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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第3章 虚無からの脱却
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27. 苦いキャラメル



 司会の子がスクリーンを指す。

 そこには『難問マルバツクイズ』と書かれていた。


 北本が言っていたのはこれか。

 マルなら体育館の左に、バツなら右に移動すればいいらしい。


 「優勝者には豪華景品が用意されているので全問正解目指して頑張ってください。」

 どうせお菓子とかだろうが周りの人々は燃えているようだ。



 「なお製作者曰く結構難しいとのことなのでチームを組んで挑戦してもオッケーです。」

 「ですって。」

 白川がチーム参戦を提案している。


 どうせSSS部のメンバーが揃っているのでこれで参加するのも一興か。それに北本が居るのは心強い。下手したら全問正解できるかもしれない。



 「では第1問 オーストラリアの首都はシドニーである。」

 これはよくある問題だ。さすがにみんな知っているだろう。

 「えーどっちだろー」

 そうでもなかった。


 「オーストラリアの首都はキャンベラですね。」

 「へー、さすがかおりん。」

 テレビでよく出るひっかけ問題なので俺は耳タコだったが案外そうでもないのか。

 この1問で3割の人が脱落した。


 「第2問 お寺が一番多い都道府県は京都府である。」

 これもよくある問題だ。


 「これはマルでしょー。」

 「うーん、奈良かもしれません。」

 「でも京都に行った時かなりあちこちにお寺がありましたけどね。」


 ・・・。

 もしかして俺はテレビのクイズ番組を見過ぎなのかもしれない。

 散々このひっかけには引っかかってきた。


 「答えはバツだ。京都でも無ければ奈良でもない。意外だが1位は愛知なんだ。」

 「そうなんですか。」

 「まさくんすごい。」

 「初めて知りました。」


 いや~照れちゃうなあ。引きこもって教養番組やクイズ番組をだらだら見ていたのがこんなとこで役立つとは。ほんと人生なにが役に立つかわからんね。

 難問だったらしく早くも生存者は2割程度となる。



 「減ってきましたねー。では第3問 ネイティブスピーカーの数はアラビア語よりスペイン語の方が多い」

 ・・・これまた知っている。前に話者の多い言語ベスト10を答えよ、という問題が出ていた時覚えた。

 「どうなんでしょう。」

 「スペイン語ってスペインだけじゃないの?ていうかアラビアってどこ?」

 「アラビアという国はないですよ。」

 まあこれは難しいと思う。俺もたまたまクイズ番組で見たのを覚えていたからな。



 「斉藤くん、どっちなんですか?」

 「おしえて~」

 「まてまて、俺は全知全能じゃないからな。」

 「斉藤くんでもわからないんですか。」

 「いやこの問題はわかるけど。」

 「じゃあ教えてくださいよ。」

 「答えはマルだ。中国語、英語、ヒンディー語、スペイン語、アラビア語の順で多かったはず。」

 「物知りですね!」

 「休日はクイズ番組の再放送をよくやってるからな。平日でもテレビばっか見てるし。」

 「まさくんやる~」

 「やめろやめろ、偶然だって。そろそろ知らない問題が出てくるだろう。」

 「勉強不足を実感しました。」

 「お前はこれ以上勉強しなくていい。」


 この問題はかなりの難問だったようで残るは20人弱といったところだ。



 「どんどん行きますよ~。第4問 夏目漱石の作品の坊っちゃんと吾輩は猫である 先に発表したのは坊っちゃんである。」

 これは簡単だ。


 「これはわかります。」

 「私も」

 「わ、わたしも。」

 「じゃあ佐々木の言う方にみんなで行くか。」

 「もーいじわるー」

 4人で盛り上がる。他の生存者は真剣に戦っているようで俺たちだけ浮いている気がしないでもない。


 「うーんと、マルかな?」

 3人で露骨に落ち込む。

 「っていうのは嘘で本当はバツだよね。」

 「さすが佐々木だ。」

 「佐々木さんがいうなら間違っていませんね!」

 こういう時意外と白川はノリが良い。

 この問題では脱落者はいなかった。

 というか今残っている人たちってクイズガチ勢なのでは?

