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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第3章 虚無からの脱却
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28. 恬澹の心



 詰問に遭いながらもわいわいやっていると夕食の時間になった。


 「お前ら誰と組みたい?」

 「そりゃもちろん白川さんよ。」

 「俺も一番は白川さんだ。」

 ルームメイトたちと夕飯のカレーを作る場所に向かう。


 こいつらの気合が入っている理由はカレー作りの班分けがくじ引きで決まるからからだ。


 「お前はどうなんだよ。」

 「俺は誰だっていいよ。強いて言えば料理が得意な人と同じになりたい。俺料理全くできねえし。」

 「そりゃ俺だって料理できねえけど、そういうのじゃないだろ。やっぱかわいい子が作るカレーが食いたくないか?」

 「それは、まあそうだな。」

 「やっぱお前も白川さんか?それとも北本ちゃん?」

 「ああ、あいつらならいいな。俺が何もしなくても許してくれそう。」

 「お前なぁ。今どき家事を任せっきりにする男はモテねえぞ。」

 「モテなくていいけど、そういうことを言う面倒な女子とは一緒になりたくねえな。」

 「なんでこんなやつが白川さんと仲良いのかわかんねえな。」

 「やっぱこいつは10発くらい殴ってもいいだろ。」

 「やめてくれ。」

 そんなことを話していたら目的地に着いた。



 「先頭の人からくじを引いてください。」

 担任が前の方で箱を持って立っている。

 俺たちは来るのが遅かったらしく、くじを引くのは最後だ。


 「っしゃあ、ここからお前らは敵同士だ。お互い健闘を祈ろう。」

 「「「おーーーー!」」」

 くじ引きが始まると同時に、鈴木たちは気勢を上げている。クラスの女子が何事かと一斉にこちらを見る。


 もちろん俺は無関係のふりをした。

 

