214. You can't know alone by yourself
カタカタと揺れるスマホが置いてある棚の天板に当たる音がする。ベッドの横の棚の上に雑に放られていたスマホを手に取る。
ロック画面には現在時刻とメッセージを知らせる通知が並ぶ。
俺は不覚にも嬉しくなって口角が上がった。
『今日放課後お見舞い行ってもいい?』
部活のグループに投下されたそのメッセージの送り主は佐々木だった。
恢復したとは決して言えない今、本当は断ったほうがいいのかもしれない。誰もいないこの家に来てもらってもどうするつもりだ?
もし承諾するにしても時間をおいてからのほうが良いのかもしれない。
しかしそんな葛藤にはなんの力もなかった。俺の言葉にしていない本心は、スマートフォンの指紋認証の関門を容易に突破し自分の指を軽やかに動かしフリック入力のキーボードに滑らせた。
『ありがとう。待っています』
俺の短いメッセージにあっという間に既読が4つ付き、ほとんど同時に4つのスタンプが異なる送り先から送信された。
俺はひとりじゃない。30人いた教室ではひとりだった過去の俺は、4人によってひとりではなくなった。周りに存在する人に名前がついた。いつもそばにいてほしい、いっしょにいたいと思える人達が俺の世界を外側から象ってくれる。いつしか当たり前になっていた俺を包むその温かさの虜になっていた。
俺は初めて孤独を知った。孤独でなくなったから。
・・・。
無意識にスマホを握りしめていた右手に気が付き、誰が見ているわけではないが恥ずかしくなった。再びスマホを定位置に置く。
さてと。新しくなった氷枕の位置を調整する。あいつらが来てくれるまでにしっかり寝て治さないと。足で布団を蹴ってしっくりくる位置に体を持っていく。
ブロロロロ・・・。
家の前の道を通り過ぎる原付バイクの音を聞きながら三度俺は眠りにつく。
もう十分に寝て眠気はあまりないはずなのに、なぜか今日一番の快眠ができる自信があった。布団だけでは得られない温かさがあったからだろう。




