216. あれ?温かさはもう終わり?
「これ、私たちからです」
白川から差し入れとしてスポーツドリンクとゼリーを受け取る。
「ありがとう。悪いな気を使わせて」
玄関に入った4人それぞれに目を合わせてお礼を言う。
「お邪魔します」
北本を先頭にして続々とリビングに女子たちが入る。佐々木たちは俺の家をきょろきょろと見回す。ちょっと恥ずかしい。それに対して北本の堂々たる姿。まぁこいつは前この家に入ったことあるからな・・・。
「今日ご家族は?」
受け取ったものを冷蔵庫に入れていると佐々木の声が飛んでくる。
「母親はパート、妹は学校。父親はもとから単身赴任」
冷たいお茶と、棚にあったせんべいをリビングのテーブルに並べる。
さっきまでとまるで違うリビングの風景と匂いに、湿っていた心の一部分がすっと乾いていくような感覚になった。
普段は使わない5脚目の椅子がテーブルをコの字に囲む。ちょうどいつもの図書室での光景と同じだ。
「もう起きてて平気なの?」
順がコップを撫でながら聞いてくる。
「うん、今はなんもない」
「風邪だったの?」
「多分な」
自分用にも出していたお茶を飲む。
「来週は学校に行くよ」
いつもなら憂鬱な学校も今だけは楽しみというものだ。・・・いや、さすがに言い過ぎか。
「この様子ならわざわざ見に来なくても大丈夫でしたね」
北本が澄ました顔でまた毒をさらっと吐く。今日はいつもよりも毒が多い気がするがきっとこれは俺を心配してくれていた裏返しだろうなんて自分勝手に解釈する。
「でも安心しました」
白川が聖母のような笑顔を向けてくれる。北本もその奥で笑っているのが見える。佐々木も順もそうだ。
みんな優しい笑顔を見せてくれる。こんな顔を見せてくれるなら風邪のひとつやふたつ引くのは悪くない。やっぱりひとりよりふたり、ふたりよりみんなでいる方が、温かい。
「さて・・・」
佐々木がコップを置く音が妙に響いた気がする。
「で、結局あのずぶ濡れで帰ってきたあの日はなんだったの?」
空気が弛緩した合間を狙ったかのように佐々木の急襲の一言が飛んできた。




