20. 本日は晴天なり
「う~~ん。」
朝から数学の教科書と格闘している。
しかし数学の勉強は幾分気は楽である。
俺は勉強一般が得意ではないが強いて挙げるなら数学はできる方だと思う。
というか英語と国語がてんでダメなのだ。
英語は外国の文字がわからないし、国語は筆者の気持ちがわからないからだ。
斉藤OSは英語にも日本語にも非対応なのだ。
他者とのふれあいが決定的に不足しているせいで、他人の気持ちを察する能力が著しく欠けているのかもしれない。
それに比べれば数学は気持ちがいい。答えは一意であり、論理的に説明できる。
じゃあなんで春山に入ったんだと言われそうだが、家から近いので仕方ない、というのももちろんあるが理系を志すほど数学ができるわけでも興味があるわけでも無いというのが実情である。
これは俺の持論であり何の根拠もないのだが、興味もないのに進学した時、文系より理系の方が悲惨になると思っている。
大学ほどではないにしても高校ともなると専門性が増す。
得意でもなく興味もないのに複雑な定理や数式とふれあうのはゴメンだ。
という非常に後ろ向きな理由から文系を志望したのだがそもそも勉強をしたくないのが本音であることはいまさら言うまでもない。
しかし働くのはもっと嫌だ。
働くか勉強しないと生きることを許されない社会を恨む。
そうでなければ俺は間違いなく卒園してすぐニートになっていた。
無意味なことを考えて貴重なテスト勉強時間を消し去った末、諦めて逆に謎の自信が生まれたところで家を出た。
「妹さんは大丈夫でしたか?」
「ああ。心配かけて悪い。」
「いえ。」
今日も北本と図書室に向かう。
「お前はいるのか、兄弟。」
話題が途切れそうになったのでつい聞いてしまった。
「いません。だから少し憧れます。」
「そんな面白いもんでもいいもんでもないけどな。」
「一人っ子じゃないとこの気持ちはわからないと思います。」
そんなもんか。
「ちなみに兄弟姉妹どれがほしい?」
「兄ですかね。優しい兄がほしいです。」
「それじゃあ親に頼んでももう無理だな。」
「妹もいいですけどね。仲良く買い物とか憧れます。」
「お前も普通のJKなんだなぁ。」
「どういう意味ですか?」
北本は少し怒っている。
「いや悪い。お前いっつも教室じゃ無表情だし真面目っぽいからそういうかわいらしいこと考えたりしないのかなぁと勝手に思ってた。」
「ま、まあ私も女子高生ですし、一応。」
少し照れていた。
てか女子はまだしも高校生なのは関係あるのだろうか。
図書室に着く。
・・・。
「なんだいないのか。」
せっかく足早に来たというのに、そこには佐々木の姿はなかった。
いやまああいつがいなくても全然良いんだけどね。
・・・。
やはり北本と二人は気が楽でいい。
あいつは一人で勉強してるし俺は一人で漫画を読んでいられる。
・・・。
・・。
・。
しかし、騒がしいのに慣れていたせいで少し寂しく感じるような気がしないでもない。
人間はすぐ慣れる生き物と言うが、慣れすぎというのも考えものである。
せっかくの静謐を楽しもうではないか。
結局昼休みに佐々木が現れることはなかった。