 ここから減るのかね。



 「もう猛者しか残ってませんねぇ。では次の問題は3秒で答えてもらいましょう。行きますよ~、第5問 1年の女子は奇数である。」


 なるほど、趣向を変えてきたか。

 クイズガチ勢は案外こういうのに弱いのかもしれない。

 司会のカウントダウンが始まっている。


 ただこれも答えがわかっている。これのせいで俺と北本だけが男女のペアになったんだ。


 「答えはマルだ。」

 4人でマルの方に移動する。



 ・・・。

 俺らを入れて10人が残った。

 「では第6問。」

 まだあるんかい!景品が本当に豪華で正解者出す気ないんじゃないか。



 「AMラジオの周波数は9の倍数だが、これはAMラジオが日本で開局されたときから定められている規格である。」


 これは完全に殺しに来ている。今どきの高校生はAMラジオを聞いたことがあるかすら怪しい。しかも知識として周波数が9の倍数ということを知っている前提である。


 ・・・。

 でも俺は知っていた。なぜなら某女性声優ラジオを聞いていた時こんな話をしていた。

 意外と俺の特技はクイズだったのか?


 「AMラジオって午前にやってるラジオのことだよね。」

 「違うわ。」

 思わず突っ込む。


 「AMラジオの周波数が9の倍数ということを初めて知りました。」

 「私もです。でも、これはバツじゃないですか?マルだったらこんな聞き方しますかね。」

 北本なかなか鋭い。


 「で、どっちなんですか?」

 「お前の言うとおりだ。昔は10の倍数だったらしい。」

 「何でも知ってますね。」

 知ってることだけ、とでも返せばよいのだろうか。


 「昔ラジオで言ってた。」

 「ラジオお聞きになるんですか。」

 「たまにね。」

 「しぶーい。」

 とにかくこの世で一番役に立たないと思っていた声優ラジオが役に立った。


 いよいよ残り7人となる。俺たち以外の3人はいかにもクイズが得意そうな雰囲気を醸し出している。そして気合がすごい。これから人を殺しに行くんじゃないかってくらいの気迫でスクリーンの方を見ている。


 「さてさて、次が最終問題です。果たして何人が全問正解できるのでしょうか。」

 ここまで来たら全問正解したい気がしてくる。



 「最終問題です。第7問 クレーム、ジェットコースター、サービスエリア、これは全て和製英語である。」

 やっぱり欲が出るとダメだな。最後の最後で英語の問題だ。テレビのクイズ番組でも類題はよく出てくるが、英語は覚える気にもなれなかった。


 残念だが勘でいくしかない。


 「クレームは和製英語ですね。英語で苦情という意味では使いません。」

 「サービスエリアも確かそうだったような気がします。」



 ・・・。

 そういや俺は一人で戦っていたのではなかった。

 できないことは全力で人に頼ろう。


 「問題はジェットコースターか。すまんが俺はわからない。」

 「ごめんなさい私もわかりません。」

 「私も」

 3人で佐々木を見つめる。

 「え、え?」


 うーーーんと佐々木は考える。

 「英語っぽいけど。」

 「じゃあバツか?」

 「でもだからきっと和製英語だと思う!勘だけど!」


 みんなの意思は決まっていた。

 4人でマルの方に移動した。




 「最後まで残った人に盛大な拍手を!」

 最後まで残ったのは7人だった。


 「それでは豪華景品を授与したいと思います。」

 女子たちはわくわくしているようだ。

 「豪華景品は、なんと最高級メロン!」



 おお~~まじか。



 「の味のキャラメル一箱です!」

 そんなところだと思ったよ。




 「これにてレクリエーションを終了します!」

 拍手の後、解散となった。

 一人部屋に向けて廊下を歩く。


 まさか最後まで行けるとは思ってなかったのでかなり嬉しい。

 というかレクリエーション、面白かったな。

 こういう行事は素直になったほうが楽しめるのかもしれない。

 中学校まではちっとも面白く感じなかった、なんならバス内までは地獄だった。


 しかしこのレクリエーションは面白かった。

 なんの差だろう。きっとあいつらがいるからだ。

 何をやるかより誰とやるかのほうが重要なのかもしれない。

 戦利品のキャラメルを持って部屋に戻る。







 「おうおう。おうおうおうおう!」

 部屋に入るやいなやルームメイトに囲まれる。



 「え、なに。」

 「なーーにいちゃいちゃを見せびらかしてるんだ?」

 「いやあれは部活で協力しただけで・・・」

 「あんな表情豊かな北本ちゃん初めてみたぞ。」

 「あのロリ巨乳との関係について全部吐け。」

 「白川さんってどんな匂い?」


 「「「「お前とどういう関係なんだ!」」」」



 怒涛の質問攻めに遭う。



 ・・・。




 「まあまあみなさん、キャラメルでも食べて落ち着きましょう。」


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