193. Big Sister is watching you
次は俺のターンと言わんばかりに俺は放生に質問をすることにした。
「ところで誰から俺らの部活の話を聞いたんですか」
さりげない感じで情報の出どころを探る。
「そうだな~。斉藤くんの話はいろいろな人から聞いたよ」
「へ?」
しかし返ってきた答えはあまりにも意外なものだった。
「部活のこと、文化祭のこと、体育祭のこと」
「・・・」
正直驚いた。クラスの連中が俺のことを話すとは思ってもみなかった。
「みんな学校の話をすると自然と斉藤くんの話が出てきて・・・」
俺は恥ずかしくなって視線をグラウンドの方にやる。なんで俺の話が出てくる?そんなに悪目立ちしてるのか俺。
・・・してるか。してるなぁ。特に最近は目立っているというかずっと浮いてるし。
教育実習の大学生に話しかけられて話題に困ったときクラスの珍獣として俺の話をするのはネタにはちょうどいいか。
「だから私、斉藤くんと話すのを楽しみにしてたんだ」
放生は嫌味なく笑う。しかし俺はどんな話を吹き込まれているのか気が気でない。
「そうですか・・・」
俺はなんて返すのが正解なのかわからなかった。
「どんなやつだって聞いてます?俺のこと」
どうしても我慢できなかったのでつい聞いてしまった。
「それは是非直接聞いてみて」
せっかく勇気を出して聞いたのにはぐらかされてしまった。
放生は話を切り上げるのにちょうどいいタイミングだと思ったのだろう、おもむろに立ち上がる。
その瞬間、俺は放生に会ってからずっと疑問に思っていたことがあったのを思い出した。
俺は乗りかかった船という気持ちで聞いてみた。
「なんで先生になろうと思っているんですか?」
放生は俺からこのタイミングで質問が飛んでくることを予想していなかったようで少し驚いた表情をしながらも、朗らかに答えてくれた。
「昔からたくさんの人と話して、たくさんの人を導けるような先生になりたいと思っているの」
昔から・・・か。
「あ、そろそろ休み時間も終わりね」
またね斉藤くん、と言い残して放生はクラスを出ていった。
俺は少し会釈をしてその姿を見送った。
「・・・」
最初はなんだこいつと思っていたが、いざ女子大生からぐいぐい話しかけられてみると、自分でもびっくりなくらい気持ちよく喋ってしまうことに気がついて今更恥ずかしくなった。
しかしまぁ、是非今回の教育実習は成功してほしいものである。
とんとん。
授業が始まって数分後、シャーペンかなにかで背中をつっつかれる。
なんだなんだと振り返ると「はい」と後ろの席の平岡から紙を渡される。
「白川さんから」
旧時代的な連絡手段の内容はこうだった。
「女子大学生とのお話、ずいぶん楽しそうでしたね」
俺は怖くて振り返ることができなかった。




