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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第10章 終わりがあるから始められる
221/241

217. ABCD包囲網




 このことを聞かれるだろうという予想は80%くらいしていた。さすがに誰がどう見てもあの日が風邪の原因だとわかるからだ。だがついぞ適切な答えが出なかった。


 「そうです、それを聞きに来たんです」

 白川から聖母の笑顔は霧消していた。

 「・・・」「・・・・・・」

 北本と順からも無言の圧力がかかる。


 「だから雨の中で友達とちょっと話していただけだって」

 放生とのことをみんなには話していない。経緯も経緯だし、気軽に話すべきことじゃないとの考えからだ。もちろんこいつらを信用していないわけじゃない。だがこれは俺の自己満足だ。放生はあの場所あの瞬間で俺だから話してくれたと思っている。



 「いくらなんでも怪しすぎる」

 佐々木と白川は顔を見合わせている。


 「言えない相手と言えないことでもしていたんですか」

 さきほどまでの温かい空気とはまったく違う、凍てつくような鋭い北本の言葉に身震いがする。


 「そもそも斉藤くんに友達なんていましたっけ」

 KO。

 「なんか体調悪くなってきた気がする」

 「逃さないよ」

 順が俺の腕をつかんでくる。



 「ほんと、ただ喋ってただけだから」

 せっかく来てくれて嬉しくてテンション高めだったのに一気につらくなってきた。同じテンションでも今は緊張感の方だ。


 「雨の日に外でずっと?」

 「なんで相手が誰か言わないんですか?」

 「もしかして告白されたの?」

 ・・・・・・。佐々木の言葉を最後にすっと空間の音が消える。


 「それは違う」

 「ほんとぉ?」

 「・・・」

 4人がまじまじと見つめてきてもう耐えられなかった。



 「・・・ちょっと、先生と相談していただけだ」

 埒が明かないので核心をぼかしながらも少しばらすことにした。言い方を工夫したから嘘にならない・・・はず。

 「吉野先生ですか?」

 普通に考えれば白川のように担任と話していたと思うだろうが実際は違う。


 「いや、あの教育実習の」

 「放生先生、ですか」

 「でも雨の中ですることじゃないでしょ」

 俺が聞きてぇよ・・・と佐々木に言うわけにも行かず喉の奥で言葉を押しつぶす。


 でもきっとあの日が秋晴れだったら放生の本音は聞けなかったかもしれない。雨という覆いが世界と隔絶してくれたおかげであの話が出来た気がする。あの瞬間、あの樹の下は俺と放生だけの結界だった。



 「ま、とにかく何もやましいことはしてないから」

 「ならいいですけど」

 何がいいのかわからないが白川の赦しが出たおかげで糾弾は止んだ。


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