202. 雑魚に喋る資格なし
「・・・」
何があっていて何が間違っているなんて誰にもわからないと思う、なんて言葉がすっと頭に浮かんだ。
だがその言葉は口から出ることはなかった。そんな言葉はただの慰め、欺瞞。決して俺の本心じゃない。
事実、放生のコミュニケーションは俺の目から見るとお世辞にもベストなものとは言えないと感じていた。
必死さはあった。努力も見えた。しかしそれらが評価されるのは小学校の通信簿までだ。
現実の人間関係はもっと冷徹に、極めて利己的に、そして感情的に人を評する。
『気に食わない』の一言で、人は簡単に見限られる。『なんか好きじゃない』の一言で、人は他人に簡単に残酷になれる。
そういう意味で放生が今回行ったクラスでの人間関係構築手法は結果として正解ではなかった。少なくともうちのクラスの女子からの平均評価点は低かった、下手だったと断じざるをえない。
「本来ならあいつらの悪口なんて気にしなくていい、あんなことを影で言うやつが悪いに決まっている、なんて言うべきなのでしょうが・・・私はそうは言えません」
「・・・」
放生の肩が動いたような気がした。
俺の言葉を聞いて表情に少し驚きが混じったように見えた。邪推かもしれないが、もしかしたらわざわざ自分を見つけ出してくれた俺に多少の慰めの言葉を期待していたのかもしれない。
だが逡巡を経た俺に慰めの言葉を言うという選択肢はなかった
「あの悪口は彼女たちの防御反応に私は見えました。もちろん陰口を肯定する気はないです。言うべきじゃないし、言うとしても今日じゃなくても、教室じゃなくてもと思います。
しかし年齢的にも精神的にも未熟な彼女たちはそこまで考えは行かない、そしてあのような表現方法しかなかったんだと思います。あなたという存在と、あなたの行った積極的なコミュニケーションに」
あくまでフラットに、かばうわけでも突き放すわけでもなく、俺の考えをそのまま言うことに努めた。
「防御・・・反応・・・?」
目下にいる放生が絞り出したかのような声に俺はただうなずく。
「これは俺個人の考えなんですけど、あらゆるコミュニケーションには覚悟と寛容さが要ると思うんですよね。」
間を開けず続ける。
「他者とのコミュニケーションには何かしらの作用がある。相手が違えば作用も違う。それらを受け入れる覚悟と相手を赦せる寛容さがないと他人へ踏み込むことはすべきじゃない。自分のコミュニケーションへの嫌悪感の発露として悪口が言われていたとしてもそれを受け入れる、またはスルーできる能力を持っている必要がある、と私は思います」




