231. 部外者
「それはもちろん、白川に堂々と学校に来てほしい」
「だよね。ここにいるみんなそう思ってる。けどさ、今回の件は、言ってしまえばかおりんとその男子生徒の問題だよね」
いつもと違う滑るような佐々木の話し方が妙に冷たく感じるのは気のせいだろうか。
「わたしたちが、まさくんが、間に入る問題なのかな?」
そう言う佐々木はとても鋭い目で俺を見ている。
情けないがその視線を感じて無意識に視線を外してしまった。
北本と順も神妙な顔をしている。
やっぱり気のせいなんかじゃない。空気は重く、冷たく、厳しい。今、俺は佐々木に試されている。
「まさくんは関係ないはずだよね」
「・・・」
その『一番言われたくない』と無意識に思っていた言葉に対して、俺はうつむくことしかできなかった。
なぜ佐々木がそんな冷たいことを言うのだろうか、その意図がわからない。言っている内容は理解できる。というか多分正しい。
この問題は当人同士の問題だ。たまたまその問題が発露したタイミングに俺が居合わせただけでしかない。
「でも」
でも、今の俺の中の抑えがたい情動はなんだろう。その佐々木の正論に怒りすら感じるのはなぜだろうか。
「でも・・・」
でも・・・だからと言って俺は何かできるのだろうか。そもそも何かをすべきなのだろうか。
「・・・」
自分でも今の俺が苦しそうな顔をしているとわかる。だが俺以外は一言も話そうとしない。ただ重々しい沈黙が流れる。
今、佐々木・順・北本はどのような気持ちでこの場にいるのだろう。どんな顔をしているのだろうか。
今回の沈黙を破ったのは誰かの言葉ではなく、予鈴だった。
「じゃあね、また放課後」
そう言って最初に席を立ったのは佐々木だった。
なぜ佐々木は今日こんなにも冷たいのだろう。こんなことははじめてだ。
順は俺の肩をぽんぽんと叩いてから部室を後にした。
北本は、何も言わず、ちらりと俺の顔を窺うように一瞥してから部屋から出ていった。しかしその目は何か淋しさが見えた気がした。
ふぅ。一度大きく深呼吸をする。冷たくほこりっぽい図書室の空気が肺を満たす。
「俺は何をしたい?」
この問いに答えを出すまでの猶予は放課後までの3時間あまりだ。




