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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第9章 答を出すには早すぎる
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168. ヒト娘プリティーダービー



 手を振って順と別れる。

 「ふぅ・・・」

 正直この脱走であまり気持ちよく休めた気はしないがずっとグラウンド外にいるわけにもいかないし、順のいうように借り物競走も始まるのでばれないようにグラウンドに入り込み自分のクラスのテントに入った。


 誰もいないテントの中で体育祭の栞のタイムテーブルのページを確認する。思ったとおり、ちょうどこの次が借り物競争のようだ。

 というのも、(他の種目も基本そうなのだが)この借り物競走だけはクラス全員での観戦が指示されている。ないとは思うが点呼でも取られて、そのときにいないとなると面倒なことになりかねない。だから借り物競走までには帰っておいた方が無難というのはあった。

 まぁ他にも借り物競走までには帰っておきたかった理由はあるのだが・・・。



 テントから近いところに他のクラスメイトが集まっていた。

 後方から俺もその中に混ざる。

 女子が多いおかげで多くの頭の高さは俺の目線の下。後方にいながらも一応トラックを走る人の姿は見ることができそうだ。

 だがそうはいうものの、居心地はそんなに良くない。他の男子はどこだろうか。

 前方に目を凝らすと女子の隙間から最前列で座っている男子たちの頭が見えた。

 この人垣を分け入るか少し迷ったが女子の周りにいても仕方ないので回り込んで前方を目指すことにした。


 「よう、斉藤も来たか」

 着くやいなや鈴木(クラスメイトの男子その1)に声をかけられる。


 「お前らずいぶんと気合入ってるな」

 「そりゃしっかり応援しないとな」

 言っていることはもっともらしいが、どうも他に含みがあるように聞こえる。

 「そういえば白川出るんだっけ、これに」

 「ばっかお前その名前を今出すな!」

 鈴木は俺の頭を抑えて周りをキョロキョロ見る。


 どうやら後ろの女子には聞かれてなかったようだ。

 「・・・悪い悪い」

 「ったく、せっかく許されつつあるんだからな」

 なんだか大変そうですねあんたたち。


 「というかお前だって『それ』目当てだろ?」

 「いや別に俺はそんなことないが・・・」

 「ほんとかぁ?」

 「・・・」

 一応否定はしているが実はあながち間違いでもない。

 というのもこの借り物競争、なんと我らSSS部の部員が俺以外勢揃いなのだ。

 前に部室で出場種目の話をしていたときにこの事実が判明した。正直心のなかでは白川だけでなく他のみんなの借り物競走を見てみたいという気持ちがあった。これが借り物競走までに帰ってきたもうひとつの理由だった。

 「ま、なんでもいいけどよ。しっかり応援しようぜ」

 『続きましてー』

 鈴木の声に被って放送部のアナウンスが響く。いよいよ借り物競争が始まるらしい。

 至るところから歓声があがる。どうやら借り物競走を楽しみにしている人は多いようだ。

 その歓声にのせられてだろうか、俺も少し気持ちが盛り上がってきた。

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