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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第2章 静と動の狭間
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21. 佐々木南のいる日常




 「白川は佐々木からなんか聞いてるか?」

 「いいえ。何かあったんですか?」

 放課後の道中に佐々木のことを聞いてみた。


 「いや、どちらかと言うと何もなかった。あいつ今日昼に来なかったんだよ。」

 「そうですか。あの佐々木さんが。」

 言い方は少し面白いが、言いたいことはわかる。昨日の口ぶりからも自分から来なくなることはなさそうと考えるのが自然である。

 だからまず疑うのは欠席だろう。


 「体調不良とかでなければいいですけど。」

 「まあなんか用事があったんだろ。なんとかは風邪引かないって言うし。」

 「失礼ですよ。」

 白川はそう言いながら図書室の扉を開けた。


 「おーみんなおつかれ~」

 やっぱこいつは心配するだけ無駄だった。





 4人が定位置に座る。

 「今日のはチョコチップ入りだよ~」

 おおーと3人の歓声が上がる。


 「はい、あーーん。」

 「だから一人で食えるっつーの。」

 「もう照れちゃってぇ~」

 「やめろ。二人が見てる。」

 白川は呆れているのか怒っているのかわからない表情をしていた。北本は興味なさげだ。


 「そうだね。今度は二人きりのときに…。」

 「そんな時は永遠にこねーよ。」

 全く、これさえなければいいんだが。


 「みんなも食べて~」

 俺たちは1つずつ手に取る。


 「あ、美味しい。」

 「美味しいです!」

 「うまい。」

 「よかった。たくさん召し上がれ~」

 嬉しそうだ。


 「どうやって作ってるんですか?」

 白川が尋ねる。

 「どうやってって言っても普通のレシピだよ。」

 「難しいですか?」

 「うーん、簡単だと思うけど…」

 「そうですか。」

 白川の目になにか燃えるものを感じた。



 「ところでお前なんで昼休み来なかったんだ?」

 「あ、そうだったね。ごめんね、寂しい思いをさせちゃって。」

 なんにも考えずに聞いたが、失敗したと思った。これじゃあ俺が佐々木を待ちわびていたみたいに取られかねない。


 「い、いやそんなことは決してないが、俺に来いって言ったお前が昨日の今日で来ないとは思わなかったんだよ。」

 「そ、そうだよね。ごめん。」

 返ってきた言葉には元気がなかった。やはりなにか訳ありのようだ。



 「なにがあったんだ?」

 「ううん、まさくんには関係ないことだしいいよ。」

 どうも調子が狂う。


 「言えないことならいいが、俺に迷惑かかるからという理由なら気にしなくていいぞ。いっつも迷惑してるから。」

 「えーひどい!」

 「安心しろ。お前のために聞くんじゃない。静かなお前を見ていると寒気がするんだ。」

 「そこは嘘でもお前のためって言ってよぉー!」

 「嘘をついちゃだめと昔教わったからな。」

 「ふーんだ。」

 佐々木はへそを曲げてしまった。




 「だが、相談するというのも一つの解決法だと思うぞ。」

 「そうですよ。私達に相談できることなら相談してください。友達なんですから。」

 しばらくの静寂があった。


 「ありがとうかおりん。実はね…。」


 佐々木はいまクラスで起きていることを話した。

 佐々木が言うには佐々木の友達グループの2人が喧嘩状態になっているらしい。



 「岡ちゃんがクラスの男子が気になっててね。それを知った京子が岡ちゃんとその男子を近づけようとして色々したらしくて。もちろん京子は岡ちゃんを応援してやってたことなんだけど、京子が無理に岡ちゃんを近づけようとしてくるせいでその男子の岡ちゃんへの印象が悪くなったんだって。その男子が他の男子に岡ちゃんのことをあんまりいい風じゃなく話しているところを岡ちゃんが聞いちゃったらしくて、それで二人が喧嘩になってもう大変。それが今日の昼のことで、あんたのためにやっただの、お前のせいで上手く行かなかっただの、口喧嘩になって図書室に来てる場合じゃなかったんだよね。」


