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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
最終章
224/241

220. はじまるカウントダウン




 「さむっ!」

 外気の寒さに布団からスマホに手を伸ばすことすら億劫になる。やっとの思いでやかましいアラームを止めるが、布団から出る気には全くならない。病み上がりという言葉がどこまでの期間を指すのかわからないが、数日前まで風邪をひいていた俺には受け入れがたい寒さだ。


 11月、朝はもうすっかり冬と言って良い。しかし寝る前などは布団やパジャマを本気の冬物に変えるほどでもないという絶妙な気温のせいで、寝る前に着込むということもできない。

 気合いで飛び起き、急いで着替えてリビングへ降りる。

 妹は今日も元気に朝練に行っているようだ。どんな気温でも文句の一つも言わないで朝から学校に行く姿勢は感心する。妹の唯一尊敬できるところと言っても過言ではない。

 全く縁のない東京の再開発のニュースを横目に母の作ってくれた朝ごはんを食べる。今日はベーコンと目玉焼きというラインナップ。大当たりの部類だ。

 朝の番組らしくテレビの画面左上には今日の日付と時間がずっと表示されている。これから会社や学校に行く人がほとんどなのに何故そんな楽しげなフォントで時間を表示しているのか理解に苦しむが、かと言って暗いフォントというわけにもいかないか、なんて何の役にも立たないことを考えながら俺は学校に行く準備をする。


 すべての教科書を学校に置いておくことでできる限りの軽量化を図り、運搬する俺から排出される二酸化炭素を極力減らすという環境意識の高さが現れているカバンを背負って玄関を出る。

 マフラーを口が隠れる高さまで引き上げて歩き始める。1時間目が始まる3分前ということもあり、学校の敷地を歩く人はまばらだ。なんだかんだで真面目な人が多いわが校である。


 二宮金次郎像よりも存在価値が不明な遅刻を取り締まる担当の教師が並ぶ玄関を過ぎて自分の靴箱に向かう。しかし学校というのはなんでこんなに寒いのか。屋内のくせに外より寒い。何より足元が冷える。だがちゃんと上履きを履く気にはならないのはなぜだろう。男子高校生のアンビバレンツな心をかかとに感じながら階段を上っている。


 ちょうど自分のクラスの前に着いたタイミングでチャイムが鳴る。今日も調整がばっちりだと勝利の気分で自分の席に着く。

 授業始まりの挨拶をしつつパンパンに詰まった机から国語の教科書を取り出し、適当なページを開く。

 スマホのロック画面には8:30とある。起きてから約30分。今日もいつも通りの1日が始まる。

 そう、なんの変哲もない日のはずだった。しかし、思えばこの1日がすべてのきっかけだった。

投稿再開します。

あと少し、もしかしたら少しではないかもしれませんが、お付き合いいただけると嬉しいです。

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