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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
最終章
236/241

232. つまらない答え。ありがちな答え。でもこれが、俺の答え。




 英語の関係代名詞の授業を犠牲にして、俺は自分の世界に引きこもる。

 俺は何をしたいのだろうか。漠然とした質問を具体化する。俺は心置きなく自然体の自分のまま白川に登校してほしい。だからそれを阻害している原因を取り除きたい。これがしたいことだ。


 その原因はひとえに件の告白をした先輩だ。こいつを仮に先輩Xとしよう。

 この先輩Xをこの世から消し去る、というのは有効な解決策ではあるが、それをやると俺も同時にこの社会から消し去られてしまう。

 要はもう白川にちょっかいを出させなければ良い。

 そもそも今後先輩Xがさらなるちょっかいを出してくるかはわからない。が、しかし、かと言って「もうわかんないからとりあえず学校来いよ!」なんて言って解決できているなら今頃白川は元気に登校しているはずだ。

 改めて整理する。俺が何をしたいのか。白川に普通に登校してほしい。そのためには先輩Xが消えるか、先輩Xを無効化する必要がある。だから俺は・・・俺は。



 結論、俺が白川を守ればいい。



 俺はずっと白川に守られてきた。白川がいつも隣にいてくれるから俺は世界を歩き始めることができた。

 簡単な話だ。次は俺が守る番。ただ、それだけの話だった。



 いや、待てと自分に言い聞かせる。勝手に佐々木から与えられた問いが1つだということにしていた。だが違う。実際は「俺が何をしたいのか」だけではない。むしろもう1問の方が重要だし、この問いに解を見つけないと前者の問いの答えは意味をなさない。



 「なぜ俺はこの件にかかわろうとしているのか」



 この案件は、佐々木の言う通り、俺には関係ない。白川と先輩Xの問題。

 それは間違いないはずなんだ。


 だけどさっき、佐々木に「関係ないはず」と言われたとき、自分でもわからないがなぜか怒りに近い感情を持った。


 「関係ない?関係あるだろ。だって・・・だって、白川が困っているんだぞ」


 あえて今言語化するなら内心こう思っていた。

 でも関係ないと言われれば言い返せない。

 論理では間違いなく佐々木の言い分が正しい。俺もそうわかっているのに、心がそれを受け入れない。

 今思えば白川が先輩Xに告白されていたシーンを見たときもそうだ。頭では無関係とわかっていても、心がざわつく。心が許せない。



 俺は白川を誰かに取られたくない。白川が苦しいと俺も苦しい。もう俺は白川が他人ではないのだ。

 「なぜ俺はこの件にかかわろうとしているのか」

 答えはこうだ。

 「俺にとって白川のことは無関係ではない」

 あまりにも論理が破綻している。感情論以外の何物でもない。

 でもこれが譲れない俺の本心。気がつけば俺の心には白川が棲み着いていた。






 あぁ、これがそうなのか。これまでは漫画とアニメだけのファンタジーだと思っていた。

 きっとこの気持ちが。嗚呼、そうなんだ。

 俺はすっと覚悟が決まった。

 この温かい関係に終止符が打つときが来たのだ。



 この気持ちを北本・佐々木・順に言わなければいけない。それがけじめだ。

 相変わらず窓の外は曇り空だ。きっと今日は晴れない。

 俺たちの共有していた世界はきっとこんな色をしていたのだろう。そしてこれからも──。





 でもそれが、それが人と人が交わるというものなのかもしれない。




 俺が先送りし続けていた問題に今日、決着をつける。

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