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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第3章 虚無からの脱却
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23. 地獄編スタート




 普段1ミリも面白いと感じたことはなかったが、今日は授業を受けたくて仕方がない。

 なぜそう思うかというと、ついに学習合宿なるものが行われる日となったからである。



 いっそ本当に勉強をするだけならまだいいが、その実学習とは名ばかりでただの遠足らしい。てかしおりの題名も『遠足のしおり』になっている。学習合宿なんて名前やめちまえ。語呂も悪いし。


 それに泊まりというのも非常に腹立たしい。何が嬉しくてクラスメイトと寝食をともにしなければいけないのか。


 公立高校の合宿なのでもちろん個室などは与えられない。公共の宿泊施設のたこ部屋で雑魚寝だ。さながら監獄である。

 おそらくクラスで親睦を深めることがこの合宿の主たる目的なのだろうが、俺にとっては甚だ迷惑な話である。



 昨日の夜はストレスでろくに寝られなかったが、これは却って良かったかも知れない。きっと今夜は深い眠りに就けるだろう。興味のない連中の興味のない話に多少妨害されてもぐっすり寝られることに賭けよう。





 重い足取りでベッドから出る。あ~ねみぃ。今日の集合時間は普段より早い。これもまた鬱陶しい。


 「あれおにぃ早いね。」

 居間に行くと妹が朝食をとっていた。朝こいつに会うのは久々な気がする。

 「ああ、今日から高校の合宿だ。」

 「うわあ、大丈夫?」

 妹は本気で心配していた。


 「あんま大丈夫じゃない。でも1泊だしなんとか乗り切るよ。」

 「嫌なことがあったら帰って来ちゃいな。」

 できればそうしたい。というかそもそも休みたい。


 ごちそうさまと席を立った妹は凄まじい速度で家を飛び出していった。

 あいつは平日いつもこんな生活をしているのか。俺の7倍くらい体力ありそう。


 しかし俺もゆっくりはしていられない。急いで朝食を済ませる。持ち物(特に暇つぶしグッズ)の最終確認をして体操服で家を飛び出した。地獄の48時間のスタートである。



 学校につくと校門前には大型バスが2台停まっていた。これが本日俺がお世話になる奴隷船ということか。


 学年主任のテンプレ諸注意を学年全員で聞く。入学以来初めての大きな行事ということもあり、さすがに欠席はいないようだ。話も終わり、いよいよ乗車である。



 バスの座席はくじ引きにより決まっている。金曜日にくじを引かされ、知らぬ女子と相席となった。

 

 となりの女子は早くもバス酔いであろうか、顔色は悪いし俺と目を合わせようとしない。きっとバス酔いしやすい体質なのだろう。




 ・・・。

 さすがの俺でも今のこの子の心理状態はわかる。

 俺はクラスメイト知らない率95%なのでなんの感慨もないがこの子は不憫である。せっかくの旅行で早速貧乏くじを引かされた気分であろう。今から4時間弱、密室で謎の男と近距離で過ごすことになるのだ。乗車2秒で体調が悪くなるのも無理はない。


 しかし俺にはどうもできない。まあ凶を引いたら引いた時点が最も運勢が悪いからそれ以降は運気が上がる一方みたいな話もあるし、この子にとってこれからの遠足は楽しさが単調増加になるんじゃない?そういうことにして是非この苦境を乗り越えてほしい。


 俺は早速メインウエポンを取り出す。スマホ&イヤホンで外界からの刺激を遮断する。これで後は寝たふりをしていれば自動的に目的地についている。慣れた手付きでお気に入りアニソンプレイリストを再生する。



 ・・・。

 ・・。

 ・。

 時計を見る。まだ30分も経っていない。体感では1時間は経過したように思えた。となりに目をやる。大きく身を乗り出して周囲の女子とおしゃべりに興じていた。おい、バス酔い耐性あるじゃねーか。


 バスは高速道路に乗ったようだ。

 ということはそろそろか。

 「は~い、みなさんおはようございます。私レクリエーション担当の丸岡で~す。」


 来たか。第一の地獄、バス内レクリエーション。全員参加を合言葉に薄ら寒い催しを全員に強制する悪しき風習である。ちなみに帰りのバスでは行われない。全員寝ているからだ。


 「まずはしりとりとしていきたいと思います。前からマイクを回していきますので答えたら横か後ろの人に渡してください。」


 うーわ。絶対面白くない。時間つぶしで今どきしりとりをやるって無人島に漂流したときくらいだろ。

 できればやりたくない。が、ここは参加するしかない。

 なぜなら寝たふりで回避すると、無駄に注目を浴びる。それは今後の合宿、ひいては学校生活においても影響が出かねない。




 結局自分の番が来るまでじっくり参加することとなった。

 あと10年はしりとりをやりたくない。



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