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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第10章 終わりがあるから始められる
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190. ぼんやりとした不和



 そうは言ってもたかだか1人教育実習生が来た程度では高校生活はガラッと変わることはない。

 そもそも国語の時間以外は前までの授業とまんま同じである。国語の授業だって後ろに女子大生が立っているだけだ。

 俺含めクラスメイトはこれまでと同様、人によっては真剣に、人によっては漫然と授業を受けている。


 一方で唯一変わったところと言っても良い点は休み時間だろう。

 授業と授業の間の10分の休み時間。はっきり言ってこんな短い時間では大したことは出来ないのだが、学生の多くはこの時間のために授業を耐えていると言っても過言ではない。もちろん俺も例外ではなく解放感にひたりながらスマホをポチポチ触って限られた休み時間を堪能している。


 この休み時間の特徴は何と言っても教室に教師がいないことだ。別にやましいことをしているわけではないが、教室に生徒以外がいるかいないかというのは案外心理的に差が大きい。


 しかし放生の登場がこの休み時間の性質を変えた。休み時間にクラスという空間に放生が加わるようになったのだ。


 俺は最も廊下から離れた窓際学生なので今のところ話しかけられてはいないが、廊下側の生徒が放生と話している姿は目にする。主に男子が面白半分に話しかけているという感じがするが、むしろ放生は特定の男子ばかりと話すというより色々な人と話したいようで積極的に女子と話そうと画策しているように傍からは見えた。

 隙を見つけては女子の会話の輪に入っている。おそらくクラスメイトの情報がメモしてあるクリップボードを片手に果敢にクラスメイトに話しかけている放生。話し終わったあとには律儀に加筆までしている。


 そんな姿を見て俺は「どうなんだろう」と率直に思った。


 授業時間が先生のテリトリーだとすれば、休み時間は数少ない生徒のテリトリーだ。人によって考え方はそれぞれだろうが、俺みたいに「休み時間くらい教師がいない時間を過ごしたい」と思っている層も少なからずいるだろう。


 貴重な息抜きタイムに教育実習生とは言え、高校生とは異質の放生に話しかけられることをよく思わない生徒もいそうなものだ。にもかかわらず放生はクラスメイト全員制覇と言わんばかりに全員に隈なく接点を求めに行っているような印象がある。いずれ窓側の俺の方にも来そうだ。


 趣味が人間観察とか言ってたが、本当に観察しているのだろうか甚だ疑問だ。ただ闇雲に人と接点を持ち、相手をわかった気になることを人間観察と言っている気がしてならない。そんなものは観察ではない。自分が楽になるためのレッテル貼りだ。

 俺だったらそんな独りよがりな行動に貴重な休み時間を奪われたくない、と思ってしまう。

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