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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第9章 答を出すには早すぎる
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161. クラスから追放系のみなさん




 綱引きが終わり、玉入れを全力でやったと文字にするとなんだか悲しくなるが、とりあえず玉入れを全力で行って、はやくも俺の出る種目は残すところムカデ競争だけとなった。

 しかしそのムカデ競争までは小一時間ある。さてどう時間を潰そうか。


 そう言えば他の男子の姿を見かけない。どこに行ったのだろうか。

 あたりを見渡す。


 ・・・。

 なにやら他のクラスの男子と集まって今行われている種目を応援しているようだ。

 しおりを確認する。

 どれどれ。しおりによると今行われているのはスウェーデンリレーなる種目のようだ。

 リレーと言うからには走るのだろうがどんな競技なのか皆目見当がつかない。


 一応周りをさっと見てからスマホを取り出し調べる。

 なるほど、どんどん走る長さが増えるリレーなのか。・・・それがスウェーデン要素なの?

 スマホをしまい、男子たちを遠目から観察する。


 ・・・おいおい。

 思わず笑ってしまった。

 遠くから見ても純粋な気持ちで応援しているわけではないということがわかる顔つきをしている。まったくもう少しうまく繕えないものかね。というか君たち懲りないなぁ。そんなことしてるの女子にバレたらまた株が暴落するぞ。


 ・・・。

 ・・・・・・。

 そんなにいい景色が広がっているのだろうか。

 確かにこのスウェーデンリレーは体育祭初の走る系種目である。つまりどういう情景を見て男子が喜んでいるのかは容易に推察できる。


 だがこれは場面の想像でしか無い。

 つまりどのような登場人物により、どのような実体をもって今このとき具現化されているかということは自分の目で見なくてはわからない。


 真実から目を背けることは人間として正しい姿勢とは言えないだろう。むしろ俺は今起こっていること、その景色を見る義務があると言っても過言ではない。義を見てせざるは勇なきなりというやつだ。


 そうだ、俺も応援しなくては。

 そうとなればやることは決まりだ。

 俺は急いでグラウンドがよく見えるところに移動した。



 精一杯の応援に全身全霊をかけているうちに午前の最終種目であり、同時に俺の最後の出場種目であるムカデ競争の時間がやってきた。

 再び待機場所でクラスの男子と集合する。


 「ここでトップを取るしか俺たちに明日はない」

 「ああ」

 「なんとしても一位を取るぞ!」

 「おお!」

 気合が入っている。俺は君たちほどの十字架を背負ってはいないが、わざわざ手を抜いて君たちに不利益を被らせるようなことはしない。


 「おい斉藤」

 「?」

 ひとりの呼びかけによりクラスの男子全員の視線が俺に集まる。


 「お前も俺たちの今の扱いを知ってるだろう」

 明示的には言っていないが、クラスの女子たちからの扱い、ということは国語の苦手な俺でもすぐにわかった。


 「ま、まぁ・・・」

 俺的には身から出た錆だろという気持ちも多少あるにはあるが、別にこいつらが嫌いなわけでもないし、なんなら女子たちからの扱いも最近は少しかわいそうかもと思うようになってきた。


 「ここは俺たちのためにも一緒に戦ってくれ」

 一応無関係である、というかこいつらが無関係にした俺を自分たちの事情に巻き込むことについてこいつらは多少負い目を感じているのかもしれない。

 「ああ、それはもちろん」

 だが俺は頼まれずとももとよりそのつもりだった。べ、別にお前らのために頑張るんじゃないからねっ!


 「色々あったから今お前らに女子のヘイトが集まってるだけだから心配しなくても時間が解決してくれると思うぞ俺は」

 待ち時間に周りの男子と話す。


 「そ、そうなの?」

 急にすがるように俺のことを見てくる。

 「ああ」


 まぁ色々の部分は女子の名誉のために言わないでおくが、きっとその色々の部分もあって女子たちは本気で男子のことを怒れないだろう。言ってしまえば今の男子を扱いは女子たちの自己保身なのだ。


 「斉藤は準備の時なにしてたの?」

 俺が気にしていないことがわかったのか、文化祭のことを聞いてきた。

 「・・・なに、してたんだろうなぁ。なんか女子がメイド服作るのを手伝ってた。」

 他にも色々した気がするが一番のメインはこれだろう。


 「え?ずっとクラスにいたのか?」

 他の男子がさらに聞いてくる。お前らほんとに俺の苦労を知らねえんだな。いや別にいいけどさ。


 「帰りたかったけど、白川と委員長が帰してくれなかった」

 俺はありのままを話す。

 「・・・・・・」

 男子たちが黙り込む。その沈黙は何を意味しているのだろうか。もし羨ましいとかそんな感情を持っているのなら俺の苦労と女子たちの本性についてたっぷり語ってやるぞ。


 「お前らこそ何してたんだよ」

 「部活だよ部活」

 「ほんとに?」

 「そ、それは本当」

 まぁ女子も部活で抜ける人が多かったし、それは本当なんだろう。


 「ほら、そろそろ始まるぞ」

 俺たちはスタート地点に立つ。

 改めて何かを言ったりはしないが、みなやる気が漲っているのがわかる。

 さっきまで談笑していたのにこの切替はさすがである。やっぱり頭のいい人ってのはスイッチの切り替えが早い。

 俺も集中する。

 一歩目は左足からだ。



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