表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第4章 はじめて知る優しさ
45/241

42. 学生の本分と言われるなにか


 

 図書室につく。ちなみに道中北本と交わした言葉は0だった。

 明らかに機嫌がよろしくない感じだったので、足音にまで気を遣ってここまで来た。

 ま、まあ女子にはいろいろあるのだろう。触れないに越したことはない。


 そうだ、こういう時は元気な佐々木の力を借りよう。佐々木ならこの空気を変える溌剌さがある。そう期待しながら元気よく扉を開けた。

 「よう。」

 「・・・・・・うん。」

 佐々木、お前もか。

 

 ・・・。

 気まずい空気が流れる。

 北本はいつもと変わらない風を装いながらもどこかよそよそしいし、佐々木に関してはいつもの俺を射抜く真っ直ぐな眼差しはどこへやら、さっきからまったく目を合わせない。

 流石にたえかねて仕方なく俺から話を切り出す。

 「あの、どうした?」

 「別に。」「べっつにー。」

 ・・・

 ヘタしたら教室にいたほうがいいまであるぞこれ。

 部屋の過半数が暗い雰囲気をまとっているとなんとも居心地が悪い。

 「あ、そうそう今日のおやつださなきゃね。」

 おっ。いやあ機嫌が悪く見えたのは気のせいだったのかな。

 昨日の今日だし疲れていたんだろう。

 佐々木はいつもテンションが高いから相対的に機嫌が悪く見えただけかもしれない。

 「はい、雫ちゃん。」

 「あっ、ありがとうございます。・・・うん。とても美味しいです。」

 あれはメープルクッキーというやつだろうか。

 ・・・。

 いつもよりかなり2人寄りに置かれたバスケットから甘い匂いがこっちにも漂ってきた。

 ・・・・・・。

 「それじゃあわたしも。」

 佐々木も美味しそうに食べている。

 ・・・。

 ・・。

 ・。

 ところで俺の分はない感じですか?

 「あ、まさくんはこれね。」

 ・・・なーんだ忘れていただけか。まったく佐々木はおちゃめだなあ。

 「はい。」


 低めの声で渡されたのはひと粒のチロルチョコだった。


 


 放課後、光の速さで帰宅の準備をする俺がいた。

 今日は明らかに居心地が悪い。どの教室にいても敵意に満ちた空気に満ちていた。

 こんなアウェーに残る義務、は一応あるが、流石に今日はホームに帰らせてもらう。

 疎外感も孤独感も別に慣れているからいいが、今日の教室には命の危機を感じる。

 昼の感じだとおそらく図書室も大差ない。

 全くいい迷惑である。


 迷惑なので残念だが家でまったり過ごすことにしよう。昨日の外出も癒やしたいし。

 我が国に伝わる忍びの動きで教室を出ようとする。

 「どこに行く気ですか?」

 ・・・忍べなかったらしい。北本に思いっきり捕まる。

 「いや、体ちょ「体調が悪い、なんて言いませんよね。昼も元気そうでしたし。」

 「・・・ペットの調子が「何も飼ってませんよね。」

 ・・・。

 「いいだろ、今日一日くらい。」

 「いいえ、今日だけは帰すわけにはいきません。」

 なんでだよ。今日だけは特に帰りたいんだよ。

 ・・・。

 違うわな。理由は共通しているのだろう。どれもこれもあの噂のせいか。

 「お前“たち”もあの噂を知っていたのか。」

 「さあなんのことでしょう。」

 「じゃあ帰っていいな。」

 「校則ですから。」

 そのカードには勝てない、変なところで真面目な俺であった。



 「もう、なんで先に行っちゃうんですか。」

 「いや、さすがに今日は俺達が同時に教室出るのは面倒だろ。」

 「・・・そうでしたね。」

 北本と校則に拘束された俺は、北本とともに教室の外で白川を待っていた。


 「・・・やっぱり私は先に行っていたほうがいいんでしょうかねえ。」

 「なんでだよ。てか俺達はなんもないから。まじで。てかお前はあの噂の真相知ってるだろ。」

 「わかりませんよ。我々当て馬には。」

 当て馬って・・・。

 ・・・。

 あー。なんとなく北本がおかんむりの理由が見えてきた。

 「俺達が昼飯で並んでるのを見て勝手にあいつが言った誤解だ。俺達の間には昨日の前にも後にも本当に何もない。これっぽっちも特別な関係ではない。」

 「そうなんですか?」

 「ええ、まあ。」

 「・・・そうですか。ならいいです。まあ、元から別に気にしてませんでしたけどね。信憑性にかける噂でしたし。」

 嘘つけ。露骨に気にしてただろ。それで露骨に機嫌が悪くなってただろ。

 ・・・でも、まあ部活の集まりと言っておきながら本当はデートでした〜なんて、当事者以外の部員は気分最悪になるのも当然だろう。

 だがうなずけるのは事実だったら、だ。

 だから俺はうなずけない。

 「わかったのなら後で佐々木にも説明してくれ。」

 「そうですね、誤解とはいえいつもより冷たく接してしまいましたし。」

 良かった普段から冷たく接している自覚はあったんだ。いや、なんでだよ。

 まあわかってくれたのならいいや。これで図書室の雰囲気は改善するだろう。

 

 「・・・私達って特別な関係じゃなかったんですね。」

 「へ?」

 「ふんッ」

 「いって。なにすんだよ。」

 俺の足の上に北本の足が突き刺さる。

 「ごめんなさい、冗談です。」

 白川はにこっと笑う。

 いやいや全然笑えないから・・・。

 


 「ふーん。ま、そんなことだろうと思ってたけどね~。」

 北本の説明がことのあらましを佐々木に説明してくれる。


 俺達の分のクッキーが目の前に差し出されたあたり、どうやら俺は許されたらしい。

 ・・・何も悪いことをしていないのに許されるという稀有な経験ができた。


 ・・・。

 ふう、とにかくやっと一息つけそうだ。

 今日は流石にみんなも疲れているらしく、各自気ままに下校時間まで過ごすことになったみたいだ。

 これがこの部本来の姿といえよう。

 俺はクッキーを食べながら最近読みだしたラノベを取り出した。

 ・・。

 これまでになく静謐な時間が続く。

 ここが図書室の一角だと思い出させてくれるような静けさだ。

 ・。

 あの、なんでみんな勉強してるんです?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