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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第10章 終わりがあるから始められる
215/241

211. カッコつけの代償




 部屋には壁にかけられた時計の針の音だけが響く。いつもは気にならないその単調な音も、今日この場面においては存在感が大きく感じられる。

 本日金曜日。現在時刻10:20。自分の家にもかかわらず、平日のこの時間がこんなにも静かだということを知らなかった。


 俺はベッドから起き上がり、横に置かれたスポーツドリンクのペットボトルに手を伸ばす。

 「はぁ」

 まさか高1にもなって風邪をひくとは思っていなかった。小学生以来の体のだるさにため息が出る。

 だが原因については思い当たる節はあるどころの騒ぎではない。確実に放生との雨の中の対話が原因だ。傘は差していたものの、放生とふたりで分け合ったこと、さらに濡れていた状態で長い間外にいたことが災いしてしっかり目の風邪を引いてしまった。


 放生は今何をしているのだろう。元気だろうか。教育実習を卒業?修了?してからもちろん会っていない。

 大学生ってどんな授業を受けるのだろう。そもそも授業とか受けるのかな?

 ・・・。

 大学生の生活に具体的なイメージが湧かない。なぜ創作物の舞台のほとんどが高校止まりなんだろう・・・?


 カチッカチッという冷たい音が頭に反響する。何も考える気にならない。朝、母が置いていってくれた氷枕はすでに気持ち悪い感触のするただの枕に成り変わっている。しかし変えに行く気にもならない。


 朦朧とまでは言わないが、ぼーっとする中でスマホを手に取る。授業中テキトーに見るようなウェブニュースも、たまに見るユーチューバーのしょうもない動画も、全て脳に届くことなく目の前を過ぎ去っていく。


 スマホのバックライトすらうっとうしく感じられたためベッドの端に画面を下にしてスマホを追いやった。その伸ばした手を自分のおでこに持っていく。

 「・・・あつい」

 やはり何度確認しても熱がある。


 ため息をつきながら寝返りをうつ。はぁ、今頃高校ではなんの授業をやっているのだろう。いつもはそんなに行きたくないような学校も、いざ行かないとなると行きたくなる・・・・・・ということは決してない。


 やっぱりなんだかもったいない気がしてどうにかこの時間を有効活用したいという気持ちが湧いてくる。

 どうせまたすぐ飽きることはわかっているが、さっき追いやったスマホに再び手を伸ばし、ニュースアプリと動画アプリを行ったり来たりしながら画面を下に引っ張り何度も更新し続けた。

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