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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第5章 それは個性か、枷か、それともそれ以外の何かか
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57. 第一印象が優しい感じの女子に限って・・・



 「こんなところに何しに来たの?」

 今度は俺達が慌てる。さっきの謎のいざこざも忘れ思わず俺達は顔を見合わせる。

 「こんなところにに何しに来たのよ。」

 じゅんちゃんその2は俺に詰問してくる。

 だいたいそれはこっちのセリフだ。お前ら今までここ来たことないだろ。

 そう言い返したいところだが、俺が初対面の、しかも高圧的な女子に言い返せるはずもない。なんでよりにもよって俺に聞いたんだよ。一番弱そうだからか?


 「私達、普段ここで部活をしているんです。」

 それを察してくれた白川が俺の代わりに説明してくれる。さすが白川、俺がこういう非常事態の時なんの役にも立たないことをよくわかっている。

 何を隠そう俺の星の数ほどある苦手なものランキング第3位に君臨するものは「気が強い女性」である。

 昔親戚のお姉さんに散々・・・いかんトラウマが・・・。

 白川が助け舟を出してくれていなければ危うく無言で帰宅しているところだった。


 「そ、そうなの。」

 そう言ってじゅんちゃんその2は元祖じゅんちゃんの方へ歩いていく。

 並んで見てみても2人はそっくりだった。

 「じゅんちゃんって双子だったの!?」

 俺達みんなが思っていたことを佐々木が言った。さすがの俺でも察しはついた。というか佐々木も知らなかったのか。

 「そうよ。あたしが三田刻。」

 「さ、三田順・・・です・・・・・・」

 外見は瓜二つである。違いと言えばじゅんちゃんの方は右目の下に涙ぼくろがあることくらいだろうか。俺が見る限りだと見た目ではほぼほぼ見分けがつかない。

 しかしそんなことを気にしなくてもいいくらい性格が違っているので判別は簡単にできる。漫画でも双子キャラはだいたい性格が真逆であるけどこれはあるあるなんだろうか。似たような生活をしているだろうに。

 「私は白川香織です。」

 「北本雫です。」

 「わたしは佐々木南。よろしくね!」

 「・・・」

 白川が目で促してくる。

 やっぱ俺も言わなきゃいけない流れ?

 「斉藤。斉藤正満。」

 この時間は何なんだろうか。


 「それでお二人はなにを?」

 話題の停滞を察したのか白川が話を切り出す。

 「・・・勉強、してたの。じゅんと。」

 俺達がいつも使っている机の上には2人の勉強道具が広がっている。なるほど図書室の本来の利用をしていたらしい。

 「でもごめんなさい。ここがあなた達の部室とは知らなかったわ。」

 一応ここは図書室だから本来は誰でも使って良いんだけど。

 誰も使っていないから俺達が勝手に使っているだけなわけであって。

 しかしこういう場合どうなんだろう。

 俺達が追い出した・・・ということになるよなぁ多分。

 それはなんだか申し訳ない。

 てか第一なんでこんな場所を使おうと思ったのだろうかが気になる。

 「なんでこの部屋でやろうと思ったんだ?」

 俺は勇気を出したことを悟られないよう努めて自然に聞いてみた。

 「あんたには関係ないでしょ。」

 その勇気は簡単に踏みにじられたのだった。

 三田2はなぜか俺だけにやたら敵愾心を抱いているようだ。

 ペットが家族に序列をつけると聞いたことがあるが、どうも三田2はファーストコンタクトで早くも俺の序列を格下に確定させたみたいだ。まったく見る目がない。

 しかしこれまでの人生での俺に対する人々の反応を考えるとむしろこれくらいの雑な扱いが落ち着くとさえ言える。

 こんな根暗で気持ち悪い男にはこれくらいの対応が普通だろう。

 「なっなににやにやしてるのよ!気持ち悪い!」

 これこれ、実に安心する扱いだ。

 「と、ときちゃん・・・!だめだよそんなこと言っちゃ・・・・・・」

 だが、じゅんちゃんは優しい心の持ち主だったらしい。

 別に気にしていないのに三田2改めときちゃんを窘めていた。

 「でも・・・」

 「いいの、この人たちは優しい人だから・・・」

 更に人を見る目まであるらしい。もしかして天界出身の種族だったりします?

