153. 裸の雨
「・・・斉藤くんは、私のことどう思ってるんですか?」
「・・・ぅえ」
瞬時に頭をフル回転させる。
捉えようによってはなかなか重い質問を投げられ思わず北本の顔をうかがおうとするがうつむいていて顔は見えない。
「・・・どうって?」
考えてもわからないので素直に質問の真意を聞く。
「・・・」
しかし返答はない。
こうなるとこちらも何もできない。
「・・・あ」
どうしようか、と悩んでいる俺の頭に大きめの水滴が当たる。どうやら危惧していたことが起こったようだ。
「橋の下まで走れ!」
「え?」
戸惑う北本の腕をひっぱる。
橋を目指して走るが、運悪く今いるところは橋と橋のちょうど間くらい。これは厳しい。
「はぁ・・・はぁ・・・ちょっと・・・これはやばそうだな・・・」
雨足は思ったよりも急激に強くなった。まるで夕立のような降り方だ。少し遠くが水しぶきで霞むほどである。
運動不足がたたって少し走っただけでもきついが、このままではずぶ濡れになってしまう。
「ちょ、ちょっと・・・」
後ろからしんどそうな声が聞こえた。
さしもの北本でも運動はあまり得意ではないようだ。
「あ、ごめん」
違った。そうだ、北本は今日なんかおしゃれな靴を履いてたんだった。それこそ走りにくそうな靴を。
「い、いえ、ごめんなさい・・・」
「・・・ふふ」
思わず笑ってしまう。
周りは土砂降りだ。人っ子一人いない。そんな中俺たちふたりは何をやってるんだか。
高校生にもなってこんなにずぶ濡れになるとは思ってもいなかった。
そんな今の自分がおかしく思えた。
「もう諦めて歩こう」
髪をかきあげて少し笑いながらそう提案する。正直もうこうなっては走ろうが歩こうが同じだ。
「・・・くふっ」
北本も濡れた髪をかきあげた。そして笑った。
「「あっははははっ!!」」
こんな現状もう笑うしかない。
だって俺たちほどずぶ濡れが似合わない人もそういない。運動部の人たちがこの状態ならまだ格好もつくだろうが、俺たちなんて言ってしまえばインドアの権化だ。
屋外での活動に無縁の俺たちが珍しく外に出たらこのザマとなっては笑うしかないだろう。
「あ~あ、せっかくおしゃれしたのに!」
並んで歩いていた北本が軽い足取りで少し前方に駆けながら嘆くように叫ぶ。
北本にしては大きな声だ。きっと雨の音と周りに誰もいない空間がそうさせたのだろう。
今彼女はどんな表情をしているのだろうか。
残念ながらそれを知ることはできない。
だがきっと笑いながらも少し悲しさを感じられるような笑顔をしているのだろう。
「ああ、ほんとに残念だ。こんなかわいい北本もう二度と見れなかったかもしれないのに」
俺の言葉にそんな効果があるかわからないが宥めるように北本の後ろ姿にそう声をかける。
「今日の私はかわいかったですか?」
北本が振り向く。
濡れているせいかその表情はこれまで見たこともないような顔をしていた。
だが、それはとてもとてもかわいく見えた。
だから俺はこう答える。
「ああ」
・・・。
・・。
・。
数秒見つめある。
「・・・」
「・・・」
同じタイミングで急に恥ずかしさがこみ上げてきたようでふたりは目をそらした。
雨は随分弱まり、雲の合間から顔をのぞかせた太陽が俺たちを照らした。




