166. おっぱいとしっぱい
「今更だけど、お前ここに来て良かったの?」
弁当を食べる準備をしながら、本当に今更ではあるが改めて隣に座っている共犯者に聞いてみた。
「なんかわくわくしない?こういうの」
しかし順はむしろこの状況を楽しんでいる様子だった。
「はは、ならいい」
どうやら共犯者にするにはもってこいのクリミナルマインドを持っていたようだ。
「それにわたしもまあくんとふたりで過ごしてみたかったし・・・」
順がぼそっと言う。
「・・・」
なんでだよ、と聞きたかったがはばかられたので聞こえないふりをした。
俺といてもそんなに面白いもんでもないと思うけどなぁ。俺といるくらいなら多分クラスの女子と話してる方が楽しいと思うけど。いや、それは微妙か。俺たちの場合。
「まぁいいや。飯食おう飯」
順にそう言いながら膝の上に置いた弁当のふたを取る。
出る種目が固まっていたせいで午前はいろんな種目に出たから、いつものこの時間よりはかなり腹が減った。
「順はなんの種目に出る予定なんだ?」
ご飯を食べながら気になっていたことを雑談がてら聞いてみる。
「綱引きと玉入れにはもう出て、あとは借り物競走かな」
そういえばそうだった。前に部室で出る競技の話をみんながしていたときに聞いたような気がしないでもない。
「俺とほぼ同じだったのか」
「そうだよ!・・・というか、まあくんわたしに全然気づいてくれなかったよね!」
げ。思わぬところに地雷が埋まっていた。
「い、いやぁ・・・」
そう言われましてもそんなにジロジロ他のクラスの女子なんて見ないし・・・(同じクラスの女子は見ているという意味では決してない)。
「別に見られたくない男子にはすごい見られるのに・・・」
小声で愚痴を漏らす順。
しかしその内容に少し、いやかなり動揺する。
「・・・やっぱり男の視線ってわかるの?」
あくまで話の流れで、興味本位で、という感じを装ってさらっと聞いてみる。
「まぁ・・・ね・・・」
乾いた笑いとともに順は肯定する。
「・・・いやなもん?」
俺はなぜか声を潜めて聞く。おい、さっきまでのさらっと感を出す演技はどうした。
「いやらしいのはいや!」
・・・。
バレてるぞ、男子たち。と言いたいところだが、結局同じようなことをしていた俺もそんなに偉そうなことは言えない。
「すっごい揺れてる子とか自分じゃなくても見られてるな~ってわかるしね。わたしは・・・まぁ・・・こんなだからその点は大丈夫だけど・・・」
順は自分の胸をさする。
「・・・」
しかしそれをフォローする余裕は俺にはなかった。もはや俺が責められているような気さえしてきた。
「申し訳ありませんでした」
「・・・それはどっちに謝ってるのかなぁ~?」
「え?」
「どっちにしてもアレだけどね!」
順はぷんぷん怒って俺の肩を叩いている。が今の俺には言い返す元気はなかったので力なく箸でつまんだ冷凍食品のからあげを口に運んだ。
「揺れてるといえばさぁ・・・みなみちゃんとのデートはどうだった?」
すごい思い出し方でまたしても大きめの地雷が巻き込まれて爆裂した。
「え?ま、まぁ普通に・・・つつがなく終わったけど・・・」
どんどん声が小さくなるのがわかった。あれ、こんな話をするために俺グラウンド抜け出したんだったっけ?もしかしてあのままグラウンドにいたほうが良かった?
「みなみちゃんの携帯には随分と素敵な写真があったけど?」
佐々木がこれ見よがしに壁紙にしていたあの写真のことを指していることは容易にわかった。
「あれは、佐々木が勝手に撮っただけだから」
「随分遅い時間まで一緒にいたみたいだけど?」
「電車で帰ってくるのに時間がかかっただけだって」
「ほんとは家に連れ込んだりナニしたりしたんじゃないの~?」
ニヤニヤしながら順が迫ってくる。
「してないって、ほんとに。佐々木のときは雨降ってないし」
俺は精一杯の笑みを浮かべてそう答えた。
だが、その瞬間、順の顔が、曇った。
「佐々木『の』ときは?」
一瞬、周りの音がすべて止んだような錯覚に陥った。




