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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第9章 答を出すには早すぎる
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164. 他者への同化は己の強さの表れだろうか、それとも弱さの表れだろうか


 「でもまぁ・・・」

 俺たちが異質であり、不適合と認めながらも、いや、認めているからこそ俺たちは開き直る。

 「ああいうのは『柄じゃない』よな」

 「あはは、そう!」

 そう、一言で言うと『柄じゃない』んだ。

 文化祭で様々なことを初めて経験した。

 みんなで一つのことを成し遂げること。他人と目標を共有すること。他人の敵意に実害が被るくらい、他人に近づくこと。一人では成し遂げられないことを他人と協力して完遂すること。

 確かに、全部がつまらなく全部に価値がなかったかと言われたら、そうではないと思う。むしろ様々な発見があったし、楽しさもあった。

 だけど、少なくともひとつ、文化祭を積極的に経験してわかったことがある。


 それは人がいっぱいいるところが苦手ということだ。


 これには色々な意味合いがある。字面通り単に人混みが嫌いというのもある。

 でも、今順が言っていて、俺が同意しているのはそういうことではなく、むしろマインド的な意味合いの話だ。

 何が楽しいのか、何がつまらないのかを自分の感覚ではなく、周りの空気に規定されることを是とする人々により形成される空間が嫌いなのだ。

 人間という生き物は個体でいるときと集団でいるときではかなり違う性質を持つ。

 単体でいる時はすべて自分の感覚と考えにより世界を受容し規定する。

 しかし集団になると、途端にその感覚に蓋をして、他の感覚「他人がどう感じているか」「集団全体に対してどう思うことが正しいか」「他人に自分がどう思われるか」という感覚を優先し始める。日頃当たり前のように行っている自分という体を自分でプレイする、ということを何の躊躇もなく放棄する。


 俺はそういう人たちが怖い。そして理解ができない。

 断っておくが俺はそういう人がいいとか悪いとかおかしいとか正しいとか、そういう話をしているわけではない。単に相手が見えないから怖いのだ。

 どのような立場で、何を考え、何のためにその場にいるのだろうかが、全く見えない。個々の人間がまるで群衆という霧に隠れて全体が靄がかるような、そんな見通しの悪さが恐ろしい。

 そこにいるのがその人である必要がないような、いや、いっそ人でなくてもいいような、そんな存在で、根無し草のごとく周囲の風に転がる人たちがただただ気味が悪い。



 「まぁ相手さんにとっては俺たちみたいに運動会の途中で抜け出すやつの方がおかしく見えるんだろうが」


 俺は自嘲気味に笑いながらそう言う。

 「あはははは!」


 それを聞いて順がげらげら笑っているうちに目的地の川にたどり着いたのだった。


 

 

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