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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第10章 終わりがあるから始められる
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188. よく燃えそうなキャラだこと



 放生の自己紹介を聞きながら、改めて彼女を正面からよく見てみる。

 遠目で見た第一印象と同様に、なんだか気が強そうというか我が強そうというか自分を曲げなさそうというか、そんな顔をしている。そう見えるのはキリッとした眉毛と赤いメガネのせいだろうか。

 格好は今日もばっちり黒のスーツ。さすがに教育実習でファッションを遊ぶ人はいないだろうし、最終日までずっとこの格好だろうな。

 髪型は今日も後ろでひとつ結び。毛先はくるっと抹茶を点てる茶筅みたいになっている。これもやはり最終日まで変わらなそうだ。

 体型は普通。太っているわけでもないが痩せているという感じでもない。どことは言わないがそれなりに小高い丘が2つある。さすがにクラスの女子よりはある印象を受ける。まぁ高校1年生と大学生を比べるのは酷というものか(謎の上から目線)。


 ・・・きもいことを考えていないで自己紹介を聞いてやろう。

 フルネームは放生梨里(ほうじょうりり)。あまり聞き馴染みのない大学の教育学部4年生。趣味は読書と演劇鑑賞。特技は人間観察。

 俺は特技を聞いた瞬間スマホのいじりはじめた。人間観察を趣味とか特技に挙げる人間でまともな人に俺は会ったことがない。第一人間観察ってなんだよ。・・・俺がさっきしてたやつか。だとしてもそれを趣味とか剰え特技なんて言うか普通?もし本当に人間観察が得意だったら人間観察が特技になりえないことに気が付きそうなものだが。


 「先生の誕生日は?」

 放生への質問タイムは続いている。俺はスマホいじりにも飽き、外の風景を眺めながらぼーっとそのやり取りを聞いていた。退屈さは国語の授業とあまり変わりない。うるささを含めるとまだ国語の授業のほうがましかもしれないな。


 「彼氏はいますかー?」

 男子からの質問が続く。漫画やアニメではよくこのような質問タイムが描かれる。例えば転校生相手やそれこそ教育実習相手に。

 だが実際はそのへんのところに興味をそんなに持てないことを知った。それは俺がこの放生に対してなんとなく苦手意識を感じていることに起因しているのか、会ってすぐの人間に興味を持つことが難しいからか、2週間後どうせいなくなる相手を内心どうでもいいと思っているのか、理由はわからない。

 少なくとも苦手意識だけは確かだと思う。そしてその意識を持っているのは俺だけではないようだ。


 今行われている質問タイム、初めは女子からの質問が多かった。出身地は、好きな俳優は、好きな食べ物は、などなど。

 しかし今はどうだろう。質問するのは専ら調子に乗っている男子からだ。放生はなんだかんだ沢山質問されていることが嬉しいのか一応面倒くさそうな顔をしつつも律儀に男子の相手をしている。

 だが女子はというと、もう何も言っていない。一応聞いている者もいればさっきの俺のように適当に外を眺めている者、手遊びに髪をいじる者、中には女子同士で喋っている人もいる。

 隣のなべちゃんの表情が「はやくおわんねぇかなこれ」と語っていた。まさに今のクラスの女子全員(+俺)の内心だろうなと思った。


 「先生!あの、そろそろ良いんじゃないでしょうか」

 見かねた委員長がこの質問タイムを止める。冒頭の沈黙が続いたら地獄だっただろうが、現状も大概地獄だった。

 「あ、そうですね!伊集院さんありがとうございます!」

 委員長に礼を言う放生。恐らく本心から言っているだろう。だがなんだか軽い印象を受ける。

 この後は放生が軽くこれからよろしく的な挨拶をして吉野にバトンタッチした。

 吉野が配布物を配ってその説明をしている間、クラスの後ろに移動した放生を目で追った。


 俺はこれからの2週間を想像した。高校の教育実習なんてたかが知れている。小中学校と比較したらそこまで生徒と関わるということもない。どうせ最後にちょろっと授業を数回やって終わりだろう。

 だけどなんとなくだが、このまま平和に終わらないという気がしてならなかった。






 ・・・ちなみに参考までに今の放生には彼氏はいないらしい。そしてこれまで彼氏がいたことがあるかどうかについては秘密らしい。

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