46. 頭がいい人たち特有のメリハリ
「よう。」
女子の部屋・女子との勉強会というものを眼前にして幾許かの緊張感を覚えながらも、それを表に出すまいと努めて冷静にいつもの調子で挨拶をした。
「お、きたきた~」
「こんにちは。」
「・・・え?」
北本の部屋の真ん中には、今日の勉強会のためと思われる大きめのちゃぶ台が置いてあり、それを囲むように二人が座っていた。
もちろんその上には勉強道具一式が置いてある・・・・・・ということはなく、いろいろな種類のお菓子が置いてあった。
「おっ、まさくんそれ飲み物?」
「あ、これね。そうそう。」
予期せぬ景色に結構な重量がある荷物を置くということすら思い至らず入り口で突っ立ってしまった。
「とりあえず座ってください。」
白川が座布団を用意してくれる。いや、ずいぶん馴染んでんな。お前はここの住人か?
「今日は勉強会と聞いてここに来たんだけど。」
座って改めて机の上を見てみても、やはり目の前の光景はあまりにも女子会然としていた。
「まあまあ、腹が減っては戦はできないって言うじゃん?」
「満腹になって勉強する気にならなくなりそうな量だけど。」
そこには焼き菓子をはじめ色々な種類もお菓子が盛り付けられていた。
「じゃんじゃん食べていいよ。」
やっぱり佐々木の手作りか。それにしてもすごいな。
「どうぞ。」
「あ、どうも。」
白川からジュースの入ったコップを渡される。やっぱお前ここ住んでるだろ。
・・・いかん、完全にアウェーだ。いや、確かにアウェーなんだけど。
このままでは女子会を学ぶ会になってしまう。
「俺が言うのも何だが勉強しなくていいのか?」
「まあまあ、食べてから食べてから!」
「おかわりどうぞ。」
似合わぬセリフを言っても軽くスルーされ両隣からお菓子とジュースを猛プッシュされる。
おいおいこれじゃなんのためにここまで来たのかわからなくなるじゃねえか。
北本に援護を求める視線を送る。
しかしそこにはもりもりとお菓子を食べる北本がいた。
おいおい・・・。
「さあ、さあさあ!」「はやくはやく」
・・・。
・・。
・。
そのアップルパイは驚くほど美味しかった。
「ごちそうさまでした。」
口を拭きながら満足気に謝辞を述べたのは、さっきまで一言も話さず、ただ大量にお菓子を飲み込んでいた北本だった。
「お粗末さまでした~」
「おいしかったです!」
あんなにあったお菓子も気づいたら跡形もなく消え去っていた。いやはや女子の食欲というもは末恐ろしいものである。絶対に言葉には出さないけど。
「こんなに売れ行きがいいと思わなかったよ。」
さっきまでお菓子が入っていたかごを見る佐々木の目はとても嬉しそうに見えた。そういう顔をされるとただ食っていた俺だがなんだかいいことをした気になってしまう。
「佐々木さんの腕前には敬服します。」
「もーおおげさだよしずくちゃん」
俺は目の前の女子たちのトークを寝転びながらぼーっと聞く。
さっき飲んだ温かい緑茶も相まって脱力したゆるい雰囲気に部屋全体が包まれていた。
天井を見つめながら何しに来たか忘れるくらい和んでいる。
ほんと、ここはどこでなにをしにきたんだっけ・・・
まぁなんでもいい・・・
・・・
宴もたけなわではございますが・・・
・・
本日はお開きということで・・・
・
「ではそろそろ勉強しますか。」
「そうだね。」
「じゃあ食器下げますね。」
「ほら斉藤くんも起きてください。」
・・・やっぱりみんな真面目なんですよね、うちの学校。




