219. 君が終わらせた物語。そして君と始まる物語
「スカートってさ、寒くないの?」
女子たちの帰り支度を見ていてふと浮かんだ疑問が口から出ていた。
「寒いよ~。ストッキングはかないと生きていけない」
順は足のストッキングを引っ張る。ベージュのストッキングなので言われないと気が付かなかった。
「私ももう少し寒くなったらタイツはかないといけませんね」
白川はそう言いながら太ももあたりをさする。
「・・・なんですか」
「いや、流れ的に北本かなって・・・そんな目で見るなよ」
北本は露骨に嫌そうな顔をする。
「気持ち悪いこと言っているの自覚していますか?」
・・・しょぼん。
「まぁまぁ・・・」
北本をなだめてくれる白川。こいつだけはいつも味方になってくれる。本当にありがたい。
「ちょ、ちょちょちょ、ちょーーっと!!」
なぜかすごい血相でトイレから帰ってくる佐々木。
「どうした?詰まったのか」
「・・・」
半分冗談で言った言葉も完全にスルーされる。
「ねぇ・・・。さっきしずくちゃんトイレ行ったよね」
「え、えぇ」
突如名指しされ驚くのは北本。
「わたしの記憶違いじゃなければさ、何も聞かないでトイレに行ったよね・・・?」
「・・・」
北本はまずそうな顔をした。だが俺は要領を得ない。
「なんでまさくんの家のトイレの場所、知っていたの?」
「・・・・・・」
あっ。そういうことか・・・。
「少しお話聞かせてもらえます?」
白川はいつの間にか席についていた。そこにはもう味方の白川はいなかった。
観念して席についたその時。
「ただいま~っと。あれ?なにこれ・・・」
ドタドタと玄関から声がしたと思ったと同時に足音と扉の開く音が聞こえてきた。
「うーわ、おにぃ、風邪とか言って学校休んでおいて女連れ込んでるよ。うーわ。うわぁ・・・ママに連絡しておこ」
妹が帰ってきた。恐れていたことが起きた。なんでいつもは遅いくせにこういう日に限って早く帰ってくるんだよ・・・・・・!
「ま、待て、違うんだ!綾!待ってくれ・・・」
「みんなもう帰るところだったよね?ね?」
「・・・・・・」
非難の目を向ける白川と佐々木。事情を知っていて呆れている順。苦い顔をしている北本。なんだこれ。頭が痛い。完全に風邪の症状だ。今すぐ帰ってもらわないと。
「いいよ~別に。綾には関係ないし」
ごゆっくり~と綾はわかりやすい愛想笑いを白川たちに向けてから自分の部屋に帰っていった。
「さて、妹さんもああおっしゃっていることですし・・・」
白川は地を這うような声でそんな事を言う。
「前にちょっと出かけた時にうちに寄っただけ。それだけ。何もなかった」
「なんで黙ってたの?」
「言えるわけないだろ。昨日うちに北本が来たんだよ~なんて急に言ったら変だろ」
「北本さん」
「・・・はい」
まるで先生に怒られる小学生のような返事をする北本。
「誕生日の際に、その、ふたりで出かけて、その時に雨が・・・。それで家に寄らせてもらって」
「な?北本もそう言ってるし。なんもなかったから」
「・・・・・・」
思い沈黙が流れる。
「・・・今日はもう遅いですし、おいとまさせていただきます」
「じゃあね、まさくん。来週、学校で待ってるから」
ふたりは恐ろしい笑みを浮かべている。さっきまでなら心温まる言葉だったはずなのに、今となっては脅迫文句にすら思える。
「ま、まあくん、悪事はバレるってことだね」
順が俺だけに聞こえる大きさでささやく。
「悪いことはしてねぇよ!」
小声で反論するが、その声も虚しく消える。
「すみません・・・」
「お前は悪くないから、全く」
誰も悪くない。誰も悪いことはしていないはずなのに。なんで俺は病み上がりに糾弾されているんだろう。
「それでは」
みんなが帰っていった。最後のやり取りでもうなにがなんだか。感情がごちゃごちゃでよくわからない。
ガチャン。玄関の扉が閉まる。
・・・とりあえず今思うことは。
(やっとひとりになれた・・・・・・)
しかしこのときの俺は知らなかった。
ここから始まる「ふたりの物語」を。
読者の皆様
いつも読んでいただきありがとうございます。
お話の中の長い長い1年がもうそろそろ終わりを迎え、物語はここからエンディングへと向かいます。
続きができましたらまた投稿を再開したいと思います。ぜひ気長に待っていただいて、再開したときにはまた気楽にお付き合いいただければ幸いです。




