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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第10章 終わりがあるから始められる
193/241

189. 悪い人じゃないんだけど・・・・・・



 放生が挨拶をした日の掃除の時間。俺はいつものように特にやる気を出すこともなく、しかしサボることなく机を移動させていた。


 教室には掃除をするメンバーとそのメンバーを待つ生徒がいた。

 前者は喋る暇などないが、後者はただただ暇な時間なのでおしゃべりが弾んでいるようだ。


 「あの教生どう思う?」

 「うーん、まぁなんかあれじゃね?」

 自分の机を自分で元の位置に戻している(なぜか掃除当番の時自分の机は自分で運びたくなる)と、なべちゃんの仲間たちが誰かを待ちながらそんな話をしているのが聞こえてきた。

 ちなみに件の放生は吉野が職員室へ行ったのに付いていったためクラスにはいない。

 「悪い人じゃないだろうけど・・・」

 「でもなんかあれじゃん」

 「周り見えてないよね」

 「そんなもんじゃね?初めての教育実習なら。知らんけど」

 気持ちゆっくり目に机の位置を調整しつつ彼女らの話をここまで聞いて俺は他の机のもとへと移動した。



 掃除が終わり、いつものように図書室へと向かう。

 掃除で遅れたため図書室には俺以外の部員が揃っていた。

 「あ、ありがと」

 白川が淹れてくれたお茶と佐々木が持ってきてくれたお菓子をいただきながら今日もまったり放課後を過ごす。


 「そういえば3組に教育実習生が来たってほんと?」

 ニートが死んだら素晴らしい異世界が待っていた系のラノベを読んでいると、不意に佐々木がこう尋ねてきた。


 「ああなんか来たわ。まあ、数日前から授業にはちょくちょく見に来てたけど」

 自分たちのクラスの話題ということもあってか白川と北本もこちらに目線を向けている。


 「男子?女子?」

 「女」

 「まさくんはもう喋った?」

 「教育実習生と?いやいや全く」

 「そうなんだ」

 佐々木も興味本位で聞いただけのようで、そこまで掘り下げる気はないようだ。

 でも白川はなんか喋ってたぞ、とでも言おうと思ったが、俺が言うのも変だと思いやめた。


 「でもこんな時期に教育実習なんてめずらしいねぇ~」

 この話題を終わらせるための最後の一言として言っただろう佐々木のこの言葉。だがその一言のせいで俺は話題を続ける気になった。

 「そうだ、それが気になってたんだ。やっぱり今の時期って教育実習なんてしねぇよな」

 急に俺が食いついて驚いた様子の佐々木。

 「え?う、うん、そう思うけど」

 スマホで一応調べてみた。実際例外的にこの11月に行われることもあるようだが、梅雨の時期くらいが一般的だという。


 「なんか事情があったんじゃない?」

 「ま、そうだな」

 そう、別にどの時期に教育実習に来ようが知ったこっちゃない。まさに何か事情があったんだろう。


 個人的にそれより気になることは・・・。

 「白川、北本。お前ら、あの教生どう思った?」

 こちらを見ていたふたりに聞いてみる。


 「別になんとも」

 即座に飛んできたのは北本らしい回答。


 「うーん、どうでしょう。悪い人だとは思いませんが・・・」

 さっきどこかで聞いたような答えをする白川。



 うん。俺も同感だ。


 多分放生はそこまで悪いやつではない。教育実習にやる気もあるし、俺達と上手くやろうと頑張っている感じも伝わってくる。性根が腐っているということは少なくともなさそうな雰囲気がする。


 だが俺も、白川も、なべちゃんの取り巻きも

 「悪い人だとは思わない」

 の後に省略された言葉はきっとポジティブなものではなかっただろう。



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