 「どの順番で引くか決めよう。」

 「そうだな。じゃんけんに勝ったやつから順にしよう。

 「「「おう」」」

 男どもの目には闘志の炎がめらめらと燃えている。

 なんでこんなに真剣になれるんだよ。


 「あのぉ、俺は最後でいいわ。」

 正直じゃんけんに参加するのもバカらしい。


 「おう、それがいい。お前はこれまで一人だけいい思いしていたんだからな。」

 はあ。てかお前らが二人三脚の時俺をハブったんじゃねーか。

 俺はすっと列の最後尾に移動した。


 「いくぞ・・・」

 「「「「「じゃーんけーーん ぽん!」」」」」

 「っしゃああああああ」

 「「「「ぐわあああああああ」」」」

 ・・・。


 なにやら熱い戦いが繰り広げられている。

 てかくじ引きの順番とくじの結果は別問題だろ・・・。


 しばらくして順番が決まったようだ。

 鈴木は偉業を成し遂げたような表情で男子の先頭に立っていた。

 それと対照に俺の前にいる高橋は沈んでいる。


 だから先頭だからっていいくじが引けるとはわからないだろ。お前ら一応春山入れてるんだからそれくらいの確率問題わかるでしょ。


 前では女子たちがくじを引いている。紙に書かれた数字と同じ番号のテーブルに座る方式のようだ。


 テーブルの数は7つ。つまり確率上では男子のうち一人は白川と同じ班になれる。


 ・・・。

 前の男子たちの緊張感が頓に強くなった。

 先頭では白川がくじを引いていた。

 白川はくじの番号を確認し、歩き出す。

 そして7番のテーブルの前で止まった。


 「まさにラッキーセブンということか・・・。」

 「ああ、狙うは7番・・・。」

 こいつらの頭には7という数字が渦巻いていることだろう。




 「お、おい。」

 「まじかよ。」

 その声で俺の視線は再びテーブルに向く。


 「おいおい、これは7番が強すぎるな・・・。」

 「ようやく見つけた桃源郷・・・。」

 「神よ、私の手に7番のくじを・・・。」

 ほう、これは面白い。次に7番のテーブルに座ったのは北本だった。

 男たちの眼中には7番テーブルしかない。


 さすがに俺も7番がいいと思う。

 知らない人ばかりの班よりはいいに決まっている。

 しかしこいつらの熱量を見ると別に7番でなくてもいいような気もしてくる。



 ・・・。

 次々と女子の班が割り振られ、いよいよ男子の順番となる。


 「・・・いよいよだな。」

 「勝者は・・・1人・・・!」

 「男を賭けた大一番・・・!」

 「誰が勝っても恨みっこなしで行くぞ!」

 「ああ・・・!」

 「いざ参らん・・・!」

 熱い、熱いよ。男たちの背中が燃える。


 ほら女子の方を見てみろ、めっちゃ見られているぞ。

 結局7番の席は1つ空いている。

 あとは1、2、3、6番に各1つ、5番に2つ空席がある。


 「がああああ!」

 刹那、鈴木の断末魔が聞こえる。

 何番かはわからないが7番ではないだろう。


 てかそんなに叫んだらその班の人に失礼だろ。あとで怒られても知らねーぞ。

 ・・・。

 「だああ」

 「かあああああ」

 「・・・。」

 「くわああ」

 その後も4人の戦士が散っていった。


 残るは2人。というか俺と前のやつだ。

 「雌雄を決する時が来たようだな。」

 「…そうなの。」

 「張り合いねえな。」

 「自分より気合が入っている人を見るとなんか冷静になるじゃん?」

 「まあいいや、7番は俺がもらっていく。お前の豪運のここで終わりだ。」

 自分が豪運なんて思ったことないんだけどなぁ。てかそんな死亡フラグっぽいこと言って大丈夫?


 「ほら、お前も引けよ。」

 高橋は俺を促す。2人同時に開くやつをやりたいのかな。別にいいけど。


 「いくぞ。」

 「・・・ああ。」

 俺も気合が入る。


 「せーーーーーーーーの!」






 ・・・。

 ・・。

 ・。


 「がああああああああああ!なんで、なんでお前なんだ!」


 「悪いな、高橋。」

 俺の紙には7と書かれていた。


 がっはっは。確かに俺は豪運なのかもしれないな。


 敗者の横を通り7番テーブルに向かう。

 途中男子たちの憤怒の視線にはドヤ顔をお返しした。恨みっこなしだったんじゃないのか。まあいい。今の俺は気分が良い。


 「斉藤くん!」

 「まさかここでも君と同じになるとは思いませんでした。」

 白川と北本の歓迎を受ける。

 やっぱ7班になってよかったわ。





 「女の敵め。」

 ・・・。



 へ?


 唐突な罵声に驚く。え、こいつ誰。


 「あの。どちらさんですか。」

 「さすが、興味のない女子は名前すら覚えていないのね。」

 ちょっと待ってくれ。俺はフリーズする。


 周りに助けを求める。白川はおろおろしている。しっかりしてくれ。

 北本は口元を押さえている。なに笑っとんねん。


 「俺は女子に目の敵にされるようなことをした覚えがないんだが。」

 「白川さんという人がいるのに他のクラスの女子と昼休み姦淫していたくせに。」

 姦淫て。あれか、佐々木が3組で大暴れしたときの爪痕か。


 「2つの間違いがある。まず俺と白川はただ部活が一緒ってだけだ。そして佐々木とは何もしていない。あいつも同じ部活という関係しかない。なあ白川。」

 「さてどうでしょうか。」

 は?何言ってるの?



 「冗談です。斉藤くんはそんな人ではありません。」

 「そうですね。この男にそんなことをする勇気はないですし。」

 北本はかばうのかけなすのかはっきりしてほしい。


 「まあ白川さんがそう言うなら。」

 なんとか誤解は解けたようだ。これは7番を引けて本当に助かったのかもしれない。他の班だったら今頃さらし首だったかもしれない。





 「それではみなさん調理をはじめてください。」


 担任の号令でカレー作りが始まった。

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