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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第2章 静と動の狭間
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15. 台風一過。そして新たなる試練の予感





 休みの日が死ぬほど楽しいわけじゃないが、月曜になると早速次の土曜日が待ち遠しくなるのは俺だけだろうか。


 しかし、なぜだろう。先週の月曜に比べればそんなに憂鬱ではない。

 学校に慣れたからであろうか。今週の天気予報に傘マークがなかったからであろうか。




 いや、素直に認めよう。俺はあの部活が嫌いではないのだ。


 世話を焼くのが好きな白川、勝負事では熱くなる北本、佐々木…はちょっと保留だが、あのメンツで放課後活動することを楽しんでいる自分がいる。


 俺は高校に入ってから、白川たちと出会ってから確実に変わった。


 一番の変化は自分に素直になったことだ。

 未だに考えすぎる癖というか妄想癖というか無駄に考え悩む癖は無くならないが、楽しいと感じるものは楽しめる素直さが出てきた。


 あいつらは俺の心に覆いかぶさっていた何かを取り去ったようだ。


 今までの人生が楽しくなかった可能性も否めないが、まあとにかく自分の感情には斜に構えなくなってきていた。



 これが良いことなのかはわからない。かと言って悪いことではないだろう。

 少し変わった俺は、少しも変わらない通学路を一人歩く。






 学校に着くと周りの視線がいつもと違うことに気づく。


 居心地が悪い、なにか非難されているような種類の目線だ。

 うう、なんかやらかしたのかな。




 ・・・。

 やらかしていた。


 人間、生きていく上で精神に問題が起こるレベルの出来事は無意識に忘却する能力があるらしい。

 俺の脳は金曜日の放課後の出来事を記憶することを拒否したようだ。



 やはり佐々木には何かしらの落とし前をつけてもらう必要だ。

 いくら他人を気にしない俺でも、ここまで大量の敵意を向けられると堪える。


 あいつのせいで、猫の額ほどしかなかった俺の教室での居場所が完全に0となった。

 針のむしろ、もとい教室の中を歩く。心の中で俺の机が無事であることを祈る。


 さて、いつどこで首を吊るのが良いだろうか。




 「おはようございます。」



 白川はいつのも調子で俺に挨拶をする。


 おう、と返したが内心驚いていた。

 周囲のクラスメイトも驚いているようだ。



 「あんたたち、なんともないの?」

 中谷が怪訝そうに話しかけてくる。



 「まあ、別に。」

 「でも金曜大変なことになってたじゃない。私初めて見たよ。あれが修羅場ってやつなんだね」


 「あれは頭のおかしい女が一人で暴れていただけだ。俺と白川はいたって普通だ。」

 「そうなんだ。なーんだ、つまんなーい。」

 当の本人だってちっとも面白くねーよ。




 しかし、事件の中心人物たちがこれなら興ざめというものだろう。

 次第に向けられる視線も減っていった。


 ふう良かった。白川のおかげで死なずに済みそうだ。

 白川にはなにかお礼をしたい、そんな気分になった。


 もちろん佐々木の金で。






 「来週の月曜日から1泊2日で学習合宿が行われます。学習合宿と言っても遠足みたいなものですけどね。みなさん準備を忘れないように。」


 …だる。なんでこう教育機関って合宿をしたがるんだろうね。

 生徒が全員楽しみにしていると勘違いしているんじゃないか?


 俺は瞬時に教室を見渡す。最後列なので見える範囲は限られているが、半分くらいは嬉しくなさそうな顔つきでいる。

 そんなもんだろう。俺も絶対に行きたくない。

 しかし親が仮病を許してくれるはずもないので出席しなければならない。


 あーいやだ。ああいう「ほら、これが楽しい行事だよ。だからみんなで楽しもう!」みたいな行事は虫酸が走る。



 大抵はそんなにどころか全く面白くないオリエンテーションが夜まで続く。

 それだけならまだ100歩譲っていいが、つまらなそうな顔をしていると楽しい雰囲気を壊すだのなんだので俺が悪者になる。


 別に楽しんでいる連中を小馬鹿にしているのではない。勝手に楽しんでいれば俺はなにも思わない。ただその楽しさを人に押し付けてくるのが嫌なのだ。



 楽しくないものも楽しいふりをしないといけないという社会の辛さを学習するための合宿なのだろうか。実に進学校らしい意識の高さだ。



 この合宿でまず用意すべきは小説と漫画であろう。


 憂鬱な気分のままロングHRが終了した。



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