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俺だけがいる世界  作者: 北野こち
第9章 答を出すには早すぎる
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160. 誰がために綱を引く



 綱引きの時間になり、所定の位置に集合する。同じ色のはちまきをしたクラスメイトがどんどん集まってきて何かを相談しはじめていた。

 一般的な高校だとおそらく男女に分かれて行うのかもしれないが、うちの学校はいかんせん男子が少ないのでほぼすべての競技を男女合同で行う。もちろん綱引きも例外ではない。

 「男子は後ろよろしく」

 「ああ、任せろ」

 「負けたら承知しないよ」

 「・・・はい」

 どうやらクラス内の話し合い(男子に発言権なし)の末男子は後方を担当することに決まったらしい。



 それにしても話し合いの様子を見る限り、男子のクラス内での立場は未だ改善が見られないようだ。原因はもちろん文化祭のシフト表漏洩事件にある。

 当初は嫉妬心によって白川本人へクラスの女子のヘイトが集中していたが、白川にヘイトを集めることの愚かさに気がついた女子たちは、問題の発端にして反撃が返ってこないサンドバッグ相手として他クラスへシフト表を流出させた男子をヘイトの対象に決定した、というわけだ。


 実際シフト表をばらまいたことは褒められることではないし、クラスの男子も、間接的ではあるが自分たちのせいで白川が倒れたことを自覚しているらしく、女子からの叱責に反論できない日々が続いていた。まぁ俺からしたら女子も男子を叩ける立場にはないだろ、と思うが。


 とまぁそんな絶賛男子嫌われ月間のなかで行われるのがこの体育祭である。男子としてはまたとない汚名返上の機会と言えるだろう。



 「・・・」

 なんて余裕なことが言えるのも俺がその『男子たち』に含まれていないからである。

 他の男子とはまた違う扱いを女子から受けているように感じるが、別にどうでもいいため気にしていない。少なくとも他の男子と比較すれば俺はヘイト対象ではないらしい。


 今の俺の気持ちは穏やかにこの行事が終わってほしい、ただそれだけである。


 さてと。

 やる気ある男たちがアンカー付近を取る中、それなりのやる気かつ運動部でもない俺は男子内での先頭の部分、つまり女子との境界で綱を引っ張ることになった。


 あ、っと声が聞こえた。

 「どうも」

 俺の前の女子は北本だった。

 「お前も綱引きに出るのね」

 「ええ、理由は斉藤くんと同じです」

 「はは。なるほど」

 まぁこいつもそんな全力疾走したりするような柄じゃないよな。

 「でもやるからには負けません」

 「そうだな」

 そんなことを言っているが俺はこいつが負けず嫌いなことを知っている。第一そうでもなきゃ女子の中のアンカーを取りに来たりはしないだろう。


 しかも髪なんか結んじゃって随分やる気じゃない。てかなんだよそのお下げ。デートのときもそうだがこいつ意外と色々な髪型が似合うんだよな。


 「白川さん見てますよ」

 綱の横で順番が来るまで待機していると北本がそんなことを言ってくる。


 クラスのテントの方を見るとたしかにこちらに向かって顔の横で手を振っている白川がいた。そんな皇室みたいな手の振り方する女子高生いる?

 「やっぱ優しいなぁ白川さんは・・・」

 「ああ・・・これでより頑張れる」

 「・・・可憐」

 後ろから男子たちの気持ち悪い話し声が聞こえてくる。きっと今振り返ったら気持ちの悪いニヤケ顔が並んでいることだろう。


 ・・・お前ら気づいてないのか、その声のせいで前方の女子たちがおっかない顔してるのを。

 この調子では男子の人権が回復するのにはもう少し時間を要しそうだ。

 「・・・ちっ」

 「・・・なんだよ」

 北本が非難の目を向けてくる。てか今舌打ちしただろ。

 「別になんでもないです」

 「なんだよ」

 「所詮斉藤くんも男子というわけですね」

 「どういう意味だよ」

 「にやけているの、自覚ないんですか」

 「・・・」

 口角を指で触るとたしかに上を向いていた。



 「始まったら足を踏むかもしれませんが気にしないでくださいね」

 「いや気にするわ!」

 それ以降特に会話は起こらなかった。





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