56. 女の本性
「でもわたしもまだちゃんと喋ったことないんだよね、あの子と。」
「まじか。」
まじか。意外だ。こいつならクラス全員と話してそうなもんだけど。女子なら尚更そう思える。
「ども~」
切り込み隊長佐々木がじゅんちゃんなる女子に気さくに話しかける。俺達は5歩ほど離れて佐々木に追従していた。
「あっ・・・えっ・・・・・・あぅ・・・」
じゅんちゃんは露骨に慌てているようだった。束ねられた後ろ髪がゆさゆさと揺れている。
てか声小さ。見た目もずいぶん小さい。佐々木よりも一回りちっさく見える。正直小学生と言われても納得してしまうだろう。これが巷で流行りの小動物系というやつなのか。こんなに特徴的ななりをしていたらさすがの俺でも多少体育とかで見かけて記憶に残っていても良さそうだけど・・・。俺の脳はすでに相当老化しているみたいだ。
しかしこの慌てよう、きっとこの部屋は使われていないとでも思っていたのだろう。
そしてそんな部屋に来ているということは誰にも会いたくなかったことも予想できる。
なんせこの部屋は学校に居場所がない人がたどり着くことで有名なところだ。(斉藤調べ)
「あの・・・えっと、その・・・」
う~ん、じゅんちゃんがあたふたしている姿はなんともかわいらしい。子犬を見ているような気分になり思わず頬が緩む。
この学校に入ってはじめて癒やされたかもしれない。
俺が学校で話す人と言えば優しさに満ちあふれているがどこか逆らえない迫力のある白川か、逆らえない迫力に満ちあふれている北本か、物理的な迫力がある佐々木だけである。癒やしどころか常に針のむしろである。
俺の女性像(深夜アニメ準拠)はすでに跡形もなくなっていた。
いや、ほんとは優しいってのは知ってるよ?
でも俺みたいに頭が悪いやつは表面的な人当たりの良さでついだまされてしまうのだ。実は裏があるような人だったとしても。
だからこそ目の前の女子に癒やされてしまったのだ。なぜならわかりやすくかわいいからである。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ほら、また白川と北本が威圧してきている。
「・・・なんだよ。」
「いーえ、別に~」
「にやにやちゃって、汚らわしい。」
「な、なんだよ。俺はただ・・・」
「「ただ?」」
「・・・・・・」
ただ可愛らしいから初めて見る女の子にぼーっと見惚れていたなんて言いたくない。
「べーつに斉藤くんが誰にどんなことを思っていても私にはなーんにも関係ないですけどね~」
俺が答えに窮していると白川はそっぽを向いてしまった。
「違うんだ白川・・・」
ただ本心では何が違うのかはわかっていない。俺が癒やされたら何か問題があるのだろうか。
「そうですね、私にも一切関係ないですしね。」
「ああ、お前には一切関係ない。」
「ふンッ!」
当然のことを言ってきた北本に当然の返事をしたら何故か全力で足を踏まれる。
「別に!どうでも!いいですよ!」
「どうでもいいならまず足をどかせ!」
「あんたたち、誰?」
俺達3人は突然の声に驚きながら声のする方に振り返った。
「何しに来たのよこんなところに?」
そこには今さっき初めてみた女子と同じ顔があった。




