152. 乙女モード全開
ボウリングを終え、UFOキャッチャーの1回無料券で遊び、なんと運良くクマのぬいぐるみを獲れたりしてこの施設を後にした。
時間は2時半。この上なく微妙な時間である。
「このあとどうする?」
出口前の通りの柵によりかかりながら話す。
「斉藤くんは散歩はお好きですか?」
「え?そうだな、まぁたまにするくらいだから嫌いではないけど」
「ではこの辺を少し散歩しませんか?」
なるほど、時間つぶしには丁度いいかもしれない。
色々詰め込まれたスケジュールだった今日だが、最後はこれくらいが良いように思う。
少し歩いて川のところまで出てきた。やはり俺にとってこのへんで散歩するとなったら川しか思いつかない。
「このへんだな、俺が歩いてるのは」
遊歩道に立って北本に告げる。なんだか高校生の会話とは思えないが、まぁそんなところも俺たちらしい気がする。
「いつもの斉藤くんの散歩コースでお願いします」
「おう、と言ってもこの遊歩道に沿って一回りするだけだが」
なんて言いながら歩き出す。
いつもはひとりで歩く道を誰かと歩くというのはなんとも言えない感じがする。
いつも見ている景色もなんだか違うものに感じられる。いや、正確に言えば、北本はこの景色をどう見ているのだろうか、という考えを通してこの景色を見ているのだろう。
まるで景色を2つの視点で見ているような、二重に重なっているような奇妙な感覚さえする。
しばらく何も話さずに歩く。
なんだかいつのも図書室に向かうときよりも北本が近くを歩いているような気がする。
てかさっきからちょくちょく思ってたがなんか今日の北本はいい匂いがする。
この女子の匂いって何から発せられているのかというのは前から気になっていた。文化祭の準備のときもわざわざ口に出したりはしなかったがみんないい匂いがした。
この匂いはなんなんだろう。柔軟剤の匂い?シャンプーの匂い?
答えは知らないが、女子ってみんなそれぞれ固有の匂いを持ってる上に、みんないい匂いだ。
「どうしたんですか?」
「いや、それは良かった」
俺が若干、というかかなり気持ち悪ことを考えていたら北本に突っ込まれてしまった。
「斉藤くん、今日はどうでした?」
「楽しかった。」
あくまで俺はホストというかもてなす側だから別に俺が楽しいかどうかは今日はどうでもいい気もしなくはないけど。
でも実際楽しかったし正直に答える。
「・・・」
北本は不意に距離を取る。
俺から近づくのも気持ち悪いのでしばらく無言で歩く。無言で歩くと途端に川の水が段差を流れる音が耳に入る。
付近を見渡すとさきほどよりも人出が少ないように思えた。
理由を考えてふと空を見上げる。空は灰色の雲に覆われていた。
なるほど。
これは雨が降ってもおかしくないような空模様だ。
このへんには雨宿りできるところもないし雨が降ってきたら困るななんてふと思った。
無言で十数歩歩いたあたりだろうか、再び北本が近づいてきた。
「・・・斉藤くんは、私のことどう思ってるんですか?」
「・・・ぅえ?」
予想だにしない一言に俺は思わず素っ頓狂な声を出してしまった。




