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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第10章 終わりがあるから始められる
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187. 安心と信頼の助け舟



 ロングHR前の休み時間の終わりをチャイムが告げる。チャイムが鳴り終わると同時に担任の吉野が教室の前のドアから入ってきた。

 俺はにやりとする。

 担任の後ろには、これまでは後ろのドアからしか入ってこなかった女子大生の姿があったのだ。どうでもいいことだが予想がばっちり当たってちょっと嬉しかった。


 「はい、えーと今日はまずはじめに。もう皆さんも気づいていたと思いますが・・・」

 そう言って吉野は「さぁこっちに」と女子大生を教卓の真ん中の方に立たせた。

 こほん、と小さく咳払いをして教育実習生が口を開く。


 「皆さんこんにちは!!このたび教育実習をさせていただきます放送の「ほう」に生まれるで「ほうじょう」と申します!短い間ですがよろしくお願いします!!!」


 教育実習生、放生は随分と元気よく挨拶をした。

 パチパチパチ。その元気な声に合わせるようにクラスから大きな拍手が起きる。俺も一応周りに合わせて拍手をする。

 その後の吉野の説明によると、放生は2週間教育実習生として俺たちと一緒に国語の授業とHRを受けるらしい。

 

 「じゃあ、早速放生先生、今日のHRをお願いします」

 そう言って吉野は教卓から退いて横の席に座ってしまった。このおばちゃん意外と無茶振りをする。



 「え・・・っと」

 さっきまで元気だった放生も、この急な振りはさすがに面食らったようだ。放生は助けを求めるような、抗議をしたそうな目で横の吉野の方を見る。しかしちょこんと座った吉野はにこにこしているだけで助けることはしない。



 「はい!先生はどうして先生になろうと思ったのですか?」

 変な間が生まれたか生まれなかったか、という絶妙なタイミング。不意にクラス後方から大きな声で質問が飛んできた。声のした方へクラスメートが皆振り返ったのがわかった。が、俺は振り返ることはしなかった。なぜならその声の主が誰かはすぐにわかったからだ。


 「し、白川さん?」

 放生は手に持ったクリップボードと白川の顔を交互に見遣る。


 「先生のことをもっと知りたいのですが・・・失礼でしたか?」

 「いえ・・・」

 放生はむしろ安堵の表情を浮かべ、寧ろ「ありがとう」とでも言いたそうに白川に返事をする。


 「そうですね!まずはもう少し私の自己紹介をさせてください!」

 白川のパスのおかげで放生はロングHRの方針が決まったようだ。


 まぁ聞いてやるか。質問が飛び交う中、俺は改めて放生をじっくりと見ることにした。

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