 佐々木は苦笑いした。



 まあよくあるすれ違いというやつだな。

 その男が少々気に食わないが。

 でもこういうすれ違いって当人たちが勝手に解決することが多いし周りがなにかすることはないと思うけど。



 「まあ、時間が解決するんじゃね?」

 とにかく佐々木本人が事件に関係しているわけじゃなくてよかった。どちらにせよ俺には関係のないことだけど。



 「うーん、そうかもだけど、やっぱ友達が喧嘩しているのをただ見ているっていうのもなあ。」

 「そうですよね。」

 男なら、てか俺ならほっとけよって感じだが女社会ではそうでもないらしい。


 「誰が悪いかは明らかだしその京子ってのが謝れば終わるだろ。知らんけど。」

 「でも京子も岡ちゃんのためにしたことだし。」

 「だからなんなんだ。岡ちゃんの迷惑になったことには変わりない。第一誰々のためなんて恩着せがましいことこの上ない。」

 「でもでも、友達のためになにかやるっていうのわたしわかるけどなあ。」

 「本当に友達のためにやったのなら、結果友達が迷惑を被ることになったらすぐ謝ると思うが。」

 「そうかも。」

 「だから時間が経てばお互い冷静になって、謝罪するなりして解決するんじゃね?本当に友達のためにやっていたらの話だけど。」



 「私なら京子さんと二人で話してみます。そして冷静に自分のしたことや立場をわかってもらうよう促します。後は斉藤くんと同意見です。」

 「…そうだね。明日京子と話してみる。」



 「案外もう解決してるかもしれねーぞ。」

 「確かに。」

 佐々木は笑う。どこかでそれを期待しているようだった。



 「では今日も川柳やりましょう!」

 「えーーーーー」

 佐々木の絶叫が図書室に響いたのだった。





 「今日はテーマを決めましょう。」

 「サラリーマン川柳みたいな?」

 「そんな感じです。」

 「ならゆっくり考えられるしできそう!」

 「で、テーマは?」

 「無難に学校あるあるでどうでしょうか。」

 特に異論はない。できるかは別だが。



 「ではみなさんできたら発表してください。」

 うーーーむ。考える音がみんなの脳から聞こえる。北本もノートに向かってはいるが手は進んでいない。相変わらず勉強するふりしてちゃっかり参加しているようだ。


 「はーい、できた!ごほん、『眠たいな、プールの後の現代文』」

 「あるあるですね!面白くていいと思います。」

 「いいじゃん。」

 「わーいやったー。」

 ・・・。これまで学校を真剣に過ごしていなかったのであるあるがわからない。今から引きこもり川柳に変えませんか。



 「では私も。『一級品。テスト終わりの達成感』」

 「ありますね。いいところを突いていると思います。」

 「なんか雫ちゃんらしい一句。」

 「…悪くない。」

 くっそーなにも思いつかない。


 「はい、私もできました。『男性の視線気になるバレーボール』」

 「あー、あるねー。」

 俺を見るな。まあ否定はできないけど。白川はもちろん見どころ満載だか、佐々木もそれなりのものを持っている。バレーボールではさぞ目立つだろう。


 「これは仕方ない。仕方ないんだ。うん。」

 「男子はこれだから。」

 「お前は見られないから安心しろ。」

 北本のそれはなだらかだった。


 「死ね。いや、殺す。」

 「すまん。俺が悪かった。」

 北本は真っ赤になってボールペンを振りかざしている。そのせいで二人に比べて少し空虚な部分がより目だって見えた。てか白川と佐々木も笑ってた。お前らも大概ひどいな。


 「さあ、後は斉藤くんだけです。」

 「そう言われてもなあ。」

 学校あるあるがわからねえんだよ。

 「学生のあるあるちっともわからない。」

 「今のは一句ですか?」

 「…いや、悲しいから違うことにしてくれ。」

 過去の生活に思い入れがないせいで中学までの学校生活の思い出は全く思い出せない。

仕方ない、今起こっていることから考えよう。

・・・。



 「…してみると案外楽しい部活動」

 ・・・。

 恥ずかしい。

 ・・・。

 ・・。

 ・。


 「良い句です!」

 「まさくんがデレた!」

 があああ、言うんじゃなかった。



 「なに照れてるんですか。」

 「うるせえ盆地。」

 「誰が盆地じゃ。凹んではないわ。やっぱ殺す。」

 あまりの恥ずかしさに北本に八つ当たりしてしまった。



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