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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第4章 はじめて知る優しさ
38/241

35.5 当たるのは悪いお告げと予感だけ

 

 今週1週間はいつもの5倍くらい長かった。

 そんな1週間も今日を乗り越えたら終わりだ。

 いつもより少し意気揚々と居間に向かった。

 朝ごはんを食べながらダラダラと録ったアニメを見ている。

 しかし、長い1週間が終わることが嬉しかったせいか、いつもより早く起きてしまったらしい。もったいないことをした。

 学校に早く言っても仕方ないのでいつもは見ない朝のニュースにチャンネルを変えるとちょうど占いのコーナーをやっていた。

 小学生の頃はよく見てたなあ。

 なんとなく懐かしい気持ちになったので自分の誕生日が出るまで待ってみることにした。

 ・・・。

 2位から6位が表示される。

 ・・・。

 7位から11位も表示された。

 しかしその中にも1月はなかった。

 つまり1月は1位か12位のどちらかということだ。

 ・・・。

 ・・。

 ・。

 面白い。

 いつもなら悲観的に12位と予想するが、今日は違う。

 なんてったって起きた時から希望に満ち溢れている。

 たまたま出会った占い。しかも清々しい気持ちの今日に5年ぶりに出会ったのだ。

 この流れは1位だろう。

 「最下位はごめんなさーい」

 申し訳ないが5月生まれには12位になってもらおう。

 「1月生まれの方!」

 ・・・。

 「余計な一言が思わぬ結果を招きそう・・・。ラッキーアイテムはオレンジジュース!」

 ・・・。

 ・・。

 ・。

 俺は生まれてこの方占いを信じたことはない。

  

  

 昼休み、早速占いの効果が発揮される。

 最近ひそかに楽しみにしていた昼休みの佐々木のおやつが今日は抜きだった。

 とはいっても今日のおやつ自体がないわけではないという。

 曰く、「今日のおやつは特別だから放課後まで待ってて。」 ということらしい。

 楽しみに待っていよう。

 「今週は長かったなあ。」

 「色々あったしね。」

 雑談も自然と今週の話題になっていた。

 「こういうイベントは今後は週末にしてほしい。」

 「よっぽど疲れたんだね。」

 「そりゃあ週の頭にあんな大きなイベントがあったらな。」

 「そうかもだけど、授業よりは楽しいし疲れたって感じはしなかったなあ。」

 「・・・まじで?」

 ・・・なん・・・だと。

 一般人は旅行では疲れないのだろうか。

 それとも俺の体力が虫けら並だからなのだろうか。


 ・・・。

 思い当たる節しか無い。

 週末ひきこもっていたせいか世間一般の高校生より体力が著しく低いらしい。

 「・・・そうか。」

 「え?どしたの?」

 「いや、なんでもない。」 

 少しは体力をつけた方がいいのかもな。柄にもなくそう思った。

 まあ思っただけでなにか行動をすることはないだろうけど。

 「ふーん。でも少しは体力つけたほうが良いと思うよ~。」

 ・・・。

 エスパーかよ。

 


 放課後、例によって3人で図書室に向かう。

 「数学難しくなってきましたね。」

 「そうですね。進むのが早いのでついていくのでやっとって感じです。」

 女子2人は勉強の話をしている。


 勉強の話には参加するとろくなことはないというのはこれまでの経験から学んでいる。

 学生が勉強の話をするのには2つのタイプがある。

 1つは共感を求めている時。なになにが難しいだの、全然わからないだの、自分の現状を正当化したい時に勉強の話題が登場する。

 しかしこれはまだましというか、そんな話をするほどの間柄になった人がいないのであまり関係がない。

 問題は、もうひとつだ。


 「斉藤くんは、2次関数の切片の公式の導出の解説理解できましたか?」

 「い、いやあ、どうだろう・・・。」

 そう、勉強が好きな人が勉強の話をするパターンだ。

 こちらは1つ目のような人間関係も必要ないし、話が長くなりがちだ。

 昔、クラスのよく知らない秀才くんに絡まれてえらい目にあった。異国の言葉を延々聞かされている気分になった。

 勉強できる人なら楽しいかもしれないが残念ながら勉強できる人になれた経験がない。

 つまり、勉強の話は誰も(俺は)幸せにならないのだ。

 「そういえば、なんだか今日のおやつは特別らしいぞ。」

 「そうなんですか!楽しみですね。」

 そういう時は話題を変えるに限る。

  

 「切片の公式ならわかりますよ。」

 ・・・。

 結局北本の数学談義を聞きながら歩くことになった。

  

  


 佐々木が到着して席についた。

 「では早速。」

 お、どうやら今日のメインイベントが早速始まるみたいだ。実は結構楽しみにしていた。

 「こほん、皆様おまたせしました。」

 そう言って佐々木が取り出したのはチョコのカップケーキだった。

 「「「おーー」」」

 餌を待つひな鳥のごとき3人は声を合わせて感嘆した。

 カップケーキの作り方は知らないが2,3分でできるものではないだろう。細部も凝っているしきっと相当手間がかかっている。


 「さあ召し上がれ~!」

 カップを持って一口かじる。

 「おいしいです!とても!」

 「おいしい・・。」

 「美味い。さすが佐々木。」

 チョコの味はしっかりするのに、くどくない甘さでとても食べやすい。

 「でへへ。よかった~。」

 佐々木も自分の分を取り出す。

 甘いものがもたらす和気藹々とした雰囲気が心地よかった。


 「それにしても結構手間がかかったんじゃないか?」

 「うーん、そうでもないけど。」

 「そうなの?」

 「いえいえ、そんなはずはないです。」

 「まあそうだよな。なんか悪いな。何もお返しできるものがなくて。」

 「そうですね、いつも一方的にもらってるばかりですし。」

 「いいの、いいの!やりたいからやってるだけだから。」

 佐々木は全力で頭を振る。

 「なんかしたいこととかないのか?よく考えてみればこの部活でお前がやりたいことを聞くことなかったし。」

 加入の仕方があれだったせいで有耶無耶にされていたが、本来この部活は個々人のやりたいことをする部活だ。


 「うーん、そうだなあ。」

 「じゃあ今度みんなでショッピングに行きたい!」

 悩んだ末佐々木が出した答えはこれだった。

  


 「いいですね!行きましょう!」

 「いつにします?」

 女子たちは盛り上がっている。まあこれで佐々木のやりたいことができてよかった。

 「今週末か来週末は空いてます?」

 「来週なら私は大丈夫です。」

 「私も~」

 「では善は急げということで来週の日曜日に行きましょう!」

 どうやら日程は決まったようだ。

 ぜひ楽しんで欲しい。そう願っておくことにする。自宅から。


 「斉藤くんもいいですね?」

 「・・・え?」

 「え?じゃないです。言い出したのは斉藤くんでしょ。」

 「え、いやいや、そうだけど買い物だろ?俺がいてもしょうがないだろ。」

 「そんなことは無いと思います。男の子の意見もあったほうがいいですよね?」

 北本も佐々木も頷いている。おいおいマジで言ってるのかよ。


 「でも日曜日はなあ。」

 「予定はないですよね?」

 くっそお、白川に週末の過ごし方を言うんじゃなかった。

 「ないけど・・・」

 「では日曜日よろしくお願いします。」


 ・・・。

 俺の癒やしの休日が消滅した。

 全く、余計な一言を言うんじゃなかったなあ。

 俺の優しい部分が裏目に出た。

 ん?余計な一言?


 「ところで今日は何するの?」

 「今日は色々な占いの載っている本を持ってきました!」

  



 もう占いは勘弁してくれ・・・。

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