」
「いや、初めて。お前は?」
「わたしも。正直こういう難しい芸術みたいなのわからないし。なんとなくきれいだな~みたいな?」
「やっぱそうだよな。」
「でも同い年でもああやって楽しめてる人もいるんだよね。」
「・・・まあそうだな。」
「ちょっとうらやましいよね。で、ちょっと悔しい。自分の学のなさとか感性のなさとか。」
「お前勉強できるじゃん。少なくとも俺よりは。」
「そういう学校の勉強みたいなのじゃなくてさ・・・・・・。雫ちゃんとかさ知識とか興味のアンテナが広いじゃん。なんにでも興味を持てるのが羨ましくて。」
ああ、なんとなく言いたいことはわかった。
「俺が言うのも何だけど、こういうの楽しむのって多分学が要るよな。興味とか感性とかって知識に依るところも大き・・・」
「ほらお二人何をやってるんですか置いてっちゃいますよ。」
どうやら俺達は歩くのが遅かったらしい。テンションが上がった北本がおかんむりだ。
「あーごめんごめん!」
佐々木は北本の方に走っていった。
俺も早足でそっちへ・・・。
「もう少しで有名な徽軫灯籠ですよ。」
「あ!このパンフレットの表紙のやつ?」
「そうそれです。早く行きましょう。」
って俺のことは待たないで先行くんかい。
みんなのいるところに小走りで行く俺はまだその後受ける衝撃を想像だにしていなかった。