 「じゅんがそういうなら・・・実はじゅんに受けられなかった授業の範囲の勉強を教えていたの。」

 「受けられなかった授業?」

 「わ、わたし・・・その・・・体がよわくて・・・・・・」

 ほーーーーん、なるほど。話が見えてきた。

 白川や北本が覚えていなかったのも、佐々木が話したことがなかったのも、これで話がつく。

 「それでお姉ちゃんが教えていたってわけか。」

 それならわざわざこんな人がいなさそうなところに来る理由もわかる。

 2人で話しても迷惑のかからない人がいないところを求めていたのだろう。

 それに知り合いがいるとじゅんちゃんは居心地が悪いかも知れない。

 これは本当に俺達は悪いことをしたかもしれない。

 「あんたみたいなやつに会わないようにここまで来たのに。」

 ・・・前言撤回。ここは俺達の部室だ。

 「ときちゃん・・・だめだよ・・・!」

 「だってじゅんちゃんみたいに可愛い子、男子がほっておくわけないじゃない。」

 「そんなことないよぉもう・・・」

 男子高校生を獣か何かと思っているのだろうか。

 まあ?確かに?かわいいと思うよ?

 でも別にいかがわしいことを考えたり、あまつさえ行動に移したりはするわけないよ?ほんとうだよ?


 「でもどうしようか・・・」

 「・・・」

 2人は勉強する場所を失って困っているようだ。

 俺は3人の方を見る。みんなの顔を見ると、どうやら既にみな同じ結論にたどり着いているようだった。

 そうなればかける言葉はただひとつ。

 「ここ、使えよ。」

 「私達としてはこの部屋を使ってもらっても構いません。」

 「そもそもこの部屋はわたしたちの部屋ってわけじゃないからね~」

 「ぜひ使ってください!」

 双子は驚いているようだった。


 「で、でも・・・いいの?」

 「迷惑じゃない?部室なんでしょ?」

 2人は喜び半分驚き半分と言った感じだ。

 「いいんです。ここ図書室ですし。」

 「そうそう。それに今は部活禁止だし。」

 「実は私達も部活ではなくここに勉強しに来たんですよ。」

 双子の表情がみるみる明るくなる。もう答えは決まったようだ。


 

 「まぁ斉藤くんについては保証しませんが。」

 「おい。」

 俺をオチに使うな。

 でもまあこれで誰も不幸にならないだろうしいっか。

 余っていた机を並べ6つに増設すればちょうど全員座れる。

 色々あったが無事円満に解決したようだ。


 机を運んでいる時背中をつんつん突かれる。振り向くとじゅんちゃんがいた。

 耳を近づけるよう促された気がしたので前かがみになる。

 「ありがとね。」

 俺の耳元で可愛らしい声が弾けた。

 俺は顔が熱くなったような錯覚がした。


 「あと・・・一応言っとくね。実は・・・お姉ちゃんはわたしなの。」

 「え?」

 じゅんちゃんはにっこりと笑っていた。

 その笑顔には確かにお姉さんの優しさみたいなのを感じた気がした。

 

 

 「「「「・・・・・・」」」」

 「・・・なんだよ。」

 振り返るとなぜか俺達(主に俺だけ)はほか4人に非難の目を向けられていた。

 「ちょっと、なにじゅんをいやらしい目で見てるのよ!」

 ときちゃんからはいわれのない非難が飛んでくる。

 「早く机を運んだらどうですか。ほんとなにをやってもどんくさいですね。そういうところ直したほうがいいと思いますよ。」

 北本はいつもの数倍怖い。

 「まさくんって可愛い子にだけは甘いよね。」

 佐々木もいつもより声のトーンが低い気がする。

 「さあ、早く始めましょう。」

 そして白川は凍りつきそうな笑顔で俺の着席を促す。やっぱ白川が一番怖い。


 なんだかこれまでになく険悪な雰囲気になっているように思えるのだが気のせいだろうか。

 


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