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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
最終章
226/241

222. いつしか当たり前になっていたもの




 翌日、地理の時間。気候区分がどうたらというよくわからない話を聞き流しつつ、快晴の空を眺めながら考える。

 一晩経って俺は冷静になっていた。

 よく、よくよーく考えたら、別に白川が誰とどこでなにを話そうが俺には1nmも関係なかった。関係ないはずである。第一白川がモテることなんて周知の事実、世界の常識、ウィキペディアにもそう書いてある。そのことを俺が知らなかった、もしくは忘れていたということがあるわけがない。

 じゃあ昨日の動悸はなんだんだという話になる。

 俺は無意識レベルで白川に対してどういう気持ちを日頃持っていて、あのシーン、白川と知らない男が喋っているシーンを見た瞬間にどういう感情を持ったのだろう。

 ・・・。

 ざっくり言うなら前者は快、後者は不快である。


 俺はこの感情を持つということ自体がどういうことなのかわからなかった。

 この感情を持つことは普通のことなのだろうか。いつも喋っていて仲のいい人が他の人と話しているのを見て「自分から遠くに行ってしまうのではないか」「自分以外の誰かのものになってしまうのではないか」という不安感が生まれ、それが不快感に転ずることはよくあることなのだろうか。感じる側の人によるものか、感じる人視点の対象者によるものなのか。

 この感情に名前はあるのだろうか。友情なのだろうか。愛情なのだろうか。嫉妬なのだろうか。独占欲なのだろうか。このことを本人に伝えていいものなのだろうか。秘匿すべきことなのだろうか。言われた相手は喜ぶものなのだろうか。気持ち悪いと思うものなのだろうか・・・・・・。


 乾いたグラウンドを背景に、窓に反射した透過率50%のクラスメイトが窓枠の中で一枚の写真のごとく合成されたように重なる。そんな中で一番大きく映る俺自身が、心なしか最も薄く見えた。

 きっとクラスの他の人は、たくさんの人と関わり、たくさんの経験をして、たくさんの感情を知っている。

 何も知らない俺は、ただただ授業時間を無駄にして考えた末、無様に黙りこくることしかできない。

 この半年で俺はわかった気になっていた。なんとなく居心地の良い他人との距離感・人と人とが関わることによって発生するしがらみ。

 でも俺は本当は何もわかっていなかったのかもしれない。本当は何とも向き合っていなかったのかもしれない。

 自分勝手に最も身近だと思っていた足元から、足場は脆く崩れ始めた。俺は再び、他人を見失ってしまった。

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