154. 重要局面は突然に
「どうするこれから」
びしょびしょになった俺達は行く先もなく歩いてきた遊歩道を逆走していた。
すっかり雨も止み、陽の光が水面を輝かせていた。が、それで俺たちの服がもとに戻るわけでもない。
「仕方ないですしこのまま帰りますよ」
北本はそういって駅の方角を見る。
そうは言っても・・・。
俺は視線を下に向ける。
「お前、透けてるの気づいてないの?」
北本の服は濡れてべったり彼女の体にくっついている。ビニール袋に入ったクマのぬいぐるみの迫真のガードのせいで上は見えないが、さらに下に視線を落とすとパンツのラインなんてくっきり見えている。
「はっ・・・!」
どうやら気づいていなかったようだ。
北本は怒りを込めた視線で俺を睨む。
「よくそんなこと堂々と言えますね。怒りを通り越して感心します」
「まぁお前だし」
誰だって言えるわけじゃない。というか北本以外の女子には絶対言えない。
「どういう意味ですか」
全然通り越してねえじゃん。めちゃくちゃ怒った顔してんじゃん。俺の足思いっきり踏ん出んじゃん。
「え、いや、なんでも・・・ないです・・・」
「まったく・・・」
なんとか地雷を踏み抜くまでには至らなかったようで胸をなでおろした。
「って何も解決してねぇし。いいやお前こうなったらうち来い」
おそらく現実的な解決方法はこれしかない。
「うちって斉藤くんの家ですか?」
「ああ、ここからなら少し歩けば着くし、そこで服乾かしていけ」
「え?で、でも・・・」
さっきまで怒ってたのに急にしおらしくなる北本。わかっている、結構アレな提案をしていることは。
「ちょうど今日はうちに誰もいないし」
さらにこんな追加情報まである。
「・・・ちょうどって、どういう意味・・・ですか?」
北本はぬいぐるみをさらに強く抱きしめる。
「や、別にそういう意味じゃなくて。だってそんな格好のお前をそのまま帰すわけにもいかねーだろ?」
まったく失礼である。そんな気を北本相手に起こすわけないじゃないか。・・・多分。
「そうおっしゃるなら・・・」
色々言っているが、これ以外の選択肢を取りようがないことは北本もわかっているだろう。
かくして急遽女子を家に招くという場面が場面なら重要なイベントに突入することとなった。
「というか北本、急にしおらしい態度になるのやめろ」
「だ、だって・・・」
やめろ、お前が恥ずかしがるな。俺も恥ずかしくなるから。
そこからはできるだけ人通りの少ない道を選びながら足早に俺の家を目指して歩いた。